著作権 その2

今回は、前回の著作権の続きで、知っておいた方が良いと思われる事項です。

– 複製とは、「既存の著作物に依拠し、その内容及び形式を覚知させるに足りるものを再製すること」なので、たまたま似たようなものを作成した場合は複製権の侵害にはなりません。ただあまりにも酷似している場合は、知らなかったという主張は通りにくくなります。

– 時々、個人のWebサイトなどに他の人の文章をそのまま掲載しているケースが見受けられます。これは明らかに著作権侵害で、何人が見たかは関係なく、サーバーに他人の著作物をアップロード(コピー)した段階で(見れるようにしたという意味で)著作権の内の公衆送信権の侵害になります。ただ、リンクを張ることは存在箇所を示しているだけでなり、基本的に著作権の問題は発生しません。

– 催し物などで音楽を流したり、演奏したりすることがありますが、非営利、無料、無報酬の3拍子揃って、初めて著作権者の許諾が不要になります。一つでも欠けると著作権者の許諾が必要になります。現実的には、著作権の管理を受託しているJASRAC等の許諾を得る必要があります。

– 「禁無断引用、禁無断転載」等の表記を見ることがあります。そのような表記がなくとも、転載は一部の丸写しになるので出来ませんが、引用は禁止と書かれていても正当な範囲であれば可能です。但し、カギ括弧などで明確にするなどの条件があります。

– 書籍やWebサイトでマルCマークを見ます。これは、過去米国で、著作権が登録主義であった時代があり、その名残りです。現在は日本は元より米国でも不要です。もちろん付けて害はなく、付いている方が格好良いかなという程度です。

– 著作権はベルヌ条約をはじめとした条約でほとんどの国で著作権を相互に保護しています。日本の著作物はアメリカで、ほぼ同等のアメリカの著作権法で保護されていることになります。逆も真なりで、海外の著作物を日本で権利侵害すると日本の著作権法に抵触します。

– 著作権を譲り受ける際の契約書には基本的に以下の条項をいれることになっています。
「甲は乙に対し、本著作物に関する全ての著作権(著作権法第27条、第28条に規定する権利を含む)を譲渡する。」
もし、括弧( )内の27条、28条の記載がないと、譲渡を受けた側で二次的著作物が作れなくなってしまうので注意が必要です。また著作者人格権は譲渡不能なので、「甲は著作者人格権を行使しないものとする。」という表現も盛り込む方が無難です。但し、譲渡すると”公表に同意したものと推定する”という条項がありますので、著作者人格権の内、公表権に関しては表現がなくても行使されないことになっています。逆に言えば、記載しないと著作者人格権の内、氏名表示権と同一性保持権を主張される可能性があります。

– 著作権には登録制度があります。ただこれは権利の登録ではありません。権利は表現時に発生しています。第一発行年月日や(ペンネームで発表された著作物の)実名登録、権利譲渡の登録等に利用されます。余談ですが、絵を売る際に、著作権登録して、『著作権登録済み』と記載すると少し高く売れるようです。

(2008年12月30日)

著作権

インターネット、電子機器の普及等によって著作権が身近なものになりました。誰でもが著作者になり、誰でもが著作権侵害者になる時代になったと言えます。

そこで今回は著作権の話です。

時代の変化が激しく、著作権は毎年のように改正されています。しかし、なかなか時代に追随できていないのが現状です。まず著作権の定義ですが、条文には、

思想、感情を創作的に表現し、文芸、学術、美術、音楽の範囲に属するもの

とあります。但し、実務的には条件、範囲はかなり広く、ゆるく考えられています。例えば、子供の絵でもスナップ写真でも基本的には著作権があると考えられています。
次に、表現形態としては、

言語、音楽、舞踊・無言劇、美術、建築、地図・図形、映画、写真、プログラムなど

となっており、これまた例示列挙でかなり範囲が広いです。更に、権利の登録は必要なく、表現した時に権利が発生します。よって、子供が描いた絵でも、出来上がった時点で立派な著作物になるわけです。

著作権は、狭義の著作権と著作隣接権に大別されますが、レコード製作者などの著作隣接権はかなり複雑なので、今回は触れません。中心となる著作権は更に以下のように著作者人格権と著作権(財産権)に分かれます。

著作者人格権
公表権、氏名表示権、同一性保持権
著作権(財産権)
複製権、上演権・演奏権、上映権、口述権、展示権、公衆送信権等、
頒布権、譲渡権、貸与権、翻訳権・翻案権等、二次的著作物利用権

両者の大きな違いは、財産権である著作権は譲渡できますが、著作者人格権は一身専属の権利で譲渡できない、譲渡されないという点です。

著作者人格権の公表権とは公表するかどうかを決定できる権利、氏名表示権は公表する時に氏名を表示するかどうか決定できる権利、同一性保持権は自らの意に反して改変されない権利です。それら著作者人格権は死亡するまで著作者が持ち続ける権利です。著作権(財産権)には複製権に始まって11の権利があります。それらを一括でも個別でも譲渡することが可能です。

なお、著作権の期間は基本的に著作者の死後50年間です。著作者の孫の代まで位がその著作権の恩恵を受けられれば、後は社会的財産にしても良いであろうということが趣旨のようです。

以下、著作権に関して、知っておいた方が良いと思われることです。

  • 著作者は自然人が原則です。しかし、以下の5つの条件を全て満たすと法人が著作者になります。
    • 1)法人の発意で
    • 2)業務従事者が
    • 3)職務上創作し
    • 4)法人名義で公表し
    • 5)就業規則等に特段の定めがない(普通はありません)

この場合、創作に携わった従業員には何の権利もありません。コンピュータプログラム、営業パンフレットなど日常の会社業務で作成されるものは全て該当すると言えます。それに対して、特許は職務上の発明であっても基本的に個人が権利者です。会社に権利譲渡する場合は相当の対価が必要になります。つまり、職務発明でも特許の場合は個人に権利がありますが、著作権の場合は原則的に会社に権利があります。

  • 著作権は作成者にあります。例えば、プログラム開発を有償で委託し、完成したプログラムが納品されたとしても、著作権までは納品されていません。お金を払った側に著作権はありません。著作権は実際にプログラムを書いた受託企業にあります。ということは、受託してプログラムを開発した企業は、特約がない限り、他システムにそのプログラムを利用しても構わないことになります。

◇◇◇◇◇◇◇◇ 量が多くなりました。⇒ 次号に続きます。

(2008年12月 1日)