相続分の譲渡は贈与として特別受益

相続分の譲渡は贈与であるとし、特別受益とみなし、遺留分減殺請求ができるという判決がありました。
以下は、分かりやすく簡略化してあります。

  • 父A、母B、子X、子Yとします。
  • 父Aが亡くなったとき、相続財産が1000万円あり、母Bは自己の法定相続分である1/2の500万円を子Xに譲渡しました。
  • 更に、母Bが亡くなったとき、相続財産がなかったので相続財産の分割は行われませんでした。
  • このとき、母Bが父Aの相続時に子Xに譲渡した相続分500万円を贈与とみなし、その遺留分として1/4の125万円を、子Yは子Xに対し請求できるということになります。
  • 子Xは、500万円は父Aから直接相続したものであって、母Bから具体的財産を贈与されたものではない、と主張しましたが、退けられました。

民法(相続関係)改正法の施行期日

民法(相続関係)改正法の施行期日は以下のとおりです。

(1) 自筆証書遺言の方式を緩和する方策
2019年1月13日
(2) 原則的な施行期日
2019年7月 1日
(3) 配偶者居住権及び配偶者短期居住権の新設等
2020年4月 1日

>法務省「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律の施行期日について」

>法務省「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律について(相続法の改正)」

遺産分割方法の優先順位

遺言がある場合

現在の民法では、遺言を遺すことが予定されています。従って、遺言があれば遺言が優先され、基本的には遺言どおりに遺産が分割されることになります。但し、遺留分などの一定の制約はあります。

遺言がない場合

遺言がない場合は、相続人で協議、合意し、遺産分割協議書を作成した後、そのとおりに分割します。どのように合意しても構わないのですが、利害がぶつかる可能性が高いです。そこで民法は詳細に法定分割を規定しており、それを基準に分割することになります。

遺言はあるが、異なる分割をしたい場合

遺言が遺されてはいるものの、異なった分割をしたい場合が時にあります。遺言は尊重されるべきですが、それとは異なった分割をすることは可能です。但し、当然ですが、相続人及び遺贈を受ける者など利害関係者全員の合意が必要です。財産相続を受ける誰からも異議申立てがされないことが前提です。被相続人は異を唱えたいでしょうが、「死人に口なし」ということなのでしょう。

2011年6月11日

相続欠格と廃除

相続欠格

一定の非行を行った相続人は当然に相続権を失います。
以下の5つの場合です。

  • 被相続人の遺言を偽造、変造、破棄、隠匿した
  • 詐欺や強迫により、被相続人に遺言させたり、前にした遺言の取消しや変更をさせた
  • 詐欺や強迫により、被相続人が遺言をすることや、前にした遺言の取消し、変更を妨害した
  • 被相続人が殺されたことをしりながら告発や告訴をしなかった
  • 被相続人や先順位又は同順位の相続人を殺したり、殺そうとして刑を受けた

廃除

推定相続人に、被相続人を虐待するなどのひどい非行がある場合、被相続人の意思により相続権を奪うことができます。
以下のようなケースです。

  • 被相続人に対する虐待
    常態的に罵声を浴びせたり、殴る、けるの暴行を加えた
    寝たきりの親を看護せず、食事も与えず衰弱させた
    など
  • 被相続人に対する重大な侮辱
    日頃から人目もはばからず親を無能呼ばわりした
    私的な秘密を公表し、名誉を傷つけた
    など
  • その他の著しい非行
    定職に就かず、繰り返し親に金を無心したり財産を盗んだりした
    夫と子を棄て、愛人と同居していた
    など

生前に廃除を行う場合には、被相続人が家庭裁判所に廃除請求を申し立てる。
死後で廃除を行う場合には、遺言で廃除の意思表示をし、遺言執行者が家庭裁判所に廃除請求を申し立てる

2011年6月 8日