社長などの人事を議論する「指名委員会」を設置する企業が急増

  • 指名委員会を設ける上場企業は過去数年間、110~120社前後で推移してきた。
  • 2015年6月に企業統治の強化を求める「企業統治指針」が導入されたことで流れが変わり、指名委員会を取り入れる企業が急増した。
  • 指名委員会を導入した上場企業は5月17日時点で475社と、2014年の約4倍になった。
  • 急増しているのは任意の指名委員会で、406社と2014年(53社)の8倍弱に膨らんでいる。
  • 指名委員会には2種類ある。
    • ひとつは企業統治の面で条件が厳しい「指名委員会等設置会社」がつくる指名委員会。
      指名委員会が決めた取締役の人事案には法的な拘束力があり、参加者の過半を社外取締役にする必要もある。
    • もう一方は任意に設ける指名委員会で、法的な拘束力を持たず、参加者を開示する義務もない。
  • 事例
    • セブン&アイ・ホールディングスやセコムのほか、住友化学、ニチレイ、三菱製紙などが昨年度に導入した。
    • ニトリホールディングスは5月13日に任意の指名委員会を設置し、参加者5人のうち過半の3人を社外取締役とすると決めた。
    • IHIは昨年6月につくった任意の指名委員会の参加者4人のうち3人を社外の人材とした。
    • セコムは5月11日の取締役会で当時の伊藤博社長と前田修司会長の解職と中山泰男新社長の就任を決めた。任意の指名委員会の議論がきっかけとなったが、構成メンバーは非公表。
    • セブン&アイでは、鈴木敏文会長が指名委員会の反対を押し切る形で中核子会社セブン―イレブン・ジャパンの社長更迭を諮ったものの取締役会では過半数を得られず、鈴木会長は辞任を決めた。

(2016年5月18日 日経新聞より)

消費税、簡易課税見直し

先日の日経新聞に、消費税の簡易課税制度を見直すという記事が掲載されていました。

納付すべき消費税は、売上にかかる消費税から仕入れにかかる消費税を引いて計算します。しかし、中小企業ではその計算が難しいケースがあるとして、簡易課税制度があります。業種によって、以下のみなし仕入れ率が決まっています。

90% 第一種事業(卸売業)
80% 第二種事業(小売業)
70% 第三種事業(製造業、建設業)
60% 第四種事業(料理飲食業、金融保険業)
50% 第五種事業(運輸・通信業、サービス業、不動産業)

実際の仕入れ率よりみなし仕入れ率が高いと、みなし仕入れ率を採用することにより、「益税」が発生します。結果として、本来は国に納付すべき消費税が利益として企業にとどまってしまいます。今回は、その差が大きい金融保険業と不動産業のみなし仕入れ率を以下のように下げ、「益税」を縮小するという狙いです。

金融保険業 60% ⇒ 50%
不動産業  50% ⇒ 40%

みなし仕入れ率を採用している金融保険業と、不動産業は納税負担が増えることになります。

これまで、簡易課税制度は以下のように改正され、益税を縮小してきました。

対象事業者の売上高   みなし仕入れ率
---------   -------
1989年   5億円以下      80%、90%のみ
1991年   4億円以下      60%、70%を追加
1997年   2億円以下      50%を追加
2004年   5000万円以下
2014年              40%を追加(見込)

2011年度の消費税の納税申告件数は306万件
簡易課税制度利用は4割強の131万件
簡易課税制度利用による益税総額は、年間1千億円規模
(1989年の消費税導入当初の益税は、1兆円規模)

来年4月からの消費税増税に向け、消費者が払った消費税をできるだけ取り漏らさないようにしようという措置になります。

2013年12月1日(日)

みずほ株主が提訴請求 11.7億円

昨日の日経新聞の夕刊に、みずほ銀行の株主が、暴力団融資をしたことにより、会社に損害を与えたとのことで、歴代経営陣に11.7億円の損害賠償を求める提訴を行うよう要求したという記事が掲載されています。

  • 株主代表訴訟
    株主代表訴訟とは、株主が会社に代わって取締役らの責任を追及する訴えのことです。本来であれば、取締役は他の取締役の責任を追及すべきですが、同じ役員同士ですから、どうしても責任追及には消極的になります。そこで、株主が自ら訴えることになります。ただ、訴えを起こす株主は、原則として6か月以上、引き続き株式を所有している株主になります。
    株主代表訴訟は、すぐに訴えを起こすことは認められておらず、まず会社に対し訴えを提起するよう求めることになっています。本来であれば、役員に他の役員の責任追及の責任があるというのが理由です。そして、60日経過しても、なお会社が訴えを起こさないときに株主代表訴訟を起こすことが認められています。また、いったん株主代表訴訟が起こされると、他の株主や会社は途中から訴訟に参加することができます。
  • 役員等の損害賠償責任
    もともと、役員等は与えられた義務に違反して会社に損害を与えると、会社に対して損害賠償責任を負います。要件は以下の3点です。

