商業・法人登記

商業・法人登記とは

商業登記法において、登記すべき事項が決まっており、それらの事項に変更があった場合には法務局で登記事項の変更を行う必要があります。登記事項は誰でもが入手することができ、その目的は取引の安定に資するところにあると言われています。
ある会社と最初に取引をする場合は、その会社が信頼するに値する企業か知る必要があります。その最低限の項目を国が管理して、判断材料として提供しようということです。誰が代表で、どこが本社で、いつ設立され、どのような業務を行っているのか等を知ることが出来ます。

定款の記載事項と登記すべき事項の違いが少々分かりにくいです。両方で必要な事項、あるいは定款のみ、登記のみで必要な事項があります。ある程度は専門家のサポートが必要と言えます。

本店移転

本店という表現は少し違和感がありますが、本社と思えば間違いないです。本店住所は、定款の絶対記載事項でもあり、登記すべき事項でもあります。一般的には、定款では最小行政単位(東京都港区など)まで記載し、その区域内で移転する分には定款変更を不要としておきます。

登記上は詳細な住所が必要なので、移転したら変更登記が必要になります。会社所在地の管轄登記所内での移転か、管轄外登記所への移転かで手続きが大きく換わってきます。登録免許税も管轄内は3万円で済みますが、管轄外移転は移転先の登記所の分もあるので2倍の6万円です。

法務局への申請は、実際に移転した日と取締役会等で移転を決議した日のどちらか遅い日から2週間以内に行います。

管轄内移転手続き

  • 取締役が、移転先の具体的な所在・地番と移転の年月日を決定します。
  • 登記所で本店移転登記を行います。
    必要書類
    申請書
    取締役決定書
    登記すべき事項
    登録免許税 3万円

管轄外地域への移転手続き

  • 株主総会を開催して、定款の本店住所変更の決議を行います。
  • 本店住所の定款変更をします。
  • 取締役が、移転先の具体的な所在・地番と移転の年月日を決定します。
  • 現在の登記所で本店移転登記を行います。
    必要書類

    • 申請書(変更前登記所向け)
    • 登録免許税 3万円
    • 株主総会の議事録
    • 取締役会議事録(取締役決定書)
    • 申請書(変更後登記所向け)
    • 取得した登記事項証明書を合綴(不要になりました。)
    • 登記すべき事項
    • 印鑑届書
    • 登録免許税 3万円
  • 新しい登記所で登記事項証明書と印鑑カード、印鑑証明書を取得します。

支店の設置

会社が新たに支店を設置した場合には、設置をした日から本店の所在地においては2週間以内、支店の所在地においては3週間以内にその旨の変更の登記をしなければなりません。

支店を設置する場合には、取締役の過半数の一致または取締役会の決議(取締役会設置会社)によって設置する場所と時期を決定します。

支店を設置する場合は、支店を設置する場所が本店所在地を管轄する登記所の管轄区域内に設置するか、管轄区域外に設置するかによって、登記手続に違いがあります。

本店の管轄区域外に支店を設置する場合には、以下の事項が登記されます。

  • 商号
  • 本店の所在場所
  • 支店の所在場所(その支店所在地の管轄登記所の管轄区域内にあるもの)
  • 会社成立の年月日
  • 支店を設置または移転した旨およびその年月日

登録免許税(及び登記手数料)

  • 本店と管轄が同じ支店を設置する場合
    設置する支店1箇所につき60,000円となります。
  • 本店と管轄の異なる支店を設置する場合(本支店一括登記申請)
    • 本店所在地の法務局分
      60,000円(設置する支店1箇所につき)
    • 支店所在地の法務局分9,000円(設置する支店個数にかかわらず、支店所在地の法務局1箇所につき)
  • 登記手数料
    300円(支店所在地の法務局1箇所につき)です。

本店と管轄の異なる支店を1箇所新たに設置する場合、69,300円を納付することになります。

目的の変更

定款には事業の目的が記載されており、それらとは別の事業を始める場合は定款の変更が必要です。通常、目的条項の一番下に、「その他上記各号に附帯又は関連する一切の事業」などの表現があります。一般常識的にその範囲に含まれると考えられる事業であれば特に目的の変更は必要ありません。
定款の変更は株主総会の決議が必要ですので、株主総会を開催し、その議事録を残します。変更登記の申請をする際はその議事録を添付します。登録免許税は3万円です。商号変更など同一税区分のものもあるので、一緒にまとめて登記申請する方が経済的です。

