日本語学校卒の留学生の「特定活動/就活」の学校要件を緩和

  • 政府は外国人留学生が日本語学校を卒業後に国内で就職活動するのに必要な在留資格を取得しやすくします。
  • 在籍校が3年連続で留学生管理の「適正校」であることを求める要件を緩和し、直近1年でも適正だと国が判断すれば認めるようにします。
  • まずは国家戦略特区を対象に始め、運用を検証します。
  • 政府が2023年度中にも既存の通知を見直します。
  • 適正校になるには不法残留や資格取り消しなど問題のある留学生を在籍者全体の5%以下に抑える必要があります。
  • 23年7月10日時点で国内に日本語学校は831校あり、適正校は全体の85%を占めます。
  • 22年9月時点の75%から増えています。

2018年に学校を卒業し、資格変更した人数

2018年に日本の大学や専門学校を卒業後、日本で就職するために在留資格を変更した外国人留学生の状況は以下のとおり。

  • 概要
    • 処分した(申請)数は、延べ3万924人(前年比2998人増)
    • 変更を許可した人数は、2万5942人(前年比3523人増)
    • 許可率は、83.9%で、前年よりアップ
    • 許可数は、前年を3523人上回り過去最多を更新
    • 許可数は、5年前の13年と比べると、2倍以上
    • 処分数、許可数とも前年と比べて増加
  • 国籍・地域別許可数
    • 1位は、中国の1万886人(17年、1万326人)
    • 2位がベトナムの5244人(4633人)
    • 3位はネパールの2934人(2026人)
    • 4位に韓国の1575人(1487人)
    • 5位は台湾で1065人(810人)
    • 6位スリランカ 432人
    • 7位インドネシア 362人
    • 8位ミャンマー 348人
    • など、アジア諸国が全体の95.3%を占めた。
  • 最終学歴別許可数
    • 専修学校卒が7190人
    • 大学卒が1万1285人
    • 大学院卒が5931人
  • 業種別許可数
    • 製造業が6327人で18.4%
      • 一般機械や電機、食品など
    • 非製造業が2万8139人で81.6%
      • コンピュータ関連サービスや商業(貿易)、飲食業、ホテル・旅館、教育など

外食ピンチ:特定技能は増えず、留学生は減少

現時点において、「特定技能」の外食の試験では1500人が合格しているものの在留資格が許可されたのは20人強ということです。
一方、昨年から、「留学」の認定証明書交付が極端に絞られています。
期待の特定技能労働者が増えず、従来からの留学生の労働力が大きく減る、というダブルパンチを受け、外食業は大ピンチに陥っています。
まして、コンビニは、「特定技能」の14業種にも含まれていないので、先が全く読めなくなり、人手不足閉店が増えつつあります。

まずは、「特定技能」の手続きをもう少し軽くし、次に、家族滞在を認めるようにして、早く特定技能労働者を増やす必要があります。
他方で、人口が確実に減少しているので、人手に頼るサービスの低下は国民全体で受け入れざるを得ないのも事実です。

外国人留学生の起業支援へ、特区でビザ緩和法案

  • 政府は国家戦略特区内に限り、外国人留学生の在留資格「留学」を「経営・管理」変更できるようにする。
  • 10月に召集予定の臨時国会に国家戦略特区法の改正案を提出し、早期成立を目指す。
  • 日本で外国人が起業する場合は「経営・管理」ビザが必要になるが、現在の制度では外国人留学生が在学中に変更することができない。
  • 外国人留学生が起業するためには、いったん卒業するか退学した上で母国に一時帰国して「経営・管理」ビザを取り直さなければならない。
  • 改正案が成立すれば、国家戦略特区内なら留学生は一時帰国することなく「経営・管理」ビザに変更することができるようになる。
  • 在学中でも認められるため、退学や卒業をせず、起業意欲がある段階ですぐに取得できる。

日本語学校の入学希望者の留学ビザ交付率が急降下

日本語学校における、今年4月の認定証明書「留学」の交付率は以下のとおりです。
・中国や韓国は90%台
・ミャンマーは前年の76%から15%に急低下
・バングラデシュは61%から21%に急低下
・スリランカは50%から21%に急低下
・関東甲信越では、ネパール、バングラデシュ、スリランカは1%台以下

交付率の下降が顕著になったのは昨年10月から。
関東甲信越には、就労目当ての留学生が集中しているとみられる。

調査は「全国日本語学校連合会」(東京)で、全国708校のうち327校が回答した。
留学生は出入国管理法で週28時間しか働けないが、留学名目の来日外国人は後を絶たない。
就労目的の留学生だったとみられる不法残留者は、14年の2777人から18年の4100人まで増え続けている。

出入国在留管理庁の担当者の説明
「偽造書類を提出する申請者の増加に対応した結果。不法残留や不法就労の留学生が多い国からの申請は、より厳しく審査している」

外国人留学生の就労拡大に向け、新たな制度

法務省は外国人留学生の就労拡大に向け、以下の新たな制度を創設するとのことです。

  • 日本の大学または大学院の卒業後、年収300万円以上で日本語を使う職場で働く場合に限り、業種や分野を制限せずに外国人の在留を認める。
  • 留学生が大学卒業後に就労を希望する場合「技術・人文知識・国際業務」など入管法に定める就労資格に変更すれば今も可能だが、学んだ分野と業務に関連性が必要で、選択肢が限られていた。
  • 独立して生計を維持する能力を示す基準として年収300万円の要件を満たせば就職先を幅広く選べる。
  • 起業など外国人のさまざまな活動を法相が独自に定める在留資格「特定活動」の対象範囲を広げるか、入管法を改正して新たな資格を設けるかを検討している。
  • 来春にも新制度を導入し、留学生の就労拡大につなげる。

