司法書士の債務整理は借金140万円まで 、最高裁が初判断

2002年の司法書士法改正で、司法書士は弁護士が独占してきた債務整理の代理業務に進出した。

司法書士による和解は03~14年で約400万件を超え、多くは債務整理とみられている。

過払い金の対応などの債務整理で、いくらまでなら司法書士が弁護士の代わりに引き受けられるかが争われた訴訟の上告審判決が出た。

最高裁第1小法廷(大谷直人裁判長)は27日、「借金の額が140万円を超える場合、司法書士は代理できない」との初判断を示した。

  • 弁護士側の主張を認め、司法書士の業務範囲の厳格な運用を求める判決が確定した。
  • 司法書士法は司法書士が訴訟代理人を務めることができるのは、請求額140万円以下の簡裁訴訟に限ると規定している。
    • ただ、裁判外の債務整理については、日本司法書士会連合会(日司連)が「弁済計画の変更などで依頼者が受ける利益が140万円以下であれば担当できる」と広く解釈して、実務を進めてきた。
    • 例えば、500万円の債務が整理によって400万円まで減る場合は、「利益」が140万円を下回るので受任できるとの立場だ。
    • これに対して、日本弁護士連合会(日弁連)は「あくまでも受任範囲は債務の額で決まる」と主張していた。
  • 判決は「裁判外の和解が成立した時点で初めて分かるような利益の額を基準とすべきではない」と日司連が解釈する受任の範囲を否定。日弁連側の主張に沿った判断を示した。

司法書士の業務拡大に日弁連が反発して、多重債務者をめぐる「士業団体」の対立が続いていた。

(2016年6月28日 日経新聞より)

法律系の”士業”

様々な○○士という資格があります。法律系の資格には、弁護士、司法書士、行政書士、社会保険労務士などがあります。それぞれの役割、仕事の範囲は分っているようでいて、なかなか分りにくいものです。

今回はざっくりとその違いに触れます。ただ、どこの世界でも微妙な業際問題はあり、簡単に説明することはきわめて難しいと言えます。以下の内容は参考程度にお読みください。

弁護士が、法律系の資格として代表格なのはご承知の通りです。法廷での被告の弁護が典型的な、弁護士しか出来ない独占業務ですが、その他の法律事件全般を扱います。特には訴訟性を帯びた事件で大きな力を発揮します。

司法書士の大きな業務は登記と裁判書類の作成です。登記には商業登記と不動産登記があります。商業登記では会社設立、運営方法の重要な変更などの各種登記情報を当事者に代理して法務局に手続きをします。不動産登記はご承知のように土地、家屋の売買時にお願いしている業務になります。また、認定司法書士は簡易裁判所の一部の事件で弁護士と同等のことが出来るようになりました。

行政書士は、官公署に提出する書類、その他権利・義務又は事実証明に関する書類の作成、及び代理を行ないます。ただし、他の法律(弁護士法、司法書士法等)において制限されている業務を除きます。明治まで遡ると行政書士と司法書士の根は同じで、代書人という職業になります。一方、弁護士は代言人と呼ばれました。

社会保険労務士は行政機関(主に労働基準監督署、公共職業安定所、社会保険事務所)に提出する社会保険と労務管理に関する申請書、届出書、報告書、審査請求書、異議申立書、その他の書類の作成、提出代理を行います。社会保険労務士は昭和43年に行政書士から分離独立した資格です。現在、行政書士は官公署に提出する書類であっても、社労士の独占業務になっているものを扱うことは出来ません。

司法書士と社会保険労務士は比較的業務範囲が明確です。それに対して行政書士はそれ以外の業務という定義で広いものの、逆に漠としている面があります。また相互に業務範囲の重複があると同時に、それぞれ業務範囲を広げようと各”士業”間で縄張り争いをしている面があります。その点、弁護士はオールマイティ的にほとんどの法的業務をこなせます。

別の観点から大胆に分類すると、弁護士以外の各”士業”が紛争を予防する観点から業務を行うのに対して、弁護士は紛争になってからが本領発揮ということが出来ます。従って、弁護士は紛争を難しくして、裁判に持ち込み自分の仕事を増やす嫌いがあると言われています。注意が必要です。

社会の複雑さ、行政機能の拡大に伴い、多くの法律が出来、結果として様々な書類を作成する必要が出てきました。行政、司法としては、毎回毎回、素人である一般市民に複雑な書類の書き方を教えるのは面倒なので、”士業”という専門職を設置して、その人たちに任せるような仕組みを作ったと言うことが出来ます。

各”士業”が行うことは基本的に本人の代理行為です。ほとんどのことは本人・当事者で処理することが可能です。何も高いお金を払って”士業”に依頼する必要は必ずしもありません。”士業”に依頼するというのは時間と専門知識をお金で買っているようなもので、時間のある人は自分で本を読むなりすれば行えることがかなりあります。企業では個人と比較してスピードが要求されますなので”士業”への依頼も必要と言えますが、個人の場合は自分でトライしてみる価値のあることも多々あります。

もし、”士業”に依頼する場合は、事前に報酬水準を知っておくことをお勧めします。検索サイトで、依頼内容、あるいは「○○士 報酬」で検索すれば、簡単に報酬水準を知ることが出来ます。各”士業”とも独占禁止法により標準報酬テーブルが廃止されています。とは言え、報酬水準というものはあります。見積もりをもらった場合は一般水準と比較して安ければ安い、高ければ高い理由を事前に聞くのが良いと思います。良心的な人はその正当な理由を言うはずです。また、各”士業”の地元の○○士会に連絡すれば、具体的な事務所を紹介してもらえます。その方法が一番安心と言えます。

(2008年6月22日)