役員に関する事項

株式会社の取締役の任期は、原則として2年以内の最終の決算期に関する定時総会終結の時までと法律で定められています。また、監査役の任期は、4年以内の決算期に関する定時総会終結までと定められています。役員の変更(重任・再任を含む)がある場合には、2週間以内に変更登記をしなければならず、それを怠ると、100万円以下の過料に処せられます。最近、この変更登記を怠ったために多額の過料に処せられるケースが増えています。

新しい取締役の選任、就任

  • 株主総会で新しい取締役を選任します。
  • 新しい取締役が就任承諾書に実印を捺印します。
  • 役員の就任登記をします。その時には印鑑登録証明書を添付します。
    ※株主総会において、取締役に選任された人がその場で承諾する方法もありますが、その場合はその議事録にその方の氏名記名及び実印捺印が必要になりますので、就任承諾書を作成する方法と実質的にはあまり変わりません。

取締役の辞任

  • 取締役が辞任届を提出します。
  • 役員の辞任登記をします。
    辞任届には実印押印の必要はありません。当然、登記時に印鑑登録証明書の添付は不要です。

代表取締役の選定

代表取締役の選定方法とその添付書類です。

  • 取締役会を設置していない場合
    • 定款によって代表取締役を定めたときは、その定款変更に係る株主総会議事録
    • 株主総会によって代表取締役を定めたときは、その株主総会議事録
    • 定款の定めに基づく取締役の互選によって代表取締役を定めたときは、その定款及び互選書
  • 取締役会を設置している場合
    • 通常は、取締役会で選定し、取締役会議事録を添付します。
    • 前代表取締役が取締役として残っている場合は、前代表取締役が取締役として会社の届出印を押印することにより、新代表取締役を含め他の出席者は全員認印で構いません。

例えば、A氏が代表取締役の一人会社の場合で、B氏を取締役として追加し、A氏が代表取締役を継続するときであっても、確認的に改めて代表取締役の選定を行うことが必要です。ただし、登記すべき事項に、改めてA氏の代表取締役就任を記載する必要はありません。

代表取締役の就任承諾書

  • 取締役会を置かない会社で、定款又は株主総会で選定する場合
    →必要なし(取締役と代表取締役の地位が一体となっているため)
  • 取締役会を置かない会社で取締役の互選で選定する場合、又は取締役会を置く会社の場合
    →必要あり(取締役と代表取締役の地位が分離されているため)

代表取締役の住所変更、氏の変更

代表取締役が住所変更したり、結婚して姓が換わったときは変更登記を行います。
住民票等の証明情報は不要です。
登録免許税3万円、資本金の額が1億円以下の会社については1万円です。

平成27年2月27日から添付書面が変更

平成27年2月27日(金)から,設立の登記又は取締役,監査役若しくは執行役の就任に関する登記の申請書には,取締役等の就任承諾書に記載された氏名及び住所と同一の氏名及び住所が記載されている市区町村長その他の公務員が職務上作成した証明書(当該取締役等が原本と相違がない旨を記載した謄本を含む。)を添付することが必要になりました。ただし,登記の申請書に当該取締役等の印鑑証明書(市区町村長が作成したもの)を添付する場合は,除きます。

《取締役等の「本人確認証明書」の例》

  • 住民票記載事項証明書(住民票の写し)
    個人番号が記載されていないもの
  • 戸籍の附票
  • 住基カード(住所が記載されているもの)のコピー※
  • 運転免許証等のコピー※
    (※ 裏面もコピーし,本人が「原本と相違がない。」と記載して,記名押印します。)
  • マイナンバーカードの表面のコピー※※
    (※※ 表面(氏名,住所,生年月日及び性別が記載されている面)のみをコピーし,本人が「原本と相違がない。」と記載して,記名押印します。)なお,市町村長から交付される個人番号の「通知カード」は,本人確認証明書として使用することはできません。

