数次相続の事案

父親がまず亡くなり、それから数十年して母親が亡くなり、兄弟で相続する事案です。本来は父親が亡くなった際に相続しなければならなかったのですが、怠っていました。数次相続になり、結構面倒になりそうです。

相続手続きは次世代につけを回さず早めに行うべきです。後回しにしても何の得もありません。複雑さが増すだけです。更に言えば、相続が簡単になるように有効な遺言を遺すべきです。もっと言えば、生前に自分の財産の始末をしてしまえば相続さえもなくなります。死後の相続は争いの元です。本来は生前に片を付けておくべきものなのでしょう。

2011年5月29日

60歳台前半の在職老齢年金の改正案

5月21日の日経新聞の朝刊に、「60歳代前半の就労を促進、年金減額幅を縮小 厚労省案全容」という記事が掲載されていました。

現行制度では60~64歳の人が働きながら厚生年金を受け取る場合、年金と給与の合計額が月額28万円を超えると、28万円を超えた分の半分だけ受け取る年金が減り、46万円超では給与の増加分だけ年金がカットされます。
厚労省は給与と年金の合計額が46万円を超えるまで、年金を減額しない制度に変える方針とのことです。
高齢者の就労を促すのが目的ですが、確かにこの差は大きいです。継続就労に対する相当のモチベーションアップになりそうです。

2011年5月28日(土)

基礎年金の繰上げ受給は得か損か?

昭和24年4月2日生まれ以降の方は基礎年金は基本的に65才にならないと受給できません。

しかし、繰上げ受給という制度があり、金額が少なくても良いから早く受給したいというニーズに対応しています。
繰上げ受給すると一生涯年金が減額されてしまいます。
1ヶ月繰上げると0.5%減額されます。1年で6%。5年間繰上げると毎月30%減額された年金が一生涯続きます。普通に65才から受給したとした人に何才で抜かれてしまうのかという疑問が湧きます。計算上、16.6年後です。つまり76.6才を超えると受給総額で65歳受給のケースに追い抜かれてしまいます。何を持って得と考えるか損と考えるかは人それぞれです。なかなか難しい判断です。

繰上げ受給をしてしまいますと、老齢基礎年金の受給者になってしまいます。
それにより発生する制約もあります。留意点を整理すると以下のようになります。

  • 一度繰上げ受給を請求(裁定請求)すると、取り消しや変更ができません。
  • 減額された支給率が原則、一生涯続きます。
  • 繰上げ受給後、国民年金に任意加入できません。
  • 繰上げ受給後、障害者となっても障害年金は受給できません。
  • 繰上げ受給後、寡婦年金の受給資格者となっても受給できません。
  • 繰上げ受給後、遺族厚生年金の受給資格者となった場合、65歳まではどちらかの選択となり併給はできません(65歳以降は併給可)。

2011年4月24日(日)

株主総会の議決の種類

株主総会の議決方法には、その議決する事項の重要さによっていくつかの種類があります。

基本的には以下の通りです。

  • 普通決議
    議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数により議決
  • 普通決議(取締役・会計参与の選任・解任および監査役の選任の場合)
    議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(3分の1以上の割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)の多数で議決
  • 特別決議
    議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(3分の1以上の割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の3分の2(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の多数で議決
  • 特殊決議
    議決権を行使することができる株主の半数以上(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)が出席し、その全株主の議決権の3分の2(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の多数で議決

(2011年4月20日)

定款と登記の関係

定款の記載事項と登記事項の関係が少し分かりにくいです。

定款とは会社運営の基本事項、基本ルールです。会社にはある程度自治権があり、法令に違反しない範囲で、自ら運営ルールを作成することが出来ます。それが定款です。どのような事業を行うか、株式をどのくらい発行するか、取締役会を設置するか、などです。会社設立時に発起人が集まり、どのように会社を運営しようかと話し合います。そして定款を作成するわけです。ただ、行政としては勝手に法令違反の定款を作成し、勝手に法令違反の会社運営をされては困るという考えがあります。そこで、会社設立段階の定款が法令違反をしていないかどうか、公証役場という役所がチェックをする仕組みになっています。

