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・相続税の基本的な計算方法は以下のとおりです。
→相続税課税基準額から基礎控除を引きます。
→法定相続どおり相続したと仮定して各相続人の仮の相続税額を算出します。
→その仮の相続税額を合計して相続税総額を求めます。
→相続税総額を実際の相続した財産の比率で各相続人に割り振ります。
・相続した自宅の土地の評価額が80%軽減される小規模宅地等の特例は最も大きな節税方法です。
・子孫等への1人当たり1,500万円の教育費の非課税枠の利用も増えています。
・住宅取得や増改築の資金として、子や孫に非課税で500万円、1000万円といった金額を援助できます。
・配偶者は、相続財産が法定相続分以下、又は1億6000万円以下であれば非課税になります。
・相続人が受け取る死亡保険金の金額が、500万円×法定相続人の数以下であれば、非課税になります。
・被相続人の一親等の血族や配偶者以外の者が相続人又は受遺者の場合、相続税額が2割加算されます。
目次
相続に関するページ
相続税の概要
相続税の基礎控除
3000万円+600万円×法定相続人の数
例えば、配偶者と子供二人であれば4800万円が基礎控除となります。相続財産の評価額が4800万円を超えると課税されることになります。2015年1月1日から基礎控除が4割少なくなったため、相続税対象者が急増したと言われています。
2014年12月31日までに発生した相続に関しては、基礎控除がそれぞれ、3000万円が5000万円、600万円が1000万円です。
相続税の基本的な計算方法
相続税の計算方法は少々面倒です。
相続財産目録を作成します。
↓
相続財産に以下の控除や加算を行い、課税価格を算出します。
非課税財産、債務、葬式費用の控除
生命保険等みなし相続財産(非課税枠あり)、3年以内の生前贈与、相続時精算課税適用分の加算
↓
不動産に対し、小規模宅地等の特例、広大地評価等の適用により相続税の課税価格を減額します。
↓
相続税課税基準額から基礎控除を引きます。
↓
民法の規定による法定相続分どおりに相続したものと仮定して各相続人の相続額を算出します。
↓
各相続人の法定相続額を基準にして相続税率を当てはめ、各相続人の仮の相続税額を算出します。
↓
各相続人の仮の相続税額を合計して相続税の総額を求めます。
↓
相続税の総額を、実際に各相続人が相続した財産の割合に応じて按分します。
↓
各相続人の相続税額に、以下の各種控除や加算を行い、各人の相続税額を決めます。
配偶者の税額控除、未成年者控除、障害者控除、既納付贈与税額控除、
相続時精算課税制度による既納付税額控除
1親等の血族と配偶者以外の相続税額の2割増し
相続税率
相続税速算表 2015年から
課税標準 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000万円以下 | 10% | |
3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
参考:>贈与税率
不動産の評価
宅地のうち、市街地は路線価方式によります。毎年8月に国税局が発表する「路線価格図」に評価額が掲載されます。宅地の形態、位置、道路接面により乗率を掛ける方式です。税務署で調べることになりますが、最近はPCでも調べられます。
宅地のうち、市街地以外は倍率方式によります。固定資産税評価額に一定の倍率を掛ける方式です。具体的な固定資産税評価額は市区町村役場で調べます。
家屋は、固定資産税評価額に一定の倍率(現在は1)を掛ける方式で評価額を決めます。
相続税計算の基礎となる不動産の評価額は、死亡した日を基準とします。
- 小規模宅地等の特例
被相続人が居住用で使用していた宅地で、相続人が継続使用する場合であり、かつその広さが240㎡以下であれば評価額が80%減額されます。但し、相続税の申告が要件となっています。
