遺留分 とは、相続に際し、相続財産の中から一定の相続人に対して、法律上必ず留保されなければならない一定の割合です。
・遺留分減殺請求権とは、遺言等で遺留分を侵害されたとしても、一定割合の遺留分を請求できる権利です。
・遺留分減殺は請求権なので、遺留分を侵害しても、請求される場合もあれば請求されない場合もあります。
・遺留分の基本は法定相続分の2分の1で、親のみが相続のときは3分の1、兄弟姉妹に遺留分はありません。
・遺言において、遺留分を侵害する内容を書くことは問題ありませんし、そのとおり遺言の執行もできます。
・遺留分を請求されるのが明白な場合、トラブル回避のため、遺留分を侵害する遺言は書かない方が無難です。
・遺言者は、遺言の中で、遺留分減殺の順序を指定することができます。
・相続が開始(被相続人が死亡)する前であれば、家庭裁判所の許可を得て、遺留分の放棄が可能です。
・遺留分を侵害されたとき、①事実を知ってから1年以内、②事実が発生してから10年以内、に請求します。
・当事務所では、遺留分に係る具体的な説明、遺言の書き方等に関するご相談をお受けします。
・当事務所のご相談料は、最大1時間で5千円(税別)です。
目次
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遺留分の計算
遺留分の割合
遺留分とは、相続に際し、相続財産の中から一定の相続人に対して、法律上必ず留保されなければならない一定の割合です。相続人別の具体的な法定相続分と遺留分の割合は以下のとおりです。
相続人 | 法定相続分 | 遺留分の割合 | |
---|---|---|---|
A | 配偶者相続人のみ | 全部 | 被相続人の財産の2分の1 |
B | 配偶者+子 | 配偶者 2分の1 子 2分の1 |
被相続人の財産の2分の1 |
C | 配偶者+直系尊属 | 配偶者 3分の2 直系尊属 3分の1 |
被相続人の財産の2分の1 |
D | 配偶者+兄弟姉妹 | 配偶者 4分の3 兄弟姉妹 4分の1 |
被相続人の財産の2分の1 (兄弟姉妹の遺留分はなし) |
E | 子のみ | 全部 | 被相続人の財産の2分の1 |
F | 直系尊属のみ | 全部 | 被相続人の財産の3分の1 |
G | 兄弟姉妹のみ | 全部 | なし |
自らの遺留分を侵害された相続人は、遺留分の減殺請求をすることができます。
遺留分算定の基礎財産は、以下のように計算されます。
相続財産+相続開始前1年前にされた贈与+遺留分権利者に損害を加えることを知ってされた(遺言に記載されている)贈与+特別受益-相続債務
遺留分の計算対象としての贈与
遺留分の対象となる財産は、被相続人の死亡時の相続財産だけでなく、生前に贈与した次のものも含まれます。
- 遺留分権利者に損害を与えることを知って行った贈与
当事者双方が遺留分を侵害することを分かっていながら行われた贈与は、すべて遺留分の基礎財産に算入します。 - 相続発生10年以内に相続人に対して行った贈与(特別受益)
例えば相続人に対する結婚資金や住宅取得資金等の贈与は、特別受益と呼ばれ、相続発生10年以内に相続人に対して行った贈与は遺留分の基礎財産に組み込まれます。これらの財産を相続財産に足したうえで、上記の割合に則って遺留分が決定されます。 - 相続発生1年以内に相続人以外の第三者に対して行った贈与
被相続人の死亡の日から遡って1年以内の贈与は、誰に対する贈与であっても遺留分の基礎財産に含めて計算します。
また、被相続人が特別受益の利益を承認している(持戻し免除)場合は、相続分算定の際にはこれを基礎財産に算入しないことになっていますが、遺留分算定の際には持戻し免除の記載が遺言等にあっても基礎財産へ算入します。
遺留分と遺言
遺言で遺留分を侵害している場合
- 遺言執行者は、遺留分を侵害した内容の遺言であっても執行できます。
- 一方、遺言執行者は、就任したこと及び遺言内容を相続人に知らせる責任があります。
- 事前に合意ができている等、遺留分を侵害された相続人が遺留分減殺請求をしないことが分かっている場合は良いですが、そうではなく、遺留分減殺請求を起こされると面倒なことになります。
- 遺留分減殺請求を起こされる可能性がある場合は、予め遺留分を考慮した遺言にしておく方が無難です。
遺言における遺留分減殺の順序の指定
- 遺言者は遺贈に対して遺留分減殺の順序を指定できますが、相続人に対する相続財産に対しても、遺留分減殺の順序を指定できます。