留学生が、業種や分野を問わず就職して在留できるとしたら凄いことです。
今まで、多くの留学生が、「学んだ分野と業務の関連性」という壁にぶち当たって帰国していました。
この制度が導入されれば、相当の数の留学生が日本で就職をするのではないかと思われます。

日本語学校急増

観光客の増加と共に、日本語学校、及びその生徒が増えています。しかし、日本語学校設置の基準が緩いため、「金儲け」のための安易な日本語学校設立も増えており、結果として、学生の質の低下、ひいては不法就労、不法滞在につながるケースも増えています。
日本語学校の質の低下の歯止め、健全な育成を図るため、法務省は設置基準を厳しくします。

  • 日本語習得を目指す留学生を受け入れる日本語学校が増えている。
  • 今春には600校を超え、私立大学並みの校数となった。
  • 東京・銀座など知名度の高い場所に立地したり、有名大学受験を目指したりと多様化。
  • 地方では地域活性化を狙って自治体が誘致する動きもある。
  • 半面、就労目的とされる事例も増え、在留資格の審査は厳格化している。
  • 日本語学校は法務省の基準を満たすなどすれば開校でき、最近は不動産会社や人材派遣会社の参入も目立つ。
  • 2016年度の生徒数は15年度比21%増の6万8165人と、留学生全体の約3割を占め、大学在籍の留学生数に迫る。
  • 東京芝浦外語学院(東京・港)は4月、「銀座ワールドアカデミー」を開いた。
    銀座に近く校舎ビル購入に約5億円かかったが、日本の中心で学べる特別感を売り物にする。
  • 内装設計会社が始めた日本国際文化教育学院東京校(東京・台東)は浅草寺の裏手に約3億円で購入したビルを利用。
    外国人に知名度の高い立地で留学生を集める。
  • 東京JLA外国語学校早稲田校(東京・新宿)は早稲田大学進学を目指し、学生寮を設けて受験指導もする。
    専門学校に進学する日本語学校留学生が多いなか、有名大学を目指す。
  • 石川県加賀市は4月、旧市民病院に日本語学校を誘致した。
    若者を増やして地域の活性化を図る狙い。
    初年度はインドネシアとベトナムの留学生が入学し、将来は市内就職など定着を期待する。
  • 東京都奥多摩町は廃校に人材会社を誘致、日本語学校を10月に開いてもらう。
    フィリピンやベトナムなどの留学生が、授業後はIT(情報技術)の仕事も手掛ける計画。
    町は住民と留学生の交流を促し、観光振興にもつなげたい考えだ。
  • 今後の海外展開に備えようと、静岡市の健康食品会社、AFC―HDアムスライフサイエンスは同市内に、19年4月開校を目指した日本語学校をつくる。
    主に東南アジア出身の生徒を募集、自社の海外展開を担う人材を育成する。
  • ただ、就労を巡ったトラブルが増加。
  • 福岡県などでは昨年、日本語学校の運営者らが留学生にアルバイト先を紹介し、法定時間を超える不法就労をさせたとして、出入国管理法違反容疑で摘発されている。
  • 全国日本語学校連合会(東京・千代田)の荒木幹光理事長は、「親日家をつくるのが目的なのに、留学生の日本へのイメージが悪化しかねない」と懸念する。
  • すでに、留学生の在留資格審査は厳しくなっている。
  • 東京入国管理局が今春の留学生申請に対し在留資格を認めた交付率は82%と、前年同期の91%から大きく低下し、入学予定者が来日できない事例が続出している。
  • 法務省は8月から新設校の審査基準も厳しくする。

日経新聞 2017年6月11日

平成27年における留学生の日本企業等への就職状況

法務省入国管理局は、10月28日、「留学」の在留資格を有する外国人(留学生)が行った就職状況を発表しました。

  • 在留資格変更許可申請
    • 平成27年は、17,088人,うち許可数は15,657人
    • 平成26年は、14,170人,うち許可数は12,958人
    • 前年比で、2,918人(20.6%)、及び2,699人(20.8%)増加
  • 国籍・地域別許可数の上位5か国
    • (1)中国9,847人,
    • (2)韓国1,288人,
    • (3)ベトナム1,153人,
    • (4)台湾649人,
    • (5)ネパール503人,
    • アジア諸国が全体の94.9%
  • 在留資格別許可数の内訳
    • 「技術・人文知識・国際業務」が13,791人
    • この在留資格で全体の88.1%を占めています。
  • 就職先の業種
    • 非製造業が、12,580人(80.3%)
    • 製造業が、3,077人(19.7%)
  • 就職先の職務内容の主なもの
    • 「販売・営業」(3,809人),
    • 「翻訳・通訳」(3,747人),
    • 「技術開発(情報処理分野)」(1,218人),
    • 「経営・管理業務」(1,180人)
  • 留学生の最終学歴
    • 大学卒が、7,383人,
    • 大学院卒が、4,931人で,
    • 両者で、全体の78.6%

留学生の数

日経新聞の4月1日付に以下の情報がありました。

2015年5月時点の外国人留学生数

  • 全体   15万2062人、前年比9.3%増加
  • 出身国・地域別
    • 中国   7万4921人
    • ベトナム 2万131人
    • 韓国   1万3397人

海外の大学などに留学した日本人

  • 2013年 5万5350人(集計方法を変更)
  • 2012年 6万 138人
  • 2011年 5万7501人
  • 2004年 8万2945人
  • 2013年の内訳
    • 米国 1万9334人
    • 中国 1万7226人
    • 台湾   5798人

(2016年 4月 1日 日経新聞)