ダンスと風営法

許可を受けず、客にダンスをさせるクラブを営業したとして、風営法違反(無許可営業)の罪に問われた大阪市の元クラブ経営者、金光正年被告(51)の判決公判で、大阪地裁(斎藤正人裁判長)は25日、「風営法の規制対象には当たらない」として無罪(求刑懲役6月、罰金100万円)を言い渡しました。

以上、つい先日の新聞記事ですが、ダンスと風営法との組み合わせに、違和感を覚える人が多いのではないでしょうか。
ダンスと風営法の関係に関し、整理してみます。

風営法とは、「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」のことで、目的として、「善良の風俗と清浄な風俗環境を保持し、及び少年の健全な育成に障害を及ぼす行為を防止するため、風俗営業及び性風俗関連特殊営業等について、営業時間、営業区域等を制限し...」とあります。

風営法における風俗営業の用語の意味合いは広く、狭義の風俗営業と性風俗関連特殊営業に分かれます。巷で若い男性の言う「風俗」とは概ね後者を意味していますので、用語的には混乱します。風営法の言う狭義の風俗営業(一般に言う「風俗」ではありません。)には、以下の8種類あり、全て公安委員会の許可が必要です。

  • 接待飲食等営業
    • 1号営業
      キヤバレーその他設備を設けて客にダンスをさせ、かつ、客の接待をして客に飲食をさせる営業
    • 2号営業
      待合、料理店、カフエーその他設備を設けて客の接待をして客に遊興又は飲食をさせる営業(前号に該当する営業を除く。)
    • 3号営業
      ナイトクラブその他設備を設けて客にダンスをさせ、かつ、客に飲食をさせる営業(第一号に該当する営業を除く。)
    • 4号営業
      ダンスホールその他設備を設けて客にダンスをさせる営業
    • 5号営業 低照度飲食店
      喫茶店、バーその他設備を設けて客に飲食をさせる営業で、客席における照度を10ルクス以下として営むもの(1号~3号営業に該当する営業を徐く。)
    • 6号営業 区画席飲食店
      喫茶店、バーその他設備を設けて客に飲食させる営業で、他から見通すことが困難であり、かつ、その広さが5平方メートル以下である客席を設けて営むもの
  • 遊技場営業
    • 7号営業 マージャン店・パチンコ店等
    • 8号営業 ゲームセンター等

7号、8号は全く別な営業形態で、5号、6号が明るさとか広さを基準しています。それに対して、1号から4号は、ダンスがキーワードになっており、整理しますと以下のようになります。

  • 1号営業  【ダンス+接待+飲食】
  • 2号営業  【接待+遊興or飲食】
  • 3号営業  【ダンス+飲食】
  • 4号営業  【ダンス】

今回のポイントは、時代の流れによって、ダンスというものが変化してきたということにあります。戦後は、ダンスと言えば、店に女の子がいて、その女の子と客が身体を密着させてカップルで踊ることであり、その結果として、善良で清浄な風俗を乱したのかもしれません。しかし、現在のダンスは全く違って、一人、あるいはグループで激しく身体を動かすスポーツになり、小学校の体育にも取り入れられている時代です。ダンスという言葉の意味合いが全く違ってしまっているのに、風営法が追い付いていないというのが実情です。

この件に限らず、法律は時代に会わなくなる宿命がありますので、いずれは、誰かが言いださなければいけなかったことなのでしょう。前記の大阪地裁判決を受け、規制改革会議が最近出した提言では、上記の3号と4号を風営法の規制対象から外すよう求めています。

なお、もう1種類の「性風俗関連特殊営業」は、以下のようないわゆる「風俗」で、公安委員会への届出が必要です。

  • 店舗型性風俗特殊営業
    1号営業~6号営業
  • 無店舗型性風俗特殊営業
    1号営業~2号営業
  • 映像送信型性風俗特殊営業
  • 店舗型電話異性紹介営業
  • 無店舗型電話異性紹介営業

(2014年 5月14日)