相続税の申告期限(死亡日の翌日から10ヶ月以内)までに、遺産分割協議を完了させて、誰がどの財産を相続するかを確定しておく必要があります。もし期限までに協議がまとまらない場合には、期限内にとりあえず特例を利用せずに相続税の申告と納付をし、後日協議がまとまった段階で相続税の申告をし直して、過払いの税があれば還付を受けることになります。ただし、この場合でも申告期限後3年以内でなければ修正できません。
株式の評価
上場株式の場合であれば、以下のうち最も低い金額が評価額となります。
- 死亡日の終値
- 死亡日の属する月の終値平均値
- 死亡日の属する月の前月の終値平均値
- 死亡日の属する月の前々月の終値平均値
預貯金の残高証明書
預貯金に関しては、亡くなった日の残高証明書が必要になります。解約すると計算書が送付されてきますが、それでは相続税の申告ができません。解約した後に残高証明書を請求する場合は、手数料756円程度と以下のような書類が再度必要になります。
- 亡くなったことを証明する書類
- 除籍謄本など
- 請求者と亡くなった方との関係を証明する書類
- 遺言書、戸籍謄本など
- 請求者の身分証明書
- 請求者の実印
- 請求者の印鑑登録証明書
2度手間になりますので、相続税の申告をする場合は、解約手続と同時に残高証明書を取得しておくことが必要です。
申告・納付
相続税の申告・納付は、相続から10ヶ月以内に、相続人ではなく被相続人の住所地を管轄する税務署に行います。小規模宅地等の特例や特定計画山林の特例などを適用することにより、課税価格の合計額が遺産に係る基礎控除額以下となる場合にも、相続税の申告をする必要があるとされています。
連帯納付義務
- 最初に、相続税は亡くなった人の課税遺産総額に基づき、財産を取得した相続人全員で払う金額を決定します。
- 次に、実際に受け取った財産額に応じて、それぞれの相続人に納税額を振り分け、各自で納めるのが基本です。
- 相続人のうち誰かが相続税を払わなかったときは、他の相続人が代わりに納めなければなりません。
- これを「連帯納付義務」といいます。
税務署による調査
税務署が相続財産の調査を強化しています。
前提知識
- 2010年の死亡者数は約120万人で相続税の納税申告件数は約5万件、その30%が実地調査を受け、そのうち申告漏れで税金を追徴されたのは約80%。
- 申告書提出から1~2年の間に調査があり、財産が2億円以上だと調査される可能性が高い。
- 被相続人の財産が相続人名義の預貯金に紛れ込む「名義預金」の調査が一段と厳しくなっている。相続人名義でも実質的に被相続人の管理下にあったと税務署が判断すれば相続財産に認定される。
- 金は2012年から1回200万円を超える買い取りについて、取扱業者が税務署への支払調書の提出を義務付けられた。
- 有料老人ホームを利用していた被相続人が短期間で死亡し退去した場合、入居一時金は返還され、通常は被相続人の財産として扱う。しかし、申告しないケースが多く、税務署が確認を強化している。
- 2000万円以上の所得のある人に提出義務のある「財産及び債務の明細書」の提出を税務署から強く求められることが増えてきた。
税務署が重点チェックする項目
- 被相続人の生前の所得・資産に見合う財産額を申告しているか?
- 相続人(家族)名義の預貯金に被相続人の財産が紛れ込んでいないか?
- 相続人名義の同族会社株は実質的に被相続人の財産ではないか?
- 被相続人の生前贈与は適正か?
- 国外にある預貯金などの相続財産をきちんと申告しているか?
- 有料老人ホームの入居一時金の返還分を申告しているか?
- 債務・葬式費用などを過大に差し引いていないか?
- 「法規模宅地の評価減」が受けられないのに申請していないか?
- 被相続人の死亡直前に多額の預貯金を引き出し、財産を減らしていないか?
- 相続人は納税資金をどのように調達したか?
