会社の経営がうまく行かなくなってきたとき

会社の経営がうまく行かなくなってきたときに進むべき道はいくつかあります。

1)会社を継続させる方法
民事再生
公正な手続きにより、債権者の平等と企業の再建を図ろうとするものです。原則として現状のままで再生を試みるのが建前ですので役員などはそのままです。ただ、ほとんどの場合、経営陣を監督する監督委員が選任され、監督委員が同意しなければできない行為等が登記され、経営陣の活動は一定の制約を受けます。

会社更生
会社の再生を目的とするのは民事再生と同様ですが、会社更生法という法律に基づいて進められます。旧経営陣の権限は基本的に管財人に移ります。会社更生は民事再生より手続きが厳密で終了までに相応の時間がかかります。最近は「DIP型会社更生手続き」により、一定の条件の元、取締役が管財人として引き続き業務の運営にあたることが増えつつあります。

2)会社を解散させる方法
破産
債務を弁済できず、会社の再建、再生が困難な場合は破産となり、破産手続きをすることにより、解散します。債務者等から破産の申し立てがされ、裁判所が理由ありと認めれば、破産手続き開始決定をし、破産管財人を選任します。破産は委任契約の終了事由となり、役員は当然に退任します。破産管財人は会社の財産を金銭に換えて債権者に配当します。債務者の財産自体が極めて少ない場合は破産手続き自体を行わないこともあります。

破産以外
破産も解散の一つですが、その他、株主総会の決議、合併、休眠会社のみなし解散などで会社は解散、清算されます。日常の営業を行なわない清算会社が清算の目的の範囲内で存続し、基本的には取締役が清算人となって、清算事務を執行します。具体的には、業務を結了させ、債権を回収し、債務は弁済し、残余財産を株主に分配することになります。

2011年6月29日(水)

譲渡担保

譲渡担保とは、目的物の所有権その他の財産権を、法形式上債務者または第三者(物上保証人)から債権者に移転して債権担保の目的を達する制度です。

主に形式面を重視して考えるのか(所有権的構成)、実質面を重視して考えるのか(担保権的構成)という2つの見解に大別することができます。

所有権的構成
譲渡担保権者は、目的物の所有権を(対内的にも対外的にも)取得しますが、譲渡担保権設定者に対して、取得した権利を担保目的を超えて使用・処分しない(債権的な)義務を負います。

担保権的構成
譲渡担保の目的物の所有権は依然として設定者に帰属し、譲渡担保権者は、目的物について担保権を有するにすぎません。

2011年6月26日(日)

財産の生前贈与

自らの意思で財産を分与したいのであれば、生前に贈与するのが一番確実です。
相続税対策にもなります。
贈与には暦年課税と相続時精算課税の2つの課税方式があります。いずれも受贈者が納税義務を負います。

歴年課税

従来からの課税方式で1年間に贈与された財産の価額をもとに、10%から50%の税率で課税されます。ただし、歴年課税には110万円の基礎控除がありますので、贈与財産が110万円以下であれば贈与税はかかりません。また申告も不要です。贈与方法には注意が必要ですが、子ども3人に10年間毎年贈与すると、3,300万円まで無税で生前贈与できます。ただし、相続開始前3年以内の贈与に限り、相続税の対象になります。

相続時精算課税

財産の早期移転を促すために設けられ、贈与税と相続税が一体化した制度です。贈与時に特別控除額の2,500万円を超える金額に対し一律20%の贈与税が課税されます。相続時には贈与された金額を含めて相続税の計算をして、納付済みの贈与税と相殺します。つまり、贈与時に相続税を仮払いし、実際の相続時に精算することになります。65歳以上の親から20歳以上の子(代襲相続含む)への贈与に限られます。

暦年課税の適用を受けるか相続時精算課税を選択するかは、それぞれの子が父母ごとに選択することになります。また、一度相続時精算課税を選択した場合は暦年課税に戻ることはできません。

2011年6月12日

相続人の確定

遺産分割協議の前に相続人を確定する必要があります。

そのために、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍、除籍、改製原戸籍の謄本を取得することになります。

まず最初に被相続人の最後の本籍地で戸籍(除籍)謄本を取ります。そしてそこに記載された情報を元にその前の戸籍または除籍、または改製原戸籍の謄本を取ります。それを繰り返し、出生までさかのぼっていくことになります。婚姻や転籍、改製などによって新しい戸籍が編成されると既に除籍されていた構成員は省かれますので注意が必要です。

本籍地を移した回数が多いとかなり面倒になります。今回行った相続人の確定では、4か所の市区町村役場から謄本を取得しました。今回は比較的近場だったので直接行きましたが、郵送でも請求することは可能です。取得できるのは戸籍の構成員、直系親族などで、代理人の場合は委任状が必要です。

