相続のルール大規模改正へ

民法の一部である相続法の改正作業が進んでいる。

高齢化や相続対象となる財産の蓄積が進んでいるにもかかわらず、相続法は1980年以来大きく改正していない。遺産分割を巡る争いが増えるなど相続を取り巻く環境は深刻化している。相続にまつわる不満や調停、審判などの紛争になる事案を元にして検討しており、紛争の解決・予防を狙っている。ただ遺産分割の仕方がより複雑になる可能性があり、相続紛争に拍車をかける恐れもある。

  • 配偶者の居住権の保護
    案)相続開始時に住んでい建物の使用を認める「長期居住権」を新設
    理由)子供がルール通りの遺産分割を主張して配偶者が住み慣れた家を売却せざるを得ないことがある。
  • 配偶者の貢献に応じた遺産分割の実現
    • 案)婚姻期間中の増加した財産は配偶者の法定相続割合を引き上げ、それ以外の財産は法定相続割合を引き下げる。
      理由)被相続人が再婚後数年で相続が発生した場合に、現在の法定相続割合は高すぎるのではないか。
    • 案)婚姻期間が20年以上の場合は、配偶者の法定相続割合を引き上げる
      理由)高齢化が進む中、残された配偶者の生活保障をするには現在の法定相続割合は低いのではないか。
  • 寄与分の見直し
    案)介護や療養看護に貢献した相続人に対する要件を緩和する。
    理由)親の介護や療養看護に一切関わらなかった兄弟姉妹が、均分相続を主張するのはバランスが悪くないか。
    理由)相続人の配偶者が貢献しても相続人ではないため寄与分にカウントしない。
  • 遺留分の見直し
    案)遺留分減殺請求事件を家庭裁判所で全面的に解決できるようにする。
    理由)相続紛争は家庭裁判所で解決するのが原則だが、遺留分が絡むと地裁に委ねざるを得ない場合が出てきて、紛争が長引く。
  • 遺言の見直し
    案)自筆証書遺言の方式を緩和する。
    理由)全文を自筆したり訂正したりする場合に、押印が必要など様式が厳格過ぎるのではないか。

具体案は夏くらいまでにはまとめ、一般からの意見を求めるパブリックコメントの手続きにかけることになる。政府案は早ければ来年初めまでに作成、来年の国会に提案することになる見通し。

可決しても施行は先で、早くて数年後

日経新聞2016年2月2日より