法人設立の簡素化

従来から何回となく言われている法人設立の簡素化ですが、現在は以下のようなことが検討されています。

  • 2018年度からは公証人による定款の認証方法を現行の面談に加え、パソコンやスマホ経由を認める。
    それにより、起業を考える人が公証役場へ出向く時間や手間を減らす。
  • 2019年度にも、法人設立に伴う諸手続きをオンラインで一括申請できるようにする。
    現在は窓口となる行政機関それぞれで手続きをしなければならない。
    具体的には政府が17年秋に稼働させたオンラインサービス「マイナポータル」を活用する方向。
  • 法務局が登記の申請を受け付けてから登記が完了するまでの期間も短縮する。
    2020年度中にも法務局に登記処理を早めるための新システムを導入し、登記完了までの期間を現行の10日程度から最短で1日程度に圧縮する。
    英仏やカナダなどでは、すでに1日以内を実現している。
  • 代表者の印鑑の届け出制度も2020年度までに見直す。
    現在は法務局に届け出る必要があるが、任意制として義務を廃止する。
    印鑑を届け出ない場合、代わりに例えば電子証明書の届け出を求めるといった案が出ている。

会社登記、最短1日に

  • 政府は2018年度から株式会社の目的などを記す定款をスマートフォン(スマホ)で認証できるようにする。
  • スマホを使った認証手続きには、テレビ電話機能を使う。
  • 起業を希望する人は、テレビ電話で公証役場と連絡をとり、公証人と話す。
  • 公証人は映像で本人を確認し、書類をチェックして定款を認証する。
  • 本人確認のための運転免許証との照合や書類の確認などを映像でやりとりする。
  • いまは定款の認証には、公証役場に出向く必要があるが、手続きを簡便にして起業しやすくする狙い。
  • 2020年度からは、認証を終えた定款のデータを公証役場から法務局に直接送るシステムをつくる。
  • 定款を認証した後、すぐに登記の手続きに移れるようになる。
  • いまは定款を認証した後になる会社登記の申請も、定款認証の依頼と同時に受け付ける。
  • 認証と登記を同時並行して進めることで、登記完了まで24時間で済むようにする。
  • 2018年末までに必要な省令を改正する。

定款と登記の関係

定款の記載事項と登記事項の関係が少し分かりにくいです。

定款とは会社運営の基本事項、基本ルールです。会社にはある程度自治権があり、法令に違反しない範囲で、自ら運営ルールを作成することが出来ます。それが定款です。どのような事業を行うか、株式をどのくらい発行するか、取締役会を設置するか、などです。会社設立時に発起人が集まり、どのように会社を運営しようかと話し合います。そして定款を作成するわけです。ただ、行政としては勝手に法令違反の定款を作成し、勝手に法令違反の会社運営をされては困るという考えがあります。そこで、会社設立段階の定款が法令違反をしていないかどうか、公証役場という役所がチェックをする仕組みになっています。

ところで、定款に書かれていることの一部が登記事項になります。定款は30数条6~7ページになりますが、登記事項はそれ程多くはありません。会社設立申請時に法務局に「登記すべき事項」という書類を提出します。それが文字通り実際の登記事項になります。最近手がけた会社設立の書類では、具体的に以下のようになっています。
商号、本店、広告をする方法、目的、発行可能株式総数、発行済み株式の総数、
資本金の額、株式の譲渡制限に関する規定、役員に関する事項、監査役設定会社に関する事項
会社設立をするとすぐに「現在事項全部証明書」をとりますが、そこにはまさしく上記の項目が並んでいます。唯一追加されているのは、会社設立の年月日だけです。

会社設立後、会社が成長するにつれ、資本金の額が増えたり、取締役会を設けたりと会社の基本事項、基本ルールが変化します。それに伴い定款変更及び変更登記を行うことになります。定款に対する変更は基本的に株式総会の特別決議で決定し、変更します。その変更にはもはや公証役場は関与せず、会社内で責任をもって変更、管理していくことになります。定款に記載されている事項の方が登記事項より多いので、定款変更をしても変更登記をする場合としない場合があります。逆に、役員の改選のように定款変更は必要ないが変更登記が必要な事項があります。法令を順守し、決まった手続きに沿って、適切に定款を変更し、登記を変更することは会社運営の基本になります。

(2011年4月19日)

一人株式会社の設立

ご存知のように平成18年5月1日施行の会社法によって株式会社の設立が簡単になりました。一人で株式会社を設立し、代表取締役社長になることが出来ます。

今回は出来るだけ簡単に、一人で株式会社を設立し、代表取締役社長になる方法です。れっきとした株式会社です。

株式会社設立には、2つのステップが必要です。
定款を作成して公証人に認証してもらうステップと法務局に株式会社の設立登記を申請するステップです。

定款の作成

定款とは会社の定義、基本的なルールになります。そのルールが法律に則していることを公証役場の公証人に認証してもらうことが必要です。公証役場は市、区などを単位に全国に300箇所あり、公証人の多くは元裁判官、元検事などです。

定款のサンプルは書籍、Web等で入手できます。最もシンプルなオプションを選択して定款を作成します。株式会社では株主総会と取締役1名が最低限必要になります。以下、定款作成上のポイントです。

・会社名を決める必要がありますが、現在では大抵の名称が通ります。
・同じ会社名が同一市区町村にあるかどうかは問われなくなりました。
・会社の所在地は自宅にします。
・株式会社設立の発起人が必要ですが、自分ひとりで構いません。
・株主も自分ひとりです。
・資本金は1円でも構いませんが、例えば1万円で1株にします。
・株式は全て譲渡制限株式にして非公開会社にします。
・株券を紙で発行する必要はありません。
・株主総会は一応形式的に必要です。
・取締役を決める必要がありますが、自分一人で構いません。一人で代表取締役になれます。
また取締役任期は面倒なので最長の10年にします。
・取締役会を置く必要はありません。
・監査役も必要ありません。
・事業目的、具体的な業務内容を記載します。

公証役場で定款の認証

作成した定款を自分で公証役場に持って行き認証を受けます。印紙代4万円、公証人手数料5万円等で、合計9万円強です。ところが電子認証という制度があります。電子認証にすれば印紙代4万円を削減できます。ただ、個人がそれをするのは意味がありません。準備だけで4万円程度かかりますし、セットアップが結構面倒です。会社設立を代理で行っている事務所の多くは電子認証に対応しています。つまり9万円程度で定款作成から電子認証までしてくれるところがあれば、定款作成の手間が省けるので依頼する方が得と言うことができます。

法務局で設立登記申請

次が法務局への株式会社登記ですが、これも本人申請が原則です。以下のものを用意して申請します。
・登記申請書
・OCR用申請用紙
・定款
・印鑑証明書
株式会社設立の登録免許税は15万円です。
なお、会社の代表者印を作成する必要があります。1万円程度から作成できます。

結局、25万円程度で株式会社の代表取締役社長になることが出来ました。手間もそれほどのことはありません。誰でもとりあえずは社長になることが出来ます。社長になることは易しいです。難しいのは社長になってからです。

(2009年11月10日)