会社設立後の各種届出

株式会社を設立すると官公署への届出が必要になります。
株式会社にすることにより、信頼度のアップ、税金上のメリット等がある反面、それに対応した義務があります。
届出等の事務処理面での負荷も考慮に入れて株式会社設立をする必要があります。以下のような様々な届出がありますが、当事務所ではご要望に応じて他士業の先生方との連携により、各種届出等のサポートを行います。

株式会社設立後の各種届出は、大きく分けると税金関係と保険関係があり、内訳は以下のようになります。

税金

国税

会社の設立が済んだらすぐに、会社の所在地を管轄する税務署に以下の書類を提出します。

  • 法人設立届出書:会社設立から2か月以内
  • 青色申告の承認申請書:会社設立後3か月と第1期事業年度終了日の早い方の日の前日まで
  • 給与支払事務所等の開設届出書:事務所開設から1か月以内
  • 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
    兼 納期の特例適用者に係る納期限の特例に関する届出書
  • 設立時の簡単な貸借対照表(現物出資があるとき)
  • 株主名簿(現物出資があるとき)
  • 現物出資者名簿(現物出資があるとき)
  • 会社の履歴事項全部証明書のオリジナル
  • 会社定款のコピー
    1~4番目までの提出控も持参します。

以下の届出書2点は、必要があれば、事業年度の確定申告書の提出期限までに提出します。

  • 棚卸資産の評価方法の届出書
  • 減価償却資産の償却方法の届出書

その後、税務署からは、所得税の納付書が送られてきます。
そして、

  • 1月分から6月分の源泉徴収額は 7月10日までに
  • 7月分から12月分の源泉徴収額は1月10日までに

納付する必要があります。
ただ、提出翌月分から有効なので、届け出た月の分のみは、翌月の10日までに納付する必要があります。税務署に納付書がありますので、それに自ら計算、記入して納付します。

地方税

東京23区

次に、東京23区内の場合は、会社の所在地を管轄する都税事務所に以下の書類を提出します。事業開始の日から15日以内に提出することになっています。

  • 法人設立届出書(提出控も持参)
  • 会社の履歴事項全部証明書のコピー
  • 会社の定款のコピー

東京23区以外及び東京以外

東京23区以外及び東京以外は、都道府県税事務所と市区町村役場の2カ所に届出をする必要があります。法人事業税、法人住民税などは、事業年度終了から2か月以内に納付します。事業年度が終了しますと通知が来ますので、それまでは特に何もすることはありません。

社会保険

健康保険・厚生年金保険

社会保険は、健康保険と厚生年金保険の2つの保険の総称です。可能な範囲で事務の簡略化がされており、一緒に手続きができるようになっています。法人を設立するとその時点で社会保険適用事業所となります。選択はありません。選択の余地なく、自動的に、当然に、法律的に成立してしまいます。以下の届け出は成立させるための届出ではなく、成立したことを届け出ていることになります。

社会保険に関して言えば、社会保険に加入している会社と加入していない会社があるのではなく、健康保険法と厚生年金保険法を順守している会社と法律違反を犯している会社があるということになります。代表取締役1人の会社であっても適用されますので以下の届け出は必要です。

会社設立から5日以内に、会社の住所地を管轄する年金事務所に以下の書類を提出します。5日以内というのは結構短いです。やっと会社の登記が終了したと思ったら、間髪を入れずすぐに社会保険の手続きを行う必要があります。5日というのは絶対ではなく、少し遅れても許してくれるようですが、あまりに遅いと法律違反ですので罰則を受けることになります。

  • 健康保険・厚生年金保険新規適用届
  • 健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届
  • 健康保険被扶養者(異動)届
    被保険者に被扶養者がいるとき
  • 70歳以上被用者該当届
    被保険者が70歳以上のとき
  • 会社の履歴事項全部証明書
    その場でコピーしてオリジナルは返却してくれます。

