家裁での離婚審理が長期化

  • 2016年の離婚訴訟の一審の平均審理期間は12.3カ月で、2004年以降で最も長い。
  • 財産分与などを巡る夫婦間の対立が深まり、解決が難しい事件が増えている。
    離婚の争いが大半を占める「人事訴訟」が2016年1年間で全国の家裁に約1万件起こされた。
  • 離婚件数の減少を背景に、同訴訟の件数は12年から減りつつあるが、審理期間は2010年(10.4カ月)から6年連続で長くなっている。
  • 双方に代理人弁護士がつく割合も増えている。
  • 離婚に伴う養育費の支払いや子供との面会交流に関する審判や調停の件数は増えており、審理期間も長期化している。
  • 2016年は平均6.2カ月で、前年より0.2カ月長くなった。

(2017年7月22日 日経新聞)

親権、面会多く認めた方に

  • 日本では、子供が幼いと親権は同居している方の親に認められるケースが一般的で、子供と親権を持たない親との面会は合意が守られないことも多い。
  • 5年以上別居している夫婦が娘の親権を争った離婚訴訟の判決で、千葉家裁松戸支部は3月29日、妻のもとで暮らす小学生の娘を夫へ引き渡すよう命じた。
  • この夫婦は2009年ごろに関係が悪化し、10年に妻が無断で娘を連れて実家に戻った。夫と娘の面会は同年9月を最後に途絶えていた。
  • 夫は、隔週末や祝日など「年間100日程度」の面会を妻に認めることを提案。夫が仕事で不在の間は、同居する夫の両親が娘を世話するとした。これに対し、妻は夫に「月1日」の面会を認めたうえで、「慣れ親しんだ環境から娘を引き離すのは福祉に反する」と主張した。
  • 裁判官は夫側の提案を「整った環境で周到に娘を監護する計画と意欲がある」と評価し、妻の主張を退けた。
  • 面会を重視する側に子供との同居を認める司法判断は米国などでは珍しくないが、日本では極めて異例。妻は4月、判決を不服として東京高裁に控訴した。
  • 2014年に全国の家庭裁判所に申し立てられた面会をめぐる調停は約1万1千件で、10年前と比べて倍増した。離婚や面会をめぐる争いの増加が背景にある。
  • 日本は欧米各国と違って離婚後の「共同親権」を認めておらず、親権をめぐる夫婦の争いが激しくなりやすい。
  • 法廷で親権が争われた場合、裁判所の判断を左右するのは、子供の意思と養育する親の継続性。子供が幼い場合には、養育の環境を変えない「継続性」が特に重視される。
  • インターネットの法律相談などでは「親権者になりたければ、子供を手元に置いて相手と別居した方が有利」といった助言が目立つ。
  • 暴力などやむを得ない事情がないのに、子連れで無断で家を出たまま面会に応じない例については、一部の弁護士から「親権目的の子供の引き離し」との指摘もある。

(2016年5月13日 日経新聞)

離婚による年金分割

ここ数年、離婚数は落ち着いています。しかし、回りを見渡すとそれほど離婚が珍しいことではなくなってきたという事実もあります。離婚する際には、財産分与、慰謝料、子供の養育費などと並んで年金分割が重要です。数年前に一時この話題がブームになったことがありますが、案外と分割される金額が少ないせいか下火になってきた感があります。そうは言ってもいざという時には必要な知識です。もしかすると周辺にこのような情報を必要としている人がいるかもしれません。

今回は、離婚に伴う年金分割に関してです。

分割の対象となる年金

まず、離婚による分割の対象となる年金は厚生年金です。年金は2階建て、あるいは3階建てとよく言われますが、分割されるのは2階部分の厚生年金のみで、1階部分の基礎年金(国民年金)は分割されません。基礎年金は個人別に管理されていますので分割しようがありません。2階部分の厚生年金は妻の貢献があるにも関わらず、夫だけが受け取るような仕組みだったので、その不合理を是正しようというのが年金分割の趣旨です。