ところで、定款に書かれていることの一部が登記事項になります。定款は30数条6~7ページになりますが、登記事項はそれ程多くはありません。会社設立申請時に法務局に「登記すべき事項」という書類を提出します。それが文字通り実際の登記事項になります。最近手がけた会社設立の書類では、具体的に以下のようになっています。
商号、本店、広告をする方法、目的、発行可能株式総数、発行済み株式の総数、
資本金の額、株式の譲渡制限に関する規定、役員に関する事項、監査役設定会社に関する事項
会社設立をするとすぐに「現在事項全部証明書」をとりますが、そこにはまさしく上記の項目が並んでいます。唯一追加されているのは、会社設立の年月日だけです。

会社設立後、会社が成長するにつれ、資本金の額が増えたり、取締役会を設けたりと会社の基本事項、基本ルールが変化します。それに伴い定款変更及び変更登記を行うことになります。定款に対する変更は基本的に株式総会の特別決議で決定し、変更します。その変更にはもはや公証役場は関与せず、会社内で責任をもって変更、管理していくことになります。定款に記載されている事項の方が登記事項より多いので、定款変更をしても変更登記をする場合としない場合があります。逆に、役員の改選のように定款変更は必要ないが変更登記が必要な事項があります。法令を順守し、決まった手続きに沿って、適切に定款を変更し、登記を変更することは会社運営の基本になります。

(2011年4月19日)

停止条件と解除条件

昨日、以下のようなニュースがありました。

「政府は、福島第1原発の放射性物質漏えい事故の影響で、福島県産のホウレンソウとカキナに対して出荷停止を行っていたが、放射性物質が3週連続して暫定基準値を下回り、国が示した解除条件を満たしたので出荷停止を解除した。」

民法には、停止条件と解除条件というものが出てきます。最初はこれが分かりにくいです。分かったと思うとまた忘れて混乱してしまいます。

  • 停止条件
    ある条件が成就すると一定の法律効果が発生する、そのような条件を停止条件と言います。「現在有効ではない法律効果をそのまま『停止』させておくための条件」、と覚えるようにしています。
    例えば死亡すると贈与が発生するような遺贈の場合の死亡が停止条件になります。
  • 解除条件
    ある条件が成就すると一定の法律効果が消滅する、そのような条件を解除条件と言います。「現在有効である法律効果を『解除』するための条件」と覚えるようにしています。
    今回のニュースが良い例です。「3週連続で放射線物質が暫定基準値を下回る」と出荷停止を解除する場合の「3週連続で放射線物質が暫定基準値を下回る」というのが解除条件になります。

AならばBという関係は同じですが、Bが法律効果を発生させるのか消滅させるのかで分けています。

2011年4月10日(日)

売買等の取引で物(動産)を引渡すということ

民法は私人間の争いを解決するための法律です。私人間の争いは売買等の取引で生じることが多いです。取引の多くは何らかの物を交換します。交換するには、物を相手に渡すという行為が必要です。動産に関して、占有状態をAからBに移転するということは重要な行為になります。

民法では、所有権を変動させるために行う動産の引渡し(占有の移転)には4種類あるとしています。

  • 現実の引渡し:最も一般的でAからBに現実に引渡して所有権を移します。
  • 特殊な引渡し
    • 簡易の引渡し:貸しているなどで既にBの手元にあるものをAがBに引渡したことにして所有権を移します。
    • 指図による占有移転:預けているなどでCの手元にあるものを以後Aのためではなく、Bのために占有するように指示して所有権を移します。
    • 占有改定:Aの手元にあるものをそのまま占有を継続するものの、以後の所有権はBに移します。

特殊な引渡しによる所有権の移転は観念的なもので、そう言われればそうかなと理解はできます。ただ、現実の取引契約では往々にしてありそうなことです。と同時にトラブルも発生しそうです。特に占有改定はそうです。外見的には元の所有者のところにそのまま存在して違いが見えないので、争いが起きそうな可能性が非常にありそうです。

2011年4月 8日(金)