健康保険、厚生年金保険いずれも、届け出をした月の翌月24日ごろに届け出月の分の納付通知書が送られてきます。それをその月の末までに納付します。以後、毎月末までに、前月分を納付します。例えば、4月分の保険料は翌月の5月25日の給料日に本人から控除し、5月末に保険者に納付することになります。

健康保険の被保険者証は、届け出後10日ほどで、健康保険協会から送られてきます。被保険者証が着いてから、それまでの国民健康保険等の資格喪失の手続きをします。なお、厚生年金保険の処理は自動で行われます。

社会保険適用届の手続きは、代表取締役1人であっても被保険者となりますので必ず必要な手続きになります。但し、様々な適用除外者もいるので確認が必要です。

本来は、会社成立後5日以内の届出ですが、会社設立時にここまで頭が回らず、少し遅れて手続きをすることがあります。資格取得日を5日より前に遡ることもできますが、その場合はその労働実態を証明するため、労働者名簿又は賃金台帳といった、働いていたことを証明するものが必要になります。

労働保険

社会保険が設立登記と同時に、当然に適用されるのに対し、労働保険は労働者を雇用した時点で、やはり当然に、自動的に、強制的に適用事業となります。法人の場合は、社会保険と同様に、加入するしないではなく、成立してしまっているので事後的に届け出を行うという意味合いになります。まず、労働基準監督署に成立届と概算保険料申告書を提出します。こちらは労働者を雇用してから10日以内なので、社会保険より若干余裕があるとはいうものの、のんびりとはしていられません。

労働保険は基本的に労働者のための保険ですので、代表取締役1名の会社であればまだ成立していないので、特に届け出は必要ありません。会社には代表取締役という事業主と労働者がいます。代表権のない取締役は微妙です。実態に合わせて判断されます。

労働者災害補償(労災)保険

労災保険は業務上の事由、又は通勤による労働者の負傷、疾病などに対する保険給付を行うことが主な目的です。基本的に労働者を1人でも使用する事業は適用事業とされます。パート、アルバイトだけであっても労働者になりますので労災保険料を支払う必要があります。保険料は全額事業主が負担します。相対的に事故の多い業種では保険率が高いですが、一般の事務系の業種では給与総額の1,000分の3などとそれほど高くはありません。

万が一、業務上、通勤上で事故があった場合、通常の健康保険より手厚い保障を受けられますので従業員のため必ず保険料を支払うことが必要です。事由が発生した時点で適用事業になっていますので、届け出と保険料支払いは義務になります。
以下の書類を労働基準監督署に提出します。

  • 労働保険保険関係成立届
    労働者を1人でも採用した日(保険関係成立日)から10日以内
  • 労働保険概算保険料申告書
    保険関係成立日から50日以内
  • 会社の登記簿謄本(履歴事項全部証明書)
    返却してもらえます。

手続きが済むと、その場で上記書類の2点の控えと保険料納付用紙を渡されます。その納付用紙を持って、銀行、あるいは郵便局で払い込みを行います。

雇用保険

雇用保険は労働者が失業した場合に失業等給付等を行うこと等を主目的とします。
労働者も保険料を支払うので対象労働者の範囲は労災保険と比べると狭いです。つまり、労災保険の対象者であっても雇用保険の被保険者にならない人がいます。例えば週労働時間が20時間未満の短時間労働者は労災保険の対象者ではありますが、雇用保険の被保険者にはなりません。法人の代表取締役は被保険者になれませんが、取締役は被保険者になる場合があります。

保険料には事業主全額負担分と事業主・労働者折半負担分の2種類あります。一般業種であれば、平成24年度で、被保険者の給与に対して、使用者側1,000分の8.5、労働者側1,000分の5です。雇用保険も労働保険と同様に事由が発生した時点で当然に適用事業となりますので、届け出と保険料支払は義務になります。
以下の書類を公共職業安定所(ハローワーク)に提出します。

  • 雇用保険適用事業所設置届
    (労基署で返却された労働保険関係成立届の控えを添付)
    雇用保険加入義務のある労働者を雇った日の翌日から10日以内
  • 雇用保険被保険者資格取得届
    (事実(採用など)があった日の翌月10日まで)