相続税の税務調査に対応する方法
- 被相続人、相続人の預貯金通帳を3~5年分用意
- 申告していない財産はないか、もう一度精査
- 国外財産は十分な説明資料を準備
- 被相続人の預貯金口座などからの出金について、合理的な説明資料を準備
- 被相続人からの贈与を主張するなら、証拠(贈与税申告書、契約書)を用意
相続税計算のための制度、特例を利用することによる税の軽減
養子縁組
養子縁組をすることにより、相続人が増え、基礎控除、生命保険の非課税枠などが大きくなります。このような目的の養子縁組も現実的には少なくありません。
小規模宅地等の特例
面積が240㎡(平成27年1月1日からは330㎡)までの自宅土地を配偶者、一定の親族が継続して居住する場合は、評価額が80%軽減されます。結果的に相続税が発生しなくなったり、大幅に減少したりします。ただ相続人の一人が自宅土地を相続すると相続人間の相続財産のバランスが崩れますので、特別受益分としての検討が必要です。
- 小規模宅地等の特例が受けられるケース
- 被相続人の自宅の敷地を配偶者又は同居の子が取得した場合
- 被相続人(1人暮らし)の自宅の敷地を賃貸住宅に暮らしている子が取得した場合
- 被相続人の賃貸マンションの敷地を子が取得した場合
- 被相続人のお店の敷地をお店を継ぐ子が取得した場合
- 小規模宅地等特例の対象となる土地
小規模宅地等の特例は、居住用の土地だけでなく、事業用、貸付用(アパートやマンション、貸ビル、駐車場等)の土地にも適用されます。事業用は400㎡まで80%減額、貸付用は200㎡まで50%減額です。しかし、限度面積はそれぞれに適用されるのではなく、以下の計算式による合計が限度面積以下になることが必要です。- A+(B×5/3)+(C×2)≦400平方メートル
- A:特定事業用宅地等の面積の合計
- B:特定居住用宅地等の面積の合計
- C:貸付事業用宅地等の面積の合計
なお、相続開始前3年以内に贈与により取得した宅地等や相続時精算課税に係る贈与により取得した宅地等については、この特例の適用を受けることはできませんので注意が必要です。
「家なき子」に係る特例
被相続人と同居していない孫、甥姪等の親族でも小規模宅地等の特例が適用される場合があります。いわゆる「家なき子」という特例です。
以下の1~3のすべてに該当する場合で、かつ、4及び5の要件を満たす人が適用になります。
- 相続開始の時において、被相続人若しくは相続人が日本国内に住所を有していること、又は、相続人が日本国内に住所を有しない場合で日本国籍を有していること
- 被相続人に配偶者がいないこと
- 被相続人に、相続開始の直前においてその被相続人の居住の用に供されていた家屋に居住していた親族でその被相続人の相続人(相続の放棄があった場合には、その放棄がなかったものとした場合の相続人)である人がいないこと
- 相続開始前3年以内に日本国内にあるその人又はその人の配偶者の所有する家屋(相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋を除きます。)に居住したことがないこと
- その宅地等を相続税の申告期限まで有していること
広大地の評価
広大地とは、その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大な宅地で、都市計画法第4条第12項に規定する開発行為を行うとした場合に公共公益的施設用地の負担が必要と認められるものをいいます。ただし、大規模工場用地に該当するもの及び中高層の集合住宅等の敷地用地に適しているものは除きます。広大地補正率は、0.6が基準なので、評価額が4割減になります。広い土地を分割して住宅地を造成した場合に道路が必要になるため、その道路分の価値を減価するという考え方です。マンションの適地か、広大地と見なせるかなどは、税理士の判断領域になります。三大都市圏の場合、500㎡以上が広大地になるようです。
賃貸されている土地や家屋の評価
アパート等を立てることにより財産評価額を下げられます。アパートや貸家などの建物の評価は3割減になります。アパート、貸家などの敷地は、借地権割合と借家権割合を乗じた分だけ評価減になります。
相続時精算課税制度
財産の早期移転を促すために設けられ、贈与税と相続税が一体化した制度です。贈与時に特別控除額の2,500万円を超える金額に対し一律20%の贈与税が課税されます。相続時には贈与された金額を含めて相続税の計算をして、納付済みの贈与税と相殺します。つまり、贈与時に相続税を仮払いし、実際の相続時に精算することになります。65歳以上の親から20歳以上の子(代襲相続含む)への贈与に限られます。
