厚生年金基金が解散すると年金はどうなる?

会社員の中には厚生年金基金に加入していた(いる)人が結構います。しかし、多くの基金が積立不足に陥っているため、政府は厚生年金基金制度自体を廃止する方向です。現在、既に基金から年金を受給している人は今後自分の年金がどうなるのか非常に心配です。現在、基金に加入している人は、将来自分の年金がどうなるのか心配です。

加入していた(いる)厚生年金基金が解散すると、自分の年金はどうなるのでしょうか?

まず、会社員の年金を整理してみます。

厚生年金基金に加入している会社員の年金は、
 3階部分:厚生年金基金
 2階部分:厚生年金
 1階部分:国民(基礎)年金
の3階建てです。
  • 1階部分
    国民(基礎)年金で、自営業の方と同じ国民皆年金部分です。

    • 保険料
      国民年金保険料としては払っていませんが、第2号被保険者として厚生年金保険料の中に含まれています。
    • 給付
      自営業である第1号被保険者、及び第2号被保険者の被扶養者である第3号被保険者と同様、国民(基礎)年金が支給されます。最長で40年間払い込み、月約6.5万円受け取れますが、実際は6万円前後の受給者が多いと言われています。
  • 2階部分
    厚生年金保険で、会社員独自部分です。

    • 保険料
      1階の国民年金部分を含めて、厚生年金保険料として、給料から控除されています。保険料は、報酬に対応した一定比率を給与に乗じて計算し、その保険料を従業員と会社が折半負担しています。
    • 給付
      国民(基礎)年金部分を除いた部分が、報酬比例の厚生年金として支給されます。
      現役時代の給与によって異なりますが、標準的には、現時点ではおおよそ月10万円強です。
  • 3階部分
    厚生年金基金の部分です。企業年金、業種別年金と呼ばれることもあります。以前、ほとんどの大企業はこの基金制度を持っていましたが、現在その数を急激に減らしています。

    • 掛金
      全額会社負担です。
    • 給付
      • 基本年金(代行部分とプラスアルファ部分)
        厚生年金基金は、厚生年金保険料の一部を政府から預り、代行運用しています。本来は、その代行運用部分(本来の厚生年金の一部です。)と運用益であるべきプラスアルファ部分を基本年金として支給するはずでした。しかし、現実的には、運用がうまくいかず、プラスアルファどころか、マイナスアルファになり、代行割れ(元本割れ)を起こしている基金が多く、大問題になっています。
        基金が代行割れで解散する場合、予定していたプラスアルファ部分は当然受給できません。しかし、代行部分は厚生年金保険の一部で、政府が約束している部分なので、不足部分は基金加入企業、政府などが負担し、受給者への給付が保証されています。つまり、最悪でも、基金に加入していなかった人と同額は受給できるということになります。
      • 加算年金
        企業が基金に掛金を払っており、基金がそれを元手に投資をし、より多くの老後の資金を加入者に支給する予定でした。しかし、ほとんどの基金は、その投資がうまくいっていないため、この加算年金は期待薄です。基金が代行割れ等で解散する場合、この加算年金もなくなります。

上乗せ部分(プラスアルファ部分と加算年金)の受給額は、基金によって大きく違いますが、予定通りもらえている人で、例えば月3万円程度というところです。代行部分の金額は、厚生年金の一部なので、2階部分の金額に含め、上記の3万円には含めていません。(実際に受給するときは、代行部分が基金から支給されますので注意が必要です。)

結論的に、基金から現在年金を受給している人は、一般の厚生年金に上乗せされていた部分(プラスアルファ部分と加算年金で例えば3万円程度)はなくなると思った方が良いです。解散時に余裕のある基金は、若干の上乗せも期待できますが、あったらラッキーという程度かもしれません。結果的に、基金に加入していた会社員の年金額は、基金に加入していなかった会社員と同額に近くなってしまいます。ただ、基金に対しての掛金は会社だけが払っていたので、損をするのは会社であって、従業員が損をするわけではありません。

まだ現役で、現在、基金の加入員である人に関しても、既に基金から年金を受給している人と同等のことが言えます。

2014年5月19日(月)