- 例えば、不動産と預貯金がある場合に、預貯金を先に減殺する対象にすれば不動産の分割を防げます。
- また、配偶者と複数の子がいる場合に、子の1人から減殺請求が行われたとき、配偶者ではなく、別の子の相続分を先に減殺の対象にすることができます。
遺留分の請求
請求できる期間
- 遺留分減殺請求権は、「遺留分権利者が相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知ったときから1年間行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始の時から10年経過したときも同様とする。」と規定されています。
- この1年の期間制限は消滅時効の規定、10年の期間制限は除斥期間の規定と解釈されています。
- 除斥期間の場合、 消滅時効と異なり、当事者による援用は不要で、かつ中断という制度がありません。
- したがって遺留分減殺請求権は、遅くとも相続開始後10年間の期間経過により当然に消滅することになります。
請求の順序
遺留分の減殺請求は、以下の順で行います。
遺贈→死因贈与→贈与
- 遺贈
最初に遺贈に対して減殺請求をします。
もし、遺贈が複数あった場合は、その目的の価額に割合に応じて減殺します。
遺言者は、その遺贈を減殺する順序又は割合を指定することができます。 - 死因贈与
死因贈与とは、被相続人が、生前に、死亡を条件に贈与契約を締結することです。
もし、死因贈与が複数あった場合は、その目的の価額に割合に応じて減殺します。 - 贈与
この場合の贈与とは、被相続人が、生前に行った贈与で特別受益に該当するものです。
減殺は、後に行った贈与から順次減殺していきます。
遺言者は、この減殺の順序を異なるように定めることはできません。
請求する相手と金額
- 遺留分は、遺留分を侵害している人が同順位で複数いる場合、その受け取っている金額の割合で請求します。
- 例えば、子3人、ABCが相続人で、遺言により、遺産900万円をAが600万円、Bが300万円相続したとします。
- この場合、子Cは、遺留分である150万円に関し、Aに100万円、Bに50万円を請求することができます。
請求対象が不動産、株式の場合
- 従来、相続財産が不動産や株式の場合、遺留分減殺請求が行われると共有状態となりました。
- 共有状態を解消するには、共有物分割の手続きが必要になります。
- 自宅不動産であったり、事業承継の株式などであった場合、不都合が起きました。
- そこで、2019年7月から、遺留分減殺請求権は、遺留分侵害額請求権という金銭債権に改められました。
- 遺留分を侵害された遺留分権利者は、侵害された遺留分額に相当する金銭の支払いを請求することになりました。
請求した不動産の相続登記
時効期間と除斥期間
不動産の相続登記を行っていても、行っていなくても、時効期間、除斥期間は無関係に進行します。
時効期間も、除斥期間も、相続登記の有無に関わりなく成立します。
既に相続登記が済んでいる場合
遺言内容に沿った相続登記が済んでいる場合は、遺留分権利者がその相続した者に対し、遺留分減殺請求の意思表示をします。そして、その後、以下の所有権移転登記の申請をします。
- 原因日付:遺留分減殺請求の意思表示が相手方に到達した日
- 原因:遺留分減殺請求
- 必要なもの:遺言書、被相続人の除籍謄本
遺留分減殺請求者の戸籍謄本、相続人との関係が分かる戸籍、住民票
まだ相続登記が済んでいない場合
遺言内容に沿った相続登記が済んでいないうちに、遺留分減殺請求をする場合は、その旨の合意書を作成して、所有権移転登記の申請をします。
- 原因日付:相続が発生した日
- 原因:相続
- 必要なもの:遺言書、被相続人の除籍謄本
遺留分減殺請求を受ける人が実印を押印した合意書及び印鑑登録証明書
遺留分減殺請求者の戸籍謄本、相続人との関係が分かる戸籍、住民票
「遺留分減殺請求」から「遺留分侵害額請求」へ
- 2019年7月1日に施行された改正民法(相続法)により、従来「遺留分減殺請求権」と呼ばれていたものが、「遺留分侵害額請求権」へと名称・内容が変更されました。
- 大きな変更点は、遺留分侵害の精算を現物返還(現物分割)ではなく、金銭で行うべきとされたことです(民法第1046条第1項)。
- 従来は、遺留分減殺請求によって、遺贈又は贈与は遺留分を侵害する限度において失効し、目的物の所有権等の権利は、当然に請求者に帰属することとされていました。