相続時には、事前に受け取った金額を遺産総額に加えるため、それ自体では節税にはなりません。しかし、この制度を利用して、相続人の住宅ローンを早目に返済することなどにより、金利を軽減できるなどの2次的、派生的なメリットを享受できます。
110万円の暦年の非課税枠と一緒に利用はできません。暦年課税の適用を受けるか相続時精算課税を選択するかは、それぞれの子が父母ごとに選択することになります。また、一度相続時精算課税を選択した場合は暦年課税に戻ることはできません。
配偶者の税額軽減
配偶者の相続財産取得額が法定相続分以下であれば、金額に関わりなく非課税になります。
また、法定相続分を超えていても、課税価格が1億6000万円以下であれば非課税になります。
相続税の対象となる財産を減少させることによる節税
住宅取得資金等の贈与による非課税枠の利用
住宅取得や増改築の資金として、子や孫に非課税で援助することが出来ます。平成24年の場合、一般住宅で1000万円、省エネ住宅で1500万円までです。援助を受ける側の所得金額が2000万円以下という条件があります。
具体的な非課税限度額は、次の区分により、最初に非課税の特例を受けようとする住宅取得等資金の贈与を受けた年に応じて、受贈者1人について、次のとおりです。
- 省エネ等住宅の場合
イ 平成24年のときは1500万円
ロ 平成25年のときは1200万円
ハ 平成26年のときは1000万円 - 省エネ等住宅以外の住宅の場合
イ 平成24年のときは1000万円
ロ 平成25年のときは 700万円
ハ 平成26年のときは 500万円
暦年1人110万円までの贈与税の非課税枠の利用
暦年課税は、従来からの課税方式で、1年間に贈与された財産の価額をもとに、10%から50%の税率で課税されます。ただし、歴年課税には110万円の基礎控除がありますので、贈与財産が110万円以下であれば贈与税はかかりません。また申告も不要です。
仮に、3人に100万円ずつ3年間贈与すると900万円の相続財産を無税で移転できます。200万円贈与し、敢えて基礎控除の110万円を控除した90万円に対する9万円の贈与税を払い、短期間で資産移転する方法もあります。ただし、相続開始3年以内の贈与は相続財産として評価されますので、この方法は早めに始める方が良いと言えます。
毎年、定期的に行う贈与は、一括贈与とみなされ、課税される可能性があります。税務当局から否認されないためには、以下のような注意をすることが必要です。
- 毎年、贈与契約書を作成する。
- 公証役場で公正書類としておく。
- 贈与の事実を振込の記録として残す。
- 振り込んだ相手の子・孫等の通帳を自分で預からない。
- 毎年、金額を変え、振り込む日も変えるようにする。
- 110万円を少し超えた額の贈与をして、10%の贈与税を払っておく。
しかし、以上のことを毎年行うのは結構面倒です。ある信託銀行では、その面倒さをなくすため、受益権の分割という手法を用いた贈与を提案しています。信託銀行が間に入ることで、税務当局の生前贈与否認のリスクをなくすことができるとのことです。
子孫等への1人当たり1,500万円の教育費の非課税枠の利用
平成25年4月1日から平成27年12月31日までの時限立法ですが、相続財産をまとめて無税で移転できます。祖父母等の直系尊属から子・孫等に対して、1,500万円の非課税の教育費贈与を行えます。例えば、信託銀行が手数料無料でこの金額を預かる制度があり、本人の教育費としての領収書を提出することにより、本人が30歳になるまでそこから順次引き出しが可能です。30歳になった時点で残高があれば贈与として課税されます。節税にはなるものの相続人間の遺産配分がアンバランスになりますので、特別受益分としての扱いを一緒に検討すべきと思われます。
結婚・子育て資金の一括贈与の利用
平成27年4月1日から平成31年3月31日までの間に、20歳以上50歳未満の受贈者が、結婚・子育て資金に充てるため、金融機関等との一定の契約に基づき、父母や祖父母などの直系尊属である贈与者から受けた1,000万円までの金額に相当する部分の価額については贈与税が非課税となります。
ただし、以下のいずれかの要件を満たす必要があります。
- 信託受益権を付与された場合、
- 書面による贈与により取得した金銭を銀行等に預入をした場合
- 書面による贈与により取得した金銭等で証券会社等で有価証券を購入した場合
契約期間中に贈与者が死亡した場合には、死亡日において、結婚・子育て資金支出額を控除した残額を、贈与者から相続等により取得したこととされます。
