インターネット、電子機器の普及等によって著作権が身近なものになりました。誰でもが著作者になり、誰でもが著作権侵害者になる時代になったと言えます。
そこで今回は著作権の話です。
時代の変化が激しく、著作権は毎年のように改正されています。しかし、なかなか時代に追随できていないのが現状です。まず著作権の定義ですが、条文には、
思想、感情を創作的に表現し、文芸、学術、美術、音楽の範囲に属するもの
とあります。但し、実務的には条件、範囲はかなり広く、ゆるく考えられています。例えば、子供の絵でもスナップ写真でも基本的には著作権があると考えられています。
次に、表現形態としては、
言語、音楽、舞踊・無言劇、美術、建築、地図・図形、映画、写真、プログラムなど
となっており、これまた例示列挙でかなり範囲が広いです。更に、権利の登録は必要なく、表現した時に権利が発生します。よって、子供が描いた絵でも、出来上がった時点で立派な著作物になるわけです。
著作権は、狭義の著作権と著作隣接権に大別されますが、レコード製作者などの著作隣接権はかなり複雑なので、今回は触れません。中心となる著作権は更に以下のように著作者人格権と著作権(財産権)に分かれます。
著作者人格権
公表権、氏名表示権、同一性保持権
著作権(財産権)
複製権、上演権・演奏権、上映権、口述権、展示権、公衆送信権等、
頒布権、譲渡権、貸与権、翻訳権・翻案権等、二次的著作物利用権
両者の大きな違いは、財産権である著作権は譲渡できますが、著作者人格権は一身専属の権利で譲渡できない、譲渡されないという点です。
著作者人格権の公表権とは公表するかどうかを決定できる権利、氏名表示権は公表する時に氏名を表示するかどうか決定できる権利、同一性保持権は自らの意に反して改変されない権利です。それら著作者人格権は死亡するまで著作者が持ち続ける権利です。著作権(財産権)には複製権に始まって11の権利があります。それらを一括でも個別でも譲渡することが可能です。
なお、著作権の期間は基本的に著作者の死後50年間です。著作者の孫の代まで位がその著作権の恩恵を受けられれば、後は社会的財産にしても良いであろうということが趣旨のようです。
以下、著作権に関して、知っておいた方が良いと思われることです。
- 著作者は自然人が原則です。しかし、以下の5つの条件を全て満たすと法人が著作者になります。
- 1)法人の発意で
- 2)業務従事者が
- 3)職務上創作し
- 4)法人名義で公表し
- 5)就業規則等に特段の定めがない(普通はありません)
この場合、創作に携わった従業員には何の権利もありません。コンピュータプログラム、営業パンフレットなど日常の会社業務で作成されるものは全て該当すると言えます。それに対して、特許は職務上の発明であっても基本的に個人が権利者です。会社に権利譲渡する場合は相当の対価が必要になります。つまり、職務発明でも特許の場合は個人に権利がありますが、著作権の場合は原則的に会社に権利があります。
- 著作権は作成者にあります。例えば、プログラム開発を有償で委託し、完成したプログラムが納品されたとしても、著作権までは納品されていません。お金を払った側に著作権はありません。著作権は実際にプログラムを書いた受託企業にあります。ということは、受託してプログラムを開発した企業は、特約がない限り、他システムにそのプログラムを利用しても構わないことになります。
◇◇◇◇◇◇◇◇ 量が多くなりました。⇒ 次号に続きます。
(2008年12月 1日)