    • 以下の義務違反をした
      善管注意義務、忠実義務違反、監視義務違反、競業避止義務違反、利益相反取引規制違反、株主の権利行使に関する違法な利益供与、違法な剰余金の配当など
    • 過失がある
      自己のために利益相反取引の直接取引をした取締役などは無過失でも責任が問われます。
    • 会社の損害がある
      義務違反の行為と因果関係のある損害がある。
      競業取引をした場合には、それにより取締役などが得た利益の額は会社に生じた損害の額と推定されています。
  • 取締役の義務
    なお、取締役の一般的な義務としては、以下の3つあります。

    • 善管注意義務
      取締役と会社の関係は民法上の委任関係になります。その結果として、取締役には善管注意義務が課されます。善管注意義務は、「善良なる管理者の注意義務」で、「自己の財産と同一の注意義務」よりは高度の注意義務になります。
    • 忠実義務
      法令・定款・株主総会の決議を遵守し、会社のため忠実にその職務を行う義務をいいます。
    • 監視義務
      他の取締役の重大な任務違反を見逃すことがないよう監視する義務です。結果として。取締役は、自己の任務違反行為だけでなく、他の取締役の任務違反についても責任を負う場合があることになります。

2013年10月20日(日)

交際費、大企業も損金に

本日の日経新聞に、大企業の交際費を認める方向で検討に入った、という記事が掲載されました。
企業の交際費は激減しています。

  • 1992年度 6.2兆円
  • 2011年度 2.8兆円

飲食店の経営に打撃を与えたことが分かります。
2013年度で、既に資本金1億円以下の中小企業の交際費の範囲は拡大しています。

  • 2012年度まで:交際費の9割を最大600万円まで
  • 2013年度から:交際費の全額を最大800万円まで

利益の出ている会社にとっては朗報だと思います。
大いに飲食等をして、社会でお金が回るようにしたら良いと思います。

2013年10月12日(土)

増加するESOP導入企業

ESOPと呼ぶ株式を報酬として支給する制度を導入する企業が増えています。ESOPとは、Employee Stock Option Plan の略で、いわゆるストックオプションです。導入した上場企業が2年前の3倍で52社に達したとのことです。

ESOPは、米国のIT企業では常識の制度ですが、日本ではそれほど導入企業が多いとは言えません。勤続年数、会社の業績、個人の業務成績などによって、株式をゼロ円で購入できる権利を与える制度です。退職時などに、自社の株式をゼロ円で購入して株価の時価で売ります。つまり、ストックオプションの株数に株価を乗じた金額をまるまる手にすることができます。株価が高くなっていればいるほど大きな利益を得ることができます。新興企業などで報酬をあまり支給できない場合に有効な制度です。皆で頑張って企業価値である株価を上げれば上げるほど、後で大きな利益を得られることになります。会社からすれば、人件費の削減になりますし、従業員からすると働く大きなモチベーションになります。

似たような制度に、ESPPというものもあります。Employee Stock Purchase Plan の略です。ESOPがゼロ円で購入する権利なのに対し、ESPPはある一定の金額で購入する権利です。退職時などで、売却するときに、予め決められた一定金額で購入して、時価で売却します。従って、利益は売却時価と購入価格の差額になります。もし、株価が予め決められた購入価格より低くなってしまった場合、当然ながらその権利は行使しませんので、全く利益はありません。

ESOPもESPPも、これから成長して上場しようという企業には有効な制度です。
当事務所では、ESOP、ESPPの制度設計を行います。

2013年10月 2日(水)

監査役の役割と取締役との関係は?

監査役の職務は取締役の職務執行の監査にあります。

株式会社は所有と経営の分離が行われているので、株主が経営の専門家である取締役に会社運営を委任していることになります。しかし、委任された取締役は権限が大きいので、勝手なことをしないとも限りません。そこで、会社の所有者である株主は、取締役を監視する者として監査役を会社内に送り込むことにしました。つまり会社運営を任せた人とそれを監視する人の両方を会社に送り込んで均衡を図っていることになります。

取締役が少ないうちは、株主が直接、取締役の行動を監視することができなくはないです。そこで、監査役の設置はまず原則的に任意になっています。しかし、規模が大きくなり、取締役会を置くような場合には、(例外はありますが)原則的に監査役が必要になります。取締役会の設置には取締役が3名以上必要です。取締役が増えると株主から離れて勝手なことをする可能性が高まるという意味から、監視する人が必要になるわけです。

取締役と監査役は、監視される側と監視する側の関係なので、兼務することはできません。また、親会社の取締役は子会社の監査役を兼務して、子会社を監視することができます。しかし、親会社の監査役は子会社の取締役になると立場が弱くなり、親会社の取締役の監視という本来の職務がしにくくなるので兼務が出来ないことになっています。

なお、監査役就任時に印鑑登録証明書は必要ありません。

(2011年11月20日)

取締役会と取締役の関係

同じ取締役という名称ですが取締役会のない場合とある場合では、取締役の意味は大きく異なります。

取締役会非設置会社
・原則的に、取締役各自に業務執行権限、代表権があります。
・会社設立時の取締役就任承諾書には、取締役全員の印鑑証明書が必要です。
・代表取締役は任意です。
・代表取締役を選定した場合、その他の取締役から代表権を奪うという考え方です。