その後、受贈者が50歳に達することなどにより、結婚・子育て口座に係る契約が終了した場合には、非課税拠出額から結婚・子育て資金支出額を控除した残額があるときは、その残額はその契約終了時に贈与があったこととされます。
つまり、贈与者が亡くなる前に全額費消しないと残額が相続税、受贈者が50歳になる前に全額費消しないと残額が贈与税の対象になります。
生命保険の非課税枠の利用
被相続人の死亡によって取得した生命保険金(損害保険金含む)で、その保険料の全部又は一部を被相続人が負担していたものは、相続税の課税対象となります。ただし、この死亡保険金の受取人が相続人(相続を放棄した人や相続権を失った人は含まれません。)である場合、全ての相続人が受け取った保険金の合計額が次の算式によって計算した非課税限度額を超えるとき、その超える部分が相続税の課税対象になります。なお、相続人以外の人が取得した死亡保険金には非課税の適用はありません。
500万円×法定相続人の数=非課税限度額
つまり、生命保険の保険金は相続財産とは別に、相続人1人当たり500万円の非課税枠があります。受取人を相続人にしておくことにより、相続人1人当たり相続財産を500万円少なくすることができることになります。相続税対策として、90歳6か月まで加入できる一時払い終身保険が発売されています。ただし、途中解約は損になりますので、解約可能性のない金額にすべきです。
夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除の利用
婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、居住用不動産又は居住用不動産を取得するための金銭の贈与が行われた場合、基礎控除110万円のほかに最高2,000万円まで控除(配偶者控除)できるという特例です。贈与税の配偶者控除は同じ配偶者からの贈与については一生に一度しか適用を受けることができません。ただし、登録免許税(固定資産評価額の2%)と不動産取得税(同評価額の1/2の3%)はかかります。
二次相続を考えた一次相続
例えば、夫が先に亡くなった時の一次相続で、妻が多目の財産を相続してしまうと、その妻の二次相続時に、元々の妻の財産と相続した夫の財産を合計した相続財産に課税されることになります。この場合は、一次相続時に、子の相続割合を高めることにより、結果的に妻の相続税の対象になる相続財産を減少させる方法が考えられます。
必要な支出を早めに行う
単純な話、お金を使って相続財産を減らすことが考えられます。墓地、家の改築、その他必要なものであれば費用を支出して、その使用価値を子、孫にそのまま引き継ぐことが考えられます。しかし、車を孫の名義で買うなどの場合は贈与税が関係しますので注意が必要です。
自宅のリフォームを行うことも考えられます。自宅の場合、基礎と柱だけ残して改築したり、大幅な増築をしたりしない限り、そのリフォームによって固定資産税の評価額が上がることはありません。
その他の相続税の計算方法
葬式等に関わる費用の控除
控除できるもの
(1) 葬式、葬送、火葬、埋葬、納骨の費用
(2) 遺体や遺骨の回送にかかった費用
(3) お通夜など、葬式の前後で、葬式に直接関連のある費用
(4) 葬式に当たり、お寺などへの読経料などのお礼をした費用
(5) 死体の捜索又は死体や遺骨の運搬にかかった費用
控除できないもの
(1) 香典返しの費用
(2) 墓石や墓地の費用
(3) 初七日や法事などの費用
生命保険金と死亡退職金の非課税枠
生命保険、死亡退職金は、それぞれ500万円に法定相続人の数を乗じた金額までは非課税になります。
配偶者の税額の軽減
被相続人の配偶者が遺産分割や遺贈により実際に取得した正味の遺産額が、次の金額のどちらか多い金額までは配偶者に相続税はかからないという制度です。
- 1億6千万円
- 配偶者の法定相続分相当額
障害者の税額控除
相続人が85歳未満で障害者のときは、相続税の額から一定の金額を差し引きます。障害者控除が受けられる人は、相続時点で日本国内に住所があり、かつ法定相続人である障害者という条件に該当する人です。
障害者控除の額は、その障害者が満85歳になるまでの年数1年(端数は切り上げ)につき6万円で計算した額です。特別障害者については1年につき12万円です。障害者控除額が、その障害者本人の相続税額より大きい場合は、その引き切れない部分の金額をその障害者の扶養義務者の相続税額から差し引きます。
未成年者の税額控除
未成年者である相続人は、20歳になるまでの年数に6万円を乗じた金額を相続税額から控除することができます。
相続税の2割加算