>法務省 「役員の登記の添付書面・役員欄の氏の記録が変わります」

会社法施行以前の非公開会社

会社法施行前に設立された株式会社では取締役会が設置され、株券が発行されていました。
いまでもそのままにしているケースもありますが、非公開会社であれば、取締役会の設置を廃止し、株券を不発行にした方が実態に合い、シンプルになります。
その際、株式の譲渡を取締役会の承認を必要とさせる制限がかかっているケースが多いので株式の譲渡制限の変更もします。

もちろん、以下の3種類の変更登記は別々に行うこともあります。

取締役会廃止、株券不発行、株式譲渡制限変更

  • 臨時株主総会の特別決議で、以下の定款変更の決議をします。
    • 取締役会廃止
    • 株券不発行
    • 株式の譲渡制限の変更
      取締役会設置会社の定款には「株式の譲渡について取締役会の承認を要する」とする規定があることが多いです。その「取締役会」の部分を「株主総会」に変更します。
  • 定款変更をします。
  • 変更登記をします。
    登記の事由
    取締役会廃止
    株券廃止
    株式の譲渡制限の変更
    書類
    臨時株主総会議事録
    登記すべき事項
  • 費用 それぞれ3万円
    但し、株券廃止と株式の譲渡制限の変更を一緒に行う場合は、同一事項として一緒で3万円で済みます。

登記懈怠

登記は、その登記の事由が発生したときから、原則として2週間以内に行うことになっています。それを過ぎたからといってすぐに罰則を受けるわけではありませんが、半年から1年程度遅れると登記懈怠という扱いになるようです。最大100万円の過料が科されることになりますが、その基準は一定していません。登記官毎、法務局毎にかなり裁量の範囲が広いようです。法務局から裁判所に連絡がいき、数か月後に裁判所から代表取締役個人に過料の連絡が着きます。多くは数万円から十万円程度のようです。

小規模の会社では、取締役の重任登記を怠っていることがよくあります。そのような会社が重任登記を行う場合、遡った日付で順次、本来の重任登記を何回か繰り返して行う方法を採らず、最新の株主総会の時点で一気に過去分を含めた重任登記を1回で行います。当然それは会社法違反になりますので、登記官から指摘を受けることになります。知らないならともかく、知って行う場合は、申請時点で事情を話す方が登記官の心証が少しは良いと思われます。いずれにしろ、登記懈怠分を含めて1回で行いますので、手間もかからず、登録免許税も1回分で済みます。しかし、その後、その情報が裁判所に回って、過料となるわけです。

ところで、株式に譲渡制限がかかっていれば、株主総会の決議により定款変更し、取締役の任期を10年まで伸長できます。そしてその決議は、その時点の取締役に対して効力が及びます。しかもその取締役の任期は登記事項ではありませんので、法務局に届け出る必要はありません。小規模な会社ではできるだけ早く定款変更して、取締役の任期を伸長する方が良いでしょう。

改印届

登録してある代表取締役印の改印手続をする場合は,以下のものが必要です。手数料無料です。

  • 改印届書
  • 新たに届ける印鑑
  • 個人の実印
  • 市区町村発行の印鑑証明書(3か月以内のもの)

最初に代表取締役印を届け出る時と同様です。
なお、代表取締役に関わる登記簿上の住所と市区町村発行の印鑑証明書の住所が一致している必要があります。一致していない場合は、登記住所の変更も一緒に行う必要があります。

何らかの変更登記と改印届を一緒に行う場合、全ての書類には、改印する新しい印鑑で捺印することになります。手続き的には先に印鑑の変更がされるようです。

登録免許税

以下は、比較的多く発生する変更登記の登録免許税です。

  • 区分ニ 増加した資本金の額の1000分の7、最低3万円
    資本金の増加、減少
  • 区分ワ 3万円
    取締役会、監査役会、委員会に関する事項の変更の登記
    ・取締役会設置会社の定めの廃止
    ・監査役設置会社の定めの廃止
  • 区分ヲ 3万円 (管轄法務局が異なるときは6万円)
    本店移転登記
  • 区分カ 3万円 (資本金の額が1億円以下の会社については1万円)
    役員変更登記
    ・取締役、代表取締役、特別取締役、会計参与、監査役、会計監査人、委員会の委員、執行役もしくは代表執行役、社員に関する事項の変更
    ・就任、重任、退任、辞任、氏名、住所など
  • 区分ネ 3万円
    その他の登記
    ・商号変更
    ・目的変更
    ・発行可能株式総数の変更
    ・発行済株式の総数の変更
    ・株式の譲渡制限に関する変更
    ・株券を発行する旨の定めの廃止
  •  登記懈怠
    数万円~数十万円(最高100万円)の過料