劇場型未公開株詐欺事件が増加

本日の日経新聞に未公開株詐欺が急増しているという記事が掲載されていました。何人もがぐるになって綿密に筋書きを描いて皆がそれぞれのパートを演じ切るようです。そこで、劇場型詐欺と呼ばれるそうです。

元々、登録していない未公開株取引業者は存在自体が違法です。ただ業法上違法であっても、一般に契約自由の原則があり、民事上被害者と締結した契約は有効になります。その有効な契約を詐欺を理由にして取り消すには、取り消す側の被害者が相手の詐欺を立証する必要があります。主張する被害者側に立証責任があるというのが原則です。結構、酷な話しです。当然相手にも弁護士が付きます。合意してお金を支払っているので被害者側からの詐欺の立証が結構難しいことになります。

そこで立証責任を転換しようという話になりました。向こうは違法な存在なのだから”詐欺ではない”と立証できなければ、契約を無効にしてしまおうということです。論理的に立証する側は難しく不利になります。攻撃する側は論理のほころびを追求すれば良いので有利になります。”詐欺ではない”と立証できなければ契約は取り消され、存在しなかった初めの状態に戻さなければなりません。つまりお金を全額被害者に戻す必要があります。

一般市民感覚からすると、誰が見ても詐欺だから契約は無効で当然のように思えます。法律の世界、弁護士の世界に入ると必ずしもそうでもなくなります。悪いことをする側が往々にしてお金をたくさん持っていることが多く、優秀な弁護士はお金で雇うことが可能だからです。巨悪を弁護する弁護士がいるのにいつも不思議な感覚を持ってしまいます。

2011年4月 7日(木)

合併、会社分割、株式交換、株式移転

会社の組織再編の意味と用語は誤解しやすいです。
以下に整理します。

  • 吸収合併
    A社がB社を吸収合併する。
    A社が存続しB社が消滅する。
    B社の株主にはA社の株式が割り当てられる。
    A社は「吸収合併存続会社」
    B社は「吸収合併消滅会社」
  • 新設合併
    A社とB社が合併しC社を新設する。
    A社とB社は共に消滅する。C社は新設されA社とB社の株主が移行。
    A社とB社の株主にはC社の株式が割り当てられる。
    A社、B社共に「新設合併消滅会社」
    C社は「新設合併設立会社」
  • 吸収分割
    A社が、B社から分割された一部の事業を吸収する。
    A社もB社も存続する。
    A社からB社に対価が支払われる。
    A社は「吸収分割承継会社」
    B社は「吸収分割会社」
  • 新設分割
    A社がB社を新設し、事業の一部を分割して譲渡する。
    A社は存続する。B社はA社の完全子会社として新設される。
    A社がB社の株主となる。
    A社は「新設分割会社」
    B社は「新設分割設立会社」
  • 株式交換
    B社の株式が全てA社の株式に交換される。
    A社がB社の全株式を取得して、代わりにB社の株主にA社の株式、あるいは金銭等を支払う。
    B社の株主はA社の株主になる。
    A社もB社も存続する。B社はA社の完全子会社になる。
    A社は「株式交換完全親会社」
    B社は「株式交換完全子会社」
  • 株式移転
    B社がA社を設立する。
    B社の株式を全てA社に取得させ、B社の株主にA社の株式を取得させる。
    A社もB社も存続する。B社はA社の完全子会社になる。
    A社は「株式移転設立完全親会社」
    B社は「株式移転完全子会社」

2011年4月 3日(日)

株主に株式の割当をしない株式の募集

公開会社でない株式会社において、株主に株式の割当を受ける権利を与えずにする募集株式の募集事項の決定は、

  • 原則として、株主総会の特別決議になります。
  • ただし、株主総会の特別決議により取締役、または取締役会に決定を委任することが出来ます。

それに対して、公開会社の場合、

  • 株式を引き受ける者に特に有利な発行でない場合は取締役会の決議によります。
  • 株式を引き受ける者に特に有利な発行の場合は、
    • 原則として、株主総会の特別決議によります。
    • ただし、株主総会の特別決議により取締役会に決定を委任することが出来ます。

2011年4月 2日(土)