取締役会設置会社
・取締役には業務執行権限、代表権がありません。
・会社設立時の取締役就任承諾書に、印鑑証明書は不要です。
・取締役は取締役会の単なる構成員にすぎません。
・取締役会が会社の業務執行等について会社の意思決定を行います。
・代表取締役の選定が必須で、代表取締役に新規に代表権を与えるという考え方です。
・代表取締役就任承諾書に印鑑証明書が必要になります。

(2011年11月15日)

会社の経営がうまく行かなくなってきたとき

会社の経営がうまく行かなくなってきたときに進むべき道はいくつかあります。

1)会社を継続させる方法
民事再生
公正な手続きにより、債権者の平等と企業の再建を図ろうとするものです。原則として現状のままで再生を試みるのが建前ですので役員などはそのままです。ただ、ほとんどの場合、経営陣を監督する監督委員が選任され、監督委員が同意しなければできない行為等が登記され、経営陣の活動は一定の制約を受けます。

会社更生
会社の再生を目的とするのは民事再生と同様ですが、会社更生法という法律に基づいて進められます。旧経営陣の権限は基本的に管財人に移ります。会社更生は民事再生より手続きが厳密で終了までに相応の時間がかかります。最近は「DIP型会社更生手続き」により、一定の条件の元、取締役が管財人として引き続き業務の運営にあたることが増えつつあります。

2)会社を解散させる方法
破産
債務を弁済できず、会社の再建、再生が困難な場合は破産となり、破産手続きをすることにより、解散します。債務者等から破産の申し立てがされ、裁判所が理由ありと認めれば、破産手続き開始決定をし、破産管財人を選任します。破産は委任契約の終了事由となり、役員は当然に退任します。破産管財人は会社の財産を金銭に換えて債権者に配当します。債務者の財産自体が極めて少ない場合は破産手続き自体を行わないこともあります。

破産以外
破産も解散の一つですが、その他、株主総会の決議、合併、休眠会社のみなし解散などで会社は解散、清算されます。日常の営業を行なわない清算会社が清算の目的の範囲内で存続し、基本的には取締役が清算人となって、清算事務を執行します。具体的には、業務を結了させ、債権を回収し、債務は弁済し、残余財産を株主に分配することになります。

2011年6月29日(水)

株主総会の議決の種類

株主総会の議決方法には、その議決する事項の重要さによっていくつかの種類があります。

基本的には以下の通りです。

  • 普通決議
    議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数により議決
  • 普通決議(取締役・会計参与の選任・解任および監査役の選任の場合)
    議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(3分の1以上の割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)の多数で議決
  • 特別決議
    議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(3分の1以上の割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の3分の2(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の多数で議決
  • 特殊決議
    議決権を行使することができる株主の半数以上(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)が出席し、その全株主の議決権の3分の2(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の多数で議決

(2011年4月20日)

定款と登記の関係

定款の記載事項と登記事項の関係が少し分かりにくいです。

定款とは会社運営の基本事項、基本ルールです。会社にはある程度自治権があり、法令に違反しない範囲で、自ら運営ルールを作成することが出来ます。それが定款です。どのような事業を行うか、株式をどのくらい発行するか、取締役会を設置するか、などです。会社設立時に発起人が集まり、どのように会社を運営しようかと話し合います。そして定款を作成するわけです。ただ、行政としては勝手に法令違反の定款を作成し、勝手に法令違反の会社運営をされては困るという考えがあります。そこで、会社設立段階の定款が法令違反をしていないかどうか、公証役場という役所がチェックをする仕組みになっています。

ところで、定款に書かれていることの一部が登記事項になります。定款は30数条6~7ページになりますが、登記事項はそれ程多くはありません。会社設立申請時に法務局に「登記すべき事項」という書類を提出します。それが文字通り実際の登記事項になります。最近手がけた会社設立の書類では、具体的に以下のようになっています。
商号、本店、広告をする方法、目的、発行可能株式総数、発行済み株式の総数、
資本金の額、株式の譲渡制限に関する規定、役員に関する事項、監査役設定会社に関する事項
会社設立をするとすぐに「現在事項全部証明書」をとりますが、そこにはまさしく上記の項目が並んでいます。唯一追加されているのは、会社設立の年月日だけです。

会社設立後、会社が成長するにつれ、資本金の額が増えたり、取締役会を設けたりと会社の基本事項、基本ルールが変化します。それに伴い定款変更及び変更登記を行うことになります。定款に対する変更は基本的に株式総会の特別決議で決定し、変更します。その変更にはもはや公証役場は関与せず、会社内で責任をもって変更、管理していくことになります。定款に記載されている事項の方が登記事項より多いので、定款変更をしても変更登記をする場合としない場合があります。逆に、役員の改選のように定款変更は必要ないが変更登記が必要な事項があります。法令を順守し、決まった手続きに沿って、適切に定款を変更し、登記を変更することは会社運営の基本になります。

(2011年4月19日)