相続又は遺贈によって財産を取得した者が、被相続人の一親等の血族や配偶者以外の者である場合、計算されたその人の相続税額が2割加算されます。
遺産分割協議がまとまらないとき
相続税の申告・納付は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内にしなければなりません(相続税法27条)。注意しなければならないことは、遺産分割の話し合いが相続人の間でまだついていない状態であっても、相続税の申告・納付はしなければいけないということです。
申告時に遺産分割の協議がまだ整っていない場合は、法定相続分に従って分割取得したものと仮定して申告・納付することになっており(相続税法55条)、その後の実際の遺産分割協議の内容が法定相続分と異なるものであれば、相続人がそれぞれ、修正申告あるいは更正請求をすることになります。
未分割財産については、配偶者に対する相続税額の軽減・小規模宅地の評価減・特定事業用資産の特例・物納・売却ができません。したがって、遺産分割が確定した場合に比べて、多額の納税資金が必要となることがあります。
抵当権抹消、相続登記、相続税の申告・納税の順番と時期
- 団体信用生命保険等に入っている場合では、まず抵当権設定会社に連絡し、抵当権抹消の書類を請求します。
記載されている手順に従って、法務局で抵当権抹消登記を行います。 - 次に、法定分割、遺産分割協議書、遺言書などの内容に沿って、法務局で該当不動産の相続登記を行います。
原本還付することにより、多くの書類が戻ってきます。 - 相続した財産を基準として相続税を計算し、申告及び納税をします。
相続登記の原本還付で戻ってきた書類を利用します。
税務署では、原本還付はできません。
相続開始から10ヶ月以内に納税まで行う必要があります。
もし、不動産の相続に関して、なかなか協議がまとまらず、10ヶ月ぎりぎりになってしまった場合は、不動産登記より先に相続税の申告、納税を行います。
相続税に関するペナルティの種類
- 無申告加算税
- 申告期限から2週間以内で、当局からの指摘前に申告: 0%
- 申告期限から2週間超の遅延で、当局からの指摘前に申告: 5%
- 当局から指摘を受けてから申告(~50万円までの本税部分): 15%
- 当局から指摘を受けてから申告(50万円を超える本税部分): 20%
- 過少申告加算税
- 当局からの指摘前に修正申告: 0%
- 当局からの指摘を受けてから修正申告: 追徴税額の10%
当初の税額と同額を超える部分については15%
- 重加算税
- 仮装隠ぺいによる過少申告: 追徴税額の35%
- 仮装隠ぺいによる無申告: 申告税額の40%
- 延滞税
- 本来の納期限の翌日から納付日までの利息: 年2.9%
一定期間過ぎると 年9.2%
- 本来の納期限の翌日から納付日までの利息: 年2.9%
2015年1月1日からの相続税の改正
以下、主な改正内容です。
- 基礎控除
- 前)5,000万円+1,000万円×法定相続人の数
- 後)3,000万円+600万円×法定相続人の数
- 相続税率
- 前後)1,000万円以下10%、3,000万円以下15%、5,000万円以下20%、1億円以下30%、2億円以下40%までは変わりません
- 前)3億円以下40%、3億円超50%
- 後)2億円以下40%、3億円以下45%、6億円以下50%、6億円超55%
- 小規模宅地等特例
- 前)特定居住用宅地等の240㎡までは、税額が80%減免されます。特定居住用宅地と特定事業用等宅地等の特例適用は最大400㎡までの限定併用です。
- 後)特定居住用宅地等の330㎡までは、税額が80%減免されます。特定居住用宅地と特定事業用等宅地等の特例適用は完全併用されます。
- 障害者控除
- 前) 6万円(特別障害者は12万円)×85歳に達するまでの年数
- 後)10万円(特別障害者は20万円)×85歳に達するまでの年数
- 未成年者控除
- 前) 6万円×20歳に達するまでの年数
- 後)10万円×20歳に達するまでの年数
相続税速算表 2014年まで
課税標準 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000万円以下 | 10% | |
3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
3億円以下 | 40% | 1,700万円 |
3億円超 | 50% | 4,700万円 |
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