- 一方、民法改正後の遺留分侵害額請求権においては、遺留分侵害の精算は金銭の支払いによることで一本化されました。
土地を渡す場合
- 遺留分減殺請求では遺産相続した相続人Aは相続人Bに不動産など現物で遺留分を渡せましたが、遺留分侵害額請求では基本的に現金で渡すことになりました。
- しかし、現実の相続では、遺留留分として土地を渡すことがあります。
- 相続人Aが相続人Bに遺留分の土地を渡す場合、いったんAが土地を売却し、売却分の金額をBに渡した上で、Bがその金額で土地を買ったとみなされます。
- 実際に土地の売却・購入などの手続きがなくても、遺留分のやりとりではあったことになります。
- 評価額2000万円の土地を渡すとAが「2000万円で売却した」とみなされ、Aの譲渡所得になり、所属税がかかります。
- 一方、Bは2000万円で土地を買ったとみなされ不動産取得税がかかります。
遺留分放棄の許可の申立て
- 遺留分の放棄の許可とは
- 遺留分を有する相続人は,相続の開始前(被相続人の生存中)に,家庭裁判所の許可を得て,あらかじめ遺留分を放棄することができます。
- 例えば、被相続人が 何らかの理由により、遺留分を侵害した遺言を遺すとします。しかし、被相続人は自分の死後、自分の望みどおりに遺産分割されるのか、あるいは遺留分が請求されて望みどおりの遺産分割がされないのか知る由もないわけです。
- その時に遺留分の事前放棄が生きてきます。該当の相続人が被相続人を安心させるため、あるいは被相続人が何らかの方法で該当の相続人を説得することにより、その相続人が遺留分の事前放棄をしておけば、遺言どおりの相続が行われることになります。
- 手続き
- 相続人が自ら、家庭裁判所に遺留分放棄の許可の申し立てを行います。
- 基本的な必要書類は以下です。
(1) 申立書
(2) 標準的な申立添付書類
被相続人の戸籍謄本(全部事項証明書)
申立人の戸籍謄本(全部事項証明書) - 家裁から申立人に連絡があり、申立人が家裁において、自分の意思に間違いないことを表明します。
- 相続放棄との関係
- 相続発生前の相続放棄はできません。
- 生前に相続放棄の合意をしても、また、念書や契約書で書面に残しても無効となります。
- また、遺留分の放棄は相続放棄ではありませんので、相続開始後は相続人という立場は残ります。負債が残されたときなどでは注意が必要です。
>家庭裁判所 「遺留分放棄の許可」
>家庭裁判所 「遺留分放棄の許可の申立書」
遺留分減殺請求に係る調停
遺留分減殺に関して当事者間で話合いがつかない場合や話合いができない場合には,遺留分権利者は家庭裁判所の調停手続を利用することができます。
調停の申立てとは別に、内容証明郵便等により意思表示を行っておく必要があります。
申立先は、相手方の住所地の家庭裁判所又は当事者が合意で定める家庭裁判所です。
申立てに必要な費用は、収入印紙1200円分と連絡用の郵便切手です。
申立てに必要な基本的な書類は以下のとおりです。
- 申立書及びその写し
- 被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
- 相続人全員の戸籍謄本
- 被相続人の子(及びその代襲者)が死亡している場合,その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
- 不動産登記事項証明書
- 遺言書の写し又は遺言書の検認調書謄本の写し
当事務所のサポート内容、費用等
サポート内容
- 遺言を作成する場合は、遺留分及び遺留分減殺請求に関する正しい理解が必要ですので、十分に説明いたします。
- 遺言の内容において、遺留分を侵害しない場合と侵害する場合の考慮点を十分説明します。
- 遺留分を侵害した遺言がある場合の対処方法に対してコンサルティングを行います。
- その他、紛争状態になっていない場合であれば、各種のサポートを行うことができます。
費用
- 遺留分に関わるサポートは様々ですので、個別にお見積します。
- 遺留分に関わるご相談、コンサルテーションのみであれば、1時間1万円で対応いたします。
期間
サポート内容により、異なります。
対応エリア
- 町田市などの東京都
- 相模原市、座間市、厚木市、大和市、綾瀬市、海老名市などの神奈川県
- 内容によっては全国、海外対応をします。
問合せ
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