年金分割には2種類あります。平成19年4月と20年4月に、それぞれの法律が施行されました。

合意分割

まず、平成19年4月施行の合意分割(離婚分割特例)です。
平成19年4月1日以降の離婚から適用されるようになりました。仮に、受け取るべき老齢厚生年金額の多い方を夫、少ない方を妻とします。基本的な考え方は、夫の厚生年金額と妻の厚生年金額を合計した後、按分割合を決めて年金を分割することです。その按分割合は当事者間で合意するか、合意できない時は家庭裁判所で決めます。

合意分割の対象期間と割合

合計する厚生年金額の対象は婚姻期間のみです。両当事者共、独身期間の分はそれぞれのものなので合計、按分は行いません。また按分割合は、夫の分をA、妻の分をBとした時、妻の分はBから(A+B)/2までの範囲です。つまり妻から見ると、元々の自分の分を下限にして、上限は夫の分を合計した2分の1の範囲内です。妻の厚生年金分がなければ最大で夫の2分の1をもらえる可能性がありますが、当然に夫の2分の1をもらえるわけではありません。ポイントは①対象期間は婚姻期間のみであること、②最大で合計の2分の1であること、②按分割合は個別決定することです。

3号分割

次に、平成20年4月施行の3号分割です。
平成20年4月1日以降の離婚から適用されることになりました。同日以降の妻の第3号被保険者期間に対する夫の老齢厚生年金額は強制的に夫婦で折半することになりました。被用者/会社員(第2号被保険者)の被扶養者(第3号被保険者)であった期間は、夫名義の老齢厚生年金の2分の1を無条件で受給できることになりました。協議、合意は不要です。非常にシンプルな仕組みです。

期間対応で合意分割と3号分割を合計する

妻から見た場合で整理しますと、今後離婚をする場合、以下のようになります。
1)平成20年3月31日までの婚姻期間に関して
合意分割(離婚分割特例)により、按分割合を合意することで最大で婚姻期間の夫婦合計の老齢厚生年金額の2分の1までを受け取れる可能性があります。
2)平成20年4月1日以降の婚姻期間に関して
妻が第3号被保険者であった期間に対応する夫の老齢厚生年金はその2分の1を当然に受け取ることが出来ます。第3号被保険者でなかった期間は、1)の合意分割となります。

現実的な金額

冒頭に書きましたが、離婚分割により妻が受け取れる金額は思ったほど多くはありません。私の場合で言えば、基本的に専業主婦であった妻に分割する金額はおそらく年50万円程度(4万円強/月)だと思います。実は、老齢厚生年金の年金分割より、夫が死亡した場合に受け取れる遺族厚生年金の方が受給できる金額は多くなります。遺族厚生年金は夫が生きていれば受給したであろう老齢厚生年金の4分の3です。割合も多いですし、対象期間も婚姻期間のみではなく夫が厚生年金に加入していた全期間です。しかも死亡すればすぐに受給できます。離婚による年金分割はあくまで老齢年金の分割なので基本的には65歳にならないと受給できません。金額だけで考えるのであれば、迷うことなく離婚分割ではなく、遺族年金を選択(?)すべきです。

なお、年金には様々な例外、特例、経過措置等があり複雑です。上記の記述はあくまで基本的な考え方となります。詳細は別途調べるなどして、確認していただく必要があります。ご注意ください。

補足情報

比較的近くで失踪事件がありました。(意外と周辺で事件があるものです。)ギャンブルで多額の借金を残し、夫が妻と二人の子供を残して消えてしまいました。借金の取立てが来て困っているとのことでした。ところで民法は夫婦別産制を採用しています。日常家事債務に関しては連帯責任になっていますが、夫がギャンブル、あるいは妻が高価な宝飾品購入で作った借金に対してその配偶者には責任がありません。上記の妻の場合、夫の借金を返済する必要はありません。

(2010年 2月10日)