>国税庁 登録免許税

登記手数料

平成25年4月1日から書類を取得する手数料が以下のように下がりました。

  • 登記事項証明書(謄抄本)
    • 書面請求 600円
    • オンライン請求・送付 500円
    • オンライン請求・窓口交付 480円
  • 印鑑証明書
    • 書面請求 450円
    • オンライン請求・送付 410円
    • オンライン請求・窓口交付 390円
  • 登記情報提供サービスによる手数料
    • 全部事項 337円

Q and A

Q:議事録を複数部作成して、それぞれに押印しても良いでしょうか?

A:
取締役会などで、出席者が多いとき、全員の押印をもらうのは結構大変です。
特に個人の実印を押印してもらう必要があるときなどはなおさらです。
そのようなとき、議事録を複数部作成し、それぞれに印鑑を押してもらことで済まないかと考えるかもしれません。
しかし、登記の先例では認められていません。
登記に使用する場合は、1通の原本に対して全員が押印する必要があります。

参考情報

平成27年2月27日 本人確認証明書の添付等

以下のように、役員の登記の添付書面・役員欄の氏の記録が変わります。

  • 役員の登記(取締役・監査役等の就任,代表取締役等の辞任)の申請をする場合の添付書面が変わります。
    • 取締役・監査役等の就任登記の申請書に当該取締役等の印鑑証明書を添付する場合を除いて,取締役等の「本人確認証明書」の添付が必要となります。
    • 辞任届には、辞任した代表取締役等の個人の実印による押印及びその印鑑証明書(市区町村長が作成したもの)の添付があるか、又は辞任した代表取締役等の登記所届出印による押印があることが必要になります。
  • 商業登記簿の役員欄に役員の婚姻前の氏をも記録することができるようになります。

>平成27年2月27日からの改正内容

平成27年3月16日 代表取締役の住所に係る取扱いの変更

  • 従来の取り扱い
    代表取締役を複数人選定することは可能ですが、最低一人は日本に住所があることが必要です。つまり、海外在住の方が代表取締役になる場合は、もう一人日本に住所のある方を代表取締役にする必要があります。
  • 今後の取り扱い
    代表取締役の全員が日本に住所を有しない内国株式会社の設立の登記及びその代表取締役の重任若しくは就任の登記が可能になりました。

平成28年10月1日 添付書面に株主リストが追加

株式会社等で、登記すべき事項につき株主総会の決議(種類株主総会の決議)を要する場合等では、株主リストが必要になります。

以下のいずれか少ない方の株主について、株主の氏名、住所、株式数などの記載が必要です。

  • 議決権数上位10名の株主
  • 議決権割合が2/3に達するまでの株主

>法務省 「株主リスト」が登記の添付書面となりました

町田・高橋行政書士事務所の役割

サービス内容

  • 当行政書士事務所では、商業・法人登記における登記申請書以外に対応します。
  • 具体的には、商業・法人登記で必要になる議事録等の添付書類の作成、及びその他書類の取得を行います。
  • 登記申請書自体は当事者である法人が作成するか司法書士の先生に依頼(別途費用が発生)することになります。
  • 法人側で作成する場合は、法務局ホームページのサンプルが参考になります。
  • 司法書士の先生に依頼する場合は、当事務所経由で行います。

費用

株主総会等の議事録の場合、内容にもよりますが、1~3万円程度です。
郵送料等の実費は別途必要です。

期間

内容にもよりますが、議事録等の書類作成であれば、1~2日、
官公署の書類の取得は、郵送で1週間程度、直接出向く場合(別途費用が発生)で1~2日程度です。

対応エリア

  • 町田市、多摩市、稲城市、狛江市、世田谷区、新宿区、渋谷区などの東京都
  • 相模原市、座間市、厚木市、大和市、綾瀬市、海老名市、横浜市、川崎市などの神奈川県
  • 内容、状況によっては全国対応、海外対応もします。

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