会社の税金

役員の報酬、賞与、給与

会社法、企業会計

会社法や企業会計では、原則として役員報酬と役員賞与を同一のように取扱います。会社法では、役員賞与について、報酬と同様「職務執行の対価として会社から受ける財産上の利益」としています。これを受けて、企業会計上も報酬・賞与ともに費用処理で統一されています。

法人税法

法人税法上では、「役員報酬」と「役員賞与」をまとめて「役員給与」としています。そして、役員報酬とか役員賞与と呼ぶ以下の役員給与は、不相当に高額でなければ損金算入されます。

  • 定期同額給与(月次報酬)
  • 事前確定届出給与(固定賞与)
  • 利益連動給与(利益連動賞与)
    国税庁の参照ページ

役員報酬、役員賞与は株主総会で決めます。

なお、受け取る側から見た場合、
「給与所得とは、使用人や役員に支払う俸給や給料、賃金、歳費、賞与のほか、これらの性質を有するものをいう。」
とありますので、一般社員でも役員でも、会社から支給されるものは、所得税法上で給与所得になります。

繰越欠損金

企業がある事業年度に赤字(欠損金)を出した場合、その額を次の年度以降に繰り越して黒字(課税所得)から差し引くことができます。この欠損金を繰越欠損金と呼びます。繰り越せる期間は9年で、毎年度の黒字額の最大8割まで差し引くことが可能です。

具体例

たとえば2012年3月期まで繰越欠損金がなかった企業が2013年3月期に30億円の赤字を出したとすると、繰り越す欠損金は30億円になります。2014年3月期が10億円の黒字だった場合は8割にあたる8億円を差し引き、残った2億円に法人税がかかります。そして、繰越欠損金は22億円に減ります。2015年3月期以降もこうした差し引きを続けます。企業決算の黒字が続けば繰越欠損金は減りますが、再び赤字になれば増えます。

繰越決算金は76兆円

国税庁によると、日本企業が2011年度に翌年度に繰り越した欠損金の額は76兆円で、単年度の黒字額43.6兆円(11年度)の1.7倍です。黒字額の約2割にあたる9.7兆円が繰越欠損金控除として差し引かれ、実際に課税対象となった所得は33.9兆円です。そして、法人税収は9.4兆円でした。繰越欠損金がたくさん残っていると、企業が大きな利益をあげても、課税所得から差し引く欠損金の金額も大きくなるので、実際に企業がはらう税金は少なくなります。日本全体でみても法人税収が増えにくくなります。

法人税率と繰越決算金

繰越決算金の制度は、法人税率(国税分)が30%から25.5%に引き下げられた2013年3月期決算のときに見直されました。それまで企業は繰り越した赤字で黒字すべてを相殺できましたが、黒字の8割までしか赤字を差し引けなくなりました。繰越決算金制度を更に厳しくする案が検討されていますが、国際的にみると日本の制度は企業に厳しいといえます。たとえば、英国では繰越期間は無制限で、黒字から赤字を差し引く割合にも上限がありません。

企業の事業活動にかかる地方税

企業の事業活動にかかる地方税には、法人住民税と法人事業税があります。
法人住民税は主に市町村の財源で、法人事業税は都道府県の財源です。
法人住民税は、企業の所得に影響されやすいため、都市部と農村部の間の格差が生まれやすくなっています。

法人住民税

主には市町村の財源で、2011年度は、
都道府県分  7,855億円
市町村分  2兆107億円

均等割と法人税割があり、法人税割が均等割の約4倍の金額です。
均等割:資本金の額や従業員数に応じて税率が決まります。
法人税割:法人税(国税)の額に比例します。

法人事業税

都道府県税

現在、暫定措置として、法人事業税(都道府県税)の一部を地方法人特別税(国税)として振り替え、国が、東京都や愛知県の税金を譲与税として農村や漁村の多い県に再配分しています。

節税

合法的に節税することは企業経営の一大テーマです。経費として認められる範囲で積極的に経費を使い、企業規模を拡大することは企業のあるべき姿でもあり、経済を活性化することにもつながります。以下に勘定科目ごとに節税ポイントを示します。

  • 給与
    家族などを従業員として雇う。年間300万円程度まで。
    子どもにアルバイト料を払う。年間20~40万円程度まで。
  • 役員報酬
    家族などを非常勤役員とする。
  • 福利厚生費
    年に数回のコンサート、遊園地、レジャーなどの費用
    スポーツクラブの会費
    社員の50%以上が参加する4泊5日以内の慰安旅行費用
    社員全員が利用できるクルーザ、高級車、キャンピングカーなどの費用
    借上社宅費用
  • 接待交際費
    資本金1億円以上の企業は接待交際費の計上は出来ませんが、それ未満の中小企業であれば、90%、600万円まで非課税です。1人5千円までで特に回数制限はありません。二次会、クラブ、バーなどでも構いません。
  • 会議費
    1人数千円までで、アルコールはビール1~2本、ワイン数杯程度まで。会議にふさわしい場所で、飲み屋は不可。会議記録が必要です。昼食会議は週1~2回であればOK。
  • 旅費交通費
    業務に関連する視察旅行であればOK。
  • 研修費
    研修旅行費用、語学学校授業料など

参考情報

大企業、減少止まらず 資本金抑え節税意識か

以下、国税庁の最新統計によります。

  • 総法人数は3年連続増加、大企業は3年連続で減少
    大企業が資本金を減らし中小企業向けの税制優遇を受けるケースが目立っている。

2014年度の資本金1億円超の大企業、

  • 2万1336社
  • 前年度から580社減
  • 2011年度比3044社減
  • 年1000社ペースで減少

法人税法では、

  • 資本金1億円超の企業が「大企業」
  • 資本金1億円以下の企業が「中小企業」

中小企業は、

  • 年間所得が800万円以下なら法人税率が15%で、20%超の大企業と比べて負担が軽い。
  • 中小企業なら、赤字でも支払う義務がある外形標準課税の対象から外れる。
  • 資本金が1億円を超すと税制優遇を受けられなくなる。

各国の法人税と企業規模の関係

  • フランスでは売上高を基準に中小企業を定義。
  • 米国では利益水準が高い企業ほど、税率が高くなる仕組みを採用。
  • ドイツの場合、企業規模にかかわらず単一の税率をかけている。

日経新聞2016年3月22日

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