貸したお金を返済してもらう方法

借りたお金は返すのは当然のことですが、中には借りたお金を返さない人もいます。返せないのならいざ知らず、返せるのに返さない人もいます。

今回は、そのような人からどのようにお金を取り戻すか、に関してです。
いわゆる債権の取立です。

第1段階 内容証明郵便の送達

口頭、メール、通常郵便による催促では返済してもらえない場合、次に取る手段は内容証明郵便です。内容証明郵便とは、

「いつ、誰から誰へ、どのような内容の文書が出されたか」

を郵便事業株式会社が証明してくれる制度です。
その際、いつまでにいくら返して欲しい、という要求を明確に書くことはもちろんですが、最後に、

「なお、上記期間内に支払いのない場合、法的手段をとることになりますので申し添えます。」

というような文章を入れます。

通常の郵便による催促から一足飛びに訴訟に移ると相手が態度を硬化させる可能性が高いです。まずは、内容証明郵便でこちらの本気度を示すわけです。しかし、内容証明郵便による催告は一般の人にはかなりの心理的プレッシャーになります。この段階で返済してくれる人は多いと思います。

第2段階 訴訟提起

それでも返済がない場合は、貸金返還訴訟を起こします。借用書があり、明らかに勝算があるのであれば本人訴訟で良いでしょう。低廉な費用で済みます。特に60万円以下であれば、簡易裁判所で数千円の費用で済む少額訴訟の制度があります。

実際に訴えられると、相手もさすがに無視できなくなります。特に自分に勝算がない場合はなおさらです。この段階までくると返済できるのであれば返済するでしょう。仮に即刻全額返済しないまでも、分割返済などの和解提案をしてくるかもしれません。

第3段階 口頭陳述、勝訴判決

それでも返済がない場合は、実際の裁判になります。少額訴訟であれば1回だけの審理で口頭弁論が行われ、その日に判決が下されます。1日だけの拘束で手間がかかりません。通常の訴訟であっても借用書があれば負けることはないでしょう。敗訴判決が出れば、さすがに相手も何とかして返済すると思われます。

第4段階 強制執行

それでも返済がない場合は、強制執行をしてもらうことになります。ただ、勝訴の確定判決が出たからすぐ強制執行を行えるわけではありません。原則的には、その確定判決(債務名義)に執行文の付与を得た後、執行裁判所により強制執行の開始決定をしてもらうことが必要です。不動産執行と動産執行に違いはあるものの、差押え、競売、換価、債権回収という手続きは基本的に同じです。

まとめ

以上のように、最後は、国の力を借りて強制執行をしてもらうことになります。しかし、結構長い道のりです。その間に相手は返済逃れのため、財産を隠してしまうかもしれません。民事訴訟では勝てるかどうかより先に、勝ったとして差し押さえる財産があるかどうかの方が重要問題です。財産がなければ、裁判に勝っても判決書はダダの紙切れになってしまいます。

そこで、一般には、上記の段階を順番に踏むのではなく、財産隠しを防ぐため、訴訟提起前に抜き打ちで仮差押えをしてしまいます。最後の段階で借金返済の資産がないのでは無駄な努力になってしまいます。予めその借金返済用の動産、不動産を差し押さえる分けです。その後、おもむろに訴訟に持ち込むことになります。

ところで、返済遅延が発生したら一足飛びに強制執行に移れる強力な方法があります。金銭消費貸借契約書(借用書)を公正証書にする方法です。
書面に

「借主は、本契約による金銭債務を履行しないときは、直ちに強制執行に服する旨陳述した。」

と記載します。
それにより、確定判決と同等の効果が得られますので、支払い遅延になったときはすぐに強制執行に移ることができます。公証人手数料は、貸金額が100万円でも5,000円程度ですので、どうしてもお金を貸さざる得ないときは公正証書にするのが良い方法です。

(2011年 1月 9日)