戸籍

夫婦と未婚の子どもを単位に編成されています。

除籍

・戸籍に記載されている人が死亡、婚姻などにより戸籍から抜け、名前がバツで抹消されることをいいます。
・また、全員が除籍されたり本籍地が移されたり(転籍という)すると、その戸籍は除籍と呼びます。

改製原戸籍

戸籍は何度か改製(作り替え)されており、改正前の戸籍を改製原戸籍といいます。
近年では、昭和32年の改正前の昭和改製原戸籍と平成6年のコンピュータ化前の平成改製原戸籍があります。
個人的に言うと、これは「改正前戸籍」と呼ぶ方が分かり易いと思います。

除籍謄本と改製原戸籍謄本は1通750円、戸籍謄本は1通450円です。

2011年6月10日

株式会社設立時の現物出資

先日行った株式会社設立で500万円の現物出資をしました。

500万円を超す現物出資は、裁判所に検査役選任の申し立て、あるいは弁護士、税理士等の調査が必要になります。しかし、500万円以下の場合は、設立時の取締役と(いれば)監査役が調査すれば良いという少額財産の特例があります。

一般に、書籍にはパソコン、車などが現物出資の対象と書いてあります。今回は全く異なる物でした。現物出資の内容に関して、公証役場、あるいは登記所(本人申請です)から問い合わせが入るかと少し心配しました。しかし、結局は何もありませんでした。500万円以下という少額に関しては、公証役場も登記所もあまり内容に興味がないようです。会社内で責任を持ってもらえればそれで良いというスタンスのようです。

何かの理由で資本金を少し大きく見せる必要がある場合、現物出資は有効かもしれません。もちろん、出資する現物に実態がないといけませんが。

(2011年6月 9日)

遺産分割方法の優先順位

遺言がある場合

現在の民法では、遺言を遺すことが予定されています。従って、遺言があれば遺言が優先され、基本的には遺言どおりに遺産が分割されることになります。但し、遺留分などの一定の制約はあります。

遺言がない場合

遺言がない場合は、相続人で協議、合意し、遺産分割協議書を作成した後、そのとおりに分割します。どのように合意しても構わないのですが、利害がぶつかる可能性が高いです。そこで民法は詳細に法定分割を規定しており、それを基準に分割することになります。

遺言はあるが、異なる分割をしたい場合

遺言が遺されてはいるものの、異なった分割をしたい場合が時にあります。遺言は尊重されるべきですが、それとは異なった分割をすることは可能です。但し、当然ですが、相続人及び遺贈を受ける者など利害関係者全員の合意が必要です。財産相続を受ける誰からも異議申立てがされないことが前提です。被相続人は異を唱えたいでしょうが、「死人に口なし」ということなのでしょう。

2011年6月11日

相続欠格と廃除

相続欠格

一定の非行を行った相続人は当然に相続権を失います。
以下の5つの場合です。

  • 被相続人の遺言を偽造、変造、破棄、隠匿した
  • 詐欺や強迫により、被相続人に遺言させたり、前にした遺言の取消しや変更をさせた
  • 詐欺や強迫により、被相続人が遺言をすることや、前にした遺言の取消し、変更を妨害した
  • 被相続人が殺されたことをしりながら告発や告訴をしなかった
  • 被相続人や先順位又は同順位の相続人を殺したり、殺そうとして刑を受けた

廃除

推定相続人に、被相続人を虐待するなどのひどい非行がある場合、被相続人の意思により相続権を奪うことができます。
以下のようなケースです。

  • 被相続人に対する虐待
    常態的に罵声を浴びせたり、殴る、けるの暴行を加えた
    寝たきりの親を看護せず、食事も与えず衰弱させた
    など
  • 被相続人に対する重大な侮辱
    日頃から人目もはばからず親を無能呼ばわりした
    私的な秘密を公表し、名誉を傷つけた
    など
  • その他の著しい非行
    定職に就かず、繰り返し親に金を無心したり財産を盗んだりした
    夫と子を棄て、愛人と同居していた
    など

生前に廃除を行う場合には、被相続人が家庭裁判所に廃除請求を申し立てる。
死後で廃除を行う場合には、遺言で廃除の意思表示をし、遺言執行者が家庭裁判所に廃除請求を申し立てる

2011年6月 8日

遺産分割でもめそうなケース

・家族、相続人の仲が悪い
・現在の家族のほか、先妻との間の子供もいる
・家族に内緒で認知した子がいる
・相続人の数が多い
・自宅以外、あまり財産がない

以上の場合で、遺言がないと相続人全員で話し合って決めることになりますが、紛争に発展する危険度が高いです。

そのためには遺言で遺産の分け方を指定しておけば、相続人同士が話し合う必要がなく、争いを回避することが出来ます。

2011年6月 7日

遺言の必要な人

  • 夫婦の間に子どもがいない
    →遺言がないと、親兄弟も相続人