国民年金(基礎年金)の保険料納付を65歳までに

厚労省は、公的年金制度を見直しています。

  • 財政
    • 2012年度の公的年金収支は、収入43兆円、支出50兆円で、約7兆円の赤字。
  • 国民年金
    • 現在は、保険料を20歳から40年納めると65歳から満額の月額65,000円を受け取れる。
    • 納付期間を45年に延ばし、受取額を月額8,000円程度にする案を検討。
    • 更に、欧米にならって、年金保険料を67~68歳まで納め、受給開始年齢も67~68歳にする案も浮上。
  • 厚生年金
    • 厚生年金の受給開始年齢は段階的に引き上げている最中で、男性は2015年、女性は2030年に65歳開始となる。
    • パート労働者は、週20時間以上働く月収8.8万円以上の人で、従業員が501人以上の大企業に勤める25万人が2016年10月から厚生年金に加入できる。
    • 更に、中小企業の従業員も対象に加え、月収基準も5~6万円以上とし、300万にの加入を目指す。

2014年5月6日(火)

厚生年金基金を10年間かけて廃止へ

  • 厚生年金代行部分は減額できないので、積立不足があり、加入企業で穴埋めできないときは、厚生年金全体で穴埋めします。
  • 厚生年金のみの人は自分と関係ない基金の人の厚生年金部分を穴埋めすることになるので、割を食う感じがします。
  • 厚年基金の独自上乗せ部分は保障されません。減額されるか、全く支給されなくなります。
  • 厚年基金の半数が積立不足(つまり上乗せ部分を減額する)、半数が積立不足になっていない(つまり約束通り上乗せ部分を支給する)とのことです。

厚年基金から受給している人、厚年基金に現在加入している人にとって、受給/加入している厚年基金が積立不足になっているかいないかは重大問題です。

2012年10月25日(木)

妻の就労

週30時間未満のパートだと、国民年金の「第3号被保険者」のままだが、年収が130万円以上になると「第1号被保険者」になり、自分で国民年金の保険料を納めなければならない。このため収入が130万円未満になるよう仕事を抑える「就業調整」をしている妻は多い。所得税の非課税限度額(103万円)を超えないようにする例も目立つ。共働きが一般的になりつつあるというのに、時代錯誤の古い制度のままなのが良く分かる。

政府は2016年10月から、厚生年金の適用対象を週20時間以上・30時間未満の人にも広げる。ただ従業員501人以上、年収106万円以上などの条件を設けるため、新たに対象になるのは25万人にとどまる。

2012年10月15日(月)

家庭の主婦の年金は誰が払っているのか?

家庭の主婦である国民年金第3号被保険者の年金保険料は誰が支払っているのでしょうか?

被扶養者である家庭の主婦は、第3号被保険者ということで、国民年金保険料を納付していません。一体誰が払っているのでしょうか? 扶養者である夫が納付していると普通思いますが、被扶養者がいてもその夫たる扶養者の厚生年金保険料率は独身男女、あるいは既婚女性と同率です。自分の妻の分を負担しているようには見えません。

厚生年金保険料には国民年金保険料が含まれていますので、毎年、厚生年金側から国民年金側に基礎(国民)年金の給付に必要な費用を拠出金として払っています。その際、国民年金の全被保険者数に対する第2号と第3号被保険者数の比率で計算し、支払っています。つまり厚生年金保険料として被保険者から集めた保険料からざっくりとその被保険者と被保険者の被扶養者(つまり第3号被保険者)の分を支払っていることになります。つまり、家庭の主婦の国民年金保険料は、その夫、そして無関係の独身男女、無関係の既婚女性が皆で払ってあげていることになります。

女性が結婚すると皆家庭に入っていた時代ならいざ知らず、この保険料負担の仕組みはどう考えてもおかしいと思います。何故もっと問題にならないか不思議です。高い厚生年金保険料を支払っている独身男女、既婚女性はもっと怒るべきだと思います。政治家の怠慢、不作為も甚だしいと思います。

2011年11月29日(火)

物価スライド特例措置解消による年金減額?

