もめる相続、負担は妻に

「もめる相続、負担は妻に」というタイトルの記事が10月30日の日経新聞に掲載されていました。

■相続の問題は妻の問題
夫の方が年齢が上の場合が多いこと、及び男性より女性の方が平均寿命が長いことを考えますと、当然ながら、夫が妻よりも先に亡くなるケースが多いと言えます。
平均余命でみると、女性の2人に1人が90歳近くまで、4人に1人が95歳まで生きるとのことです。
更に、妻が先に亡くなると夫はその後1.5年で亡くなるが、夫が先に亡くなると妻はその後15年生きるというデータもあります。
妻は夫の遺産相続を真剣に考える必要があります。

■相続でもめるケースが3つ挙げられています。

○1.子がいない夫婦の場合
子がいない夫婦の場合、妻が全てを相続できるかというとそうでもありません。子がいなくて妻が相続する場合、法定では以下のようになっています。

  • 夫の親がいる場合
    妻が2/3、夫の親が1/3相続
  • 夫の親がいなくて夫の兄弟がいる場合
    妻が3/4、夫の兄弟が1/4相続
  • 夫の親も夫の兄弟もいない場合
    妻が全て相続

夫の兄弟が亡くなってその子がいる場合は、代襲相続となり、甥や姪が相続します。
妻にすべてを相続させたい場合は、遺言を遺す必要があります。その場合、夫の兄弟には遺留分はありませんが、夫の親には法定相続分の1/2の遺留分がありますので注意が必要です。

○2.夫の親の介護をした場合
夫の親の介護をいくらしても、嫁には法定相続分がありません。夫の兄弟が物わかりが良く、遺産分割協議でその介護の寄与分を認めてくれれば良いですが、そのようなケースは多くはなく、泣き寝入りになってしまいます。仮に兄弟間であれば介護の寄与分は法律的には認められますが、それでも実際の裁判になると評価の度合いは少なく、限りなく法定相続に近い分け方になります。

ここでも、遺言を遺すことにより、介護の労をねぎらって嫁に財産を遺贈することができます。

○3.財産が家しかない場合
財産が家しかない場合で、妻が全てを相続できないときは非常に困ります。以下の方法になります。

  • 家、というより土地を実際に分筆します
  • 家を売却し、その売却金額を相続比率で分けます
  • 家を売却したと仮定して、他の相続人のその相続分相当額を現金で渡します。

しかし、土地が大きくないと分筆できませんし、家を売却したらすぐに住む家に困ってしまいます。現金で渡すにしても現金がなければ借金をするしかありません。
相続する財産が家しかない場合は、分割が非常に難しいので、特に遺言を遺す必要があります。

■遺言の数
2012年の遺言の数は、
公正証書遺言は約88,000件
自筆証書遺言の検認は約16,000件
で、共に、10年前と比べて約1.4倍。
日本の年間死亡者数は120万人なので、合計しても1%以下。
死亡者の伸びに比べて、遺言書の伸びは緩やか。

■婚外子問題
9月4日の最高裁判決により、婚外子の法定相続分が嫡出子の2分の1という民法の規定が覆されました。これにより、夫に婚外子がいる場合、その子の法定相続分は、法律婚の夫婦間の子と同じとなりました。婚外子側には朗報ですが、妻、嫡出子側には不利になります。相続に関わる夫の意思を、遺言にして遺す重要性が今まで以上に高まったと言えます。

2013年10月30日 日経新聞より