・診療所移転の手続きは、以下の4ステップで行います。
①都道府県知事への定款変更認可申請
②法務局への定款の登記
③保健所への新規診療所等の開設許可申請
④厚生局への保健医療機関指定申請、廃止届
・新旧診療所の間の距離が2km以内の場合、例外的に保険診療の訴求適用が可能です。
・遡及適用ができない場合、半月以上の保険診療ができない期間が生じてしまいます。
・期間は、4~5ヶ月程度かかります。
・当事務所の基本報酬は50万円(消費税別途)です。
・遡及適用不可のとき、医師の人数、X線装置/病床の有無、新診療所の形態等により報酬が異なります。
・実費として、保健所への開設許可申請手数料18,000円が必要です。
目次
診療所・クリニック等移転手続きの基本的な流れ ①~④
診療所・クリニック等の移転手続きは、新規診療所等の開設と既存診療所等の廃止を同時に行うことになります。
基本的な手続の流れは以下のようになります。
①から④の4カ所でそれぞれの手続きを行います。4つの手続きは相互に密接に関連しています。
①都道府県知事への定款変更認可申請
↓
認可
↓
②法務局への定款の登記
↓
登記の完了
↓
③保健所への新規診療所等の開設許可申請
↓
許可
↓
保健所への開設届、廃止届
↓
④厚生局への保健医療機関指定申請、廃止届
(移転の距離が2km以内のときは遡及適用あり。)
↓
保険診療開始
相当な量の書類を提出しますし、期間も4~5か月かかります。
綿密なスケジュール調整も必要ですので行政書士への手続依頼が現実的と思われます。
①都道府県医療課への定款変更認可
定款変更認可申請から認可が下りるまでに、2ヶ月半~3ヶ月かかります。これを圧縮することは行政側の事情で不可能なので、予定を組む際は十分な注意が必要です。またかなりの量の書類が必要で書類作成に得意な人が担当しないとまず難しいです。特に予算書は相当詳細に作成する必要があります。
自宅と診療所が一緒の場合は、利益相反になり、特別代理人の選任が必要になります。定款変更認可申請の前提としての特別代理人の選任申請のステップでもかなりの書類を作成する重い作業になります。
基本的に必要な書類
診療所等を移転する場合、状況により多少異なりますが、基本的には以下のような書類が必要になります。
- 定款等の新旧対照表
- 社員総会(社団)又は理事会(評議員会)(財団)の議事録(写)
- 現在の定款(写)
- 開設しようとする施設の概要
- 〃 敷地図、案内図
- 〃 平面図
- 〃 土地の登記事項証明書
- 〃 土地の賃貸借契約書(写)
- 〃 建物の登記事項証明書
- 〃 建物の賃貸借契約書(写)
- 管理者となるべき者の就任承諾書
- 〃 履歴書
- 〃 印鑑登録証明書
- 〃 免許証(写)
- 変更後2年間の事業計画
- 変更予算書
- 拠出(寄附)の申込みを証する書類(契約書又は申込書)
- 拠出(寄附)する不動産の登記事項証明書及び評価額を証明する書類
- 定款変更認可申請書類の副本
- 変更後の定款
追加で必要になる書類
更に、状況によりますが、以下の書類が必要になることがあります。
- 賃貸借契約近傍比較
- 事業報告書等
- 特別代理人選任書
- 〃 就任承諾書
- 〃 履歴書
- 〃 印鑑登録証明書
- 理事長の原本証明
②法務局への定款変更登記
次のステップとして、法務局での変更登記を指示されます。しかし、法務局で登記を受け付けるのは実際に移転してから2週間以内です。多くの場合、上記の定款変更認可が下りた段階ではまだ移転していませんので、変更登記はできません。実際はすぐに次の保健所への申請に移り、変更登記は可能になったときに行い、その後、都道府県の医療課と保健所へ登記事項証明書を提出することになります。
③保健所への申請、届出等
診療所開設許可申請から許可が下りるまで1週間程度で、書類の量も少なく負荷は相対的に軽いです。
移転前診療所の診療最終日が診療所廃止日になり、その翌日が移転後診療所の開設日になります。その開設日に、診療所廃止届と開設届を提出します。
④厚生局への保険指定申請
保健所に開設届を提出したらその足ですぐに、各地区の厚生局に保険診療機関指定申請書を提出します。
毎月中旬に、申請書の締切日が設定されており、審査後、翌月の初日が指定日とされます。診療所の開設日と同日に指定申請をしたとしても、その日から翌月(毎月の締切日以前に申請したとき)又は翌々月(毎月の締切日後に申請したとき)の初日までは保険診療ができません。つまり、約15日~45日間は保険診療ができないことになります。
例外的に、移転前診療所と移転後診療所の距離が2km以内で、患者を引き継ぐのであれば、遡及適用という手続きにより、保険診療ができない期間をなくすことが可能です。
手続きに必要な期間
診療所等の移転では、書類作成が大変なのと行政側の手続きに日数がかかることにより、相当の余裕をもって開始する必要があります。書類作成開始から保険診療開始まで標準的に5か月間かかります。4月1日に開始しても保険診療開始は9月1日です。しかも、原則的に保険診療ができない空白期間が生じます。
保健医療機関を移転する場合の指定期日とその遡及
保険医療機関を移転する場合は、移転前の保険医用機関の廃止届及び移転後の保険医療機関の指定申請を行います。保健医療機関の指定に関しては、毎月の期日が決まっており、例えば、毎月中旬の一定の日(例えば14日以前の最も遅い平日)で締め切って、翌月1日に指定します。指定申請時には、既に都道府県、法務局、保健所での新しい医療機関の開設が済んでいる必要があります。
開設してから月の半ばで申請し、翌月1日に指定されるわけなので、少なくとも半月以上は保険診療ができないことになります。開設していますので診療はできますが、あくまで自由診療になります。廃止と新設をなるべく毎月中旬の指定申請日に近づけることにより、保険診療ができない日数を少なくするというのがポイントになります。
次の場合は、例外的に、指定期日を遡及して指定を受けることができます。
- 保険医療機関等が至近の距離に移転し同日付で新旧医療機関等を開設、廃止した場合で、患者が引き続き診療を受けている場合
至近の距離の移転として認められるのは、
- 当該保険医療機関等の移転先がこれまで受診していた患者の徒歩による日常生活圏域の範囲内にあるような場合で、いわゆる患者が引き続き診療を受けることが通常想定されるような場合とし、移転先が2㎞以内の場合
が原則とされており、この遡及適用に関してはかなり厳格に運用されています。
最も効率的な進め方
例えば、8月14日が厚生局の保険診療機関指定申請書の提出締切日であれば、8月13日を現診療所の廃止日、翌14日を新診療所の開設日として、8月14日に保健所に届け出ます。その足でそのまま厚生局に行き、保険診療機関指定申請書の提出をすれば最も効率的です。9月1日指定日になりますので、保険診療ができない期間が8月14日から8月31日までの18日間だけになります。
遡って、保健所の診療所開設許可申請から許可が下りるまで1週間、定款変更認可申請から認可が下りるまでに3ヶ月必要とすると、都道府県の医療課に定款変更認可申請をするのが、5月8日となります。これ以上は絶対早めることは不可能です。
- 5月 8日 都道府県の医療課に定款変更認可申請
- 8月 7日 定款変更認可
- 8月 7日 保健所に新診療所開設許可申請
- 8月14日 新診療所開設許可
- 8月14日 保健所に、現診療所廃止日と新診療所開設日を届け出
8月13日 現診療所の廃止日
8月14日 新診療所の開設日 - 8月14日 厚生局に、保険診療機関指定申請
- 9月 1日 保険診療指定日、保険診療開始
この日程には書類作成日数を見込んでいませんし、1日の空きもない非現実的な日程ですので、このケースにおいては4月の初め頃から書類作成するのが現実的なスケジュール感になります。
当行政書士事務所の役割
当事務所では、診療で多忙な医師の先生に代わり、 診療所等の移転に係る手続を代理、代行いたします。
- 費用
診療所等移転に係る一連の手続きを当行政書士事務所へ依頼される場合の業務委託料(報酬)は、以下のようになります。- 基本:50万円(税・実費別)
医師1名で、エックス線装置等及び病床がなく、既存のビルに賃貸借契約で入居し、保険の遡及適用を受けるときの例 - 以下の要因により、難度が増し、書類が増えますので費用が上がります。
- 保険医療機関の指定において遡及適用されないとき
- 自宅の一部を診療所が使用するとき
利益相反になり特別代理人を選任するステップが増えます。 - 医師の人数が多いとき
- 病床があるとき
- エックス線装置などの設備が多いとき
- 移転先が建築中であるとき
- 基本:50万円(税・実費別)
官公署に支払う実費は、保健所の開設許可申請に係る手数料18,000円のみです。
都道府県の医療課、法務局(登録免許税)、関東信越厚生局の手数料は必要ありません。
ある程度の郵送料、交通費などの実費は発生します。
- 期間
ご依頼をいただき、当事務所が移転手続き業務を開始してから保険診療開始まで、4~5か月必要です。