本日の日経新聞朝刊1面に、物価スライド特例措置解消による年金額の減額の記事が掲載されていました。

本来は、物価スライドという制度により、2000年度から物価の下落に合わせて、年金額を減額しなければなりませんでした。しかし、当時の自民党が選挙対策上、年金額を据え置く特例措置をとり、2000年度から3年間適用しませんでした。その結果として、それ以降ずっと年金額は本来よりも多く支払われており、その累計が7兆円にもなっています。2011年度においても、年金額は本来水準より2.5%多い年金額が支給されています。その2.5%のギャップを来年から3年間でなくそうということです。当然だと思います。戻しても払い過ぎた7兆円以上の年金は戻ってきません。

もう一つの年金額抑制の仕組みとして、マクロ経済スライドという制度が2004年に導入されています。年金負担者(若者)の減少と平均余命の伸びにより、年金財政がますます厳しくなるので、年金の伸び率を賃金や物価の上昇率よりも0.9%低く押さえることになっていました。しかし、上記の特例措置が解消されるまで、またデフレ下では適用しようがないということで、発動されていません。

2011年11月24日(木)

基礎年金の原資はどこから出ているか?

本日の日経新聞1面に基礎年金の費用負担の記事が掲載されています。

年金費用が膨らんで不足してきたので、実は2009年度から基礎年金の費用の国庫負担割合が従来の3分の1から2分の1に引き上げられました。しかし、財源がありませんでした。そこで特別会計からお金をひねり出して、今年度までの3年間、その差分(1/2-1/3=1/6)を埋めてきました。

しかし、その埋蔵金も底をつき始めてきました。といっても他に財源があるわけではありません。そこで、将来引き上げる消費税を前取りしてその不足分に充当しようということになったわけです。将来の収入を先に使ってしまうようなものです。これで消費税の導入は決定的なものになります。

いずれにしろ、基礎年金の1/2は税金が投入されているわけなので、国民年金保険料を払わないという手はありません。しっかり国民年金保険料を払って、2倍の基礎年金として返してもらうのが妥当だと思います。

※名称として、納付する際は国民年金ですが、受給する際は基礎年金になります。

2011年11月21日(月)

特別支給の老齢厚生年金繰下げはできません

年金は基本的に65歳からの支給になっていますが、まだ60歳支給開始から65歳支給開始への移行の経過措置として、65歳前でも受給できるケースがあります。65歳前の特別支給の老齢厚生年金がそれになります。今年60歳になる人は老齢厚生年金の比例報酬部分を特別支給されます。

一方、繰上げ受給、繰下げ受給という制度があります。減額されても良いから早く受給したい場合が繰上げ、受給を遅くしても良いから増額してほしい場合が繰下げになります。

上記の65歳前の特別支給の老齢厚生年金を繰り下げて増額させたい、という話が出ることがありますが、全くの誤解です。特別支給の老齢厚生年金は繰下げはできません。繰下げというオプションはありません。経過措置として、暫定的、恩恵的(?)に支給されているものなので、「後で受給するから増額してくれ」という希望は受け入れてくれません。素直に、速やかに受給するしかありません。

もっとも、会社員で厚生年金に加入している人は低年齢在職老齢年金の制度で減額、あるいは支給されないケースがありますが…

2011年11月19日(土)

60歳台前半の在職老齢年金の改正案

5月21日の日経新聞の朝刊に、「60歳代前半の就労を促進、年金減額幅を縮小 厚労省案全容」という記事が掲載されていました。

現行制度では60~64歳の人が働きながら厚生年金を受け取る場合、年金と給与の合計額が月額28万円を超えると、28万円を超えた分の半分だけ受け取る年金が減り、46万円超では給与の増加分だけ年金がカットされます。
厚労省は給与と年金の合計額が46万円を超えるまで、年金を減額しない制度に変える方針とのことです。
高齢者の就労を促すのが目的ですが、確かにこの差は大きいです。継続就労に対する相当のモチベーションアップになりそうです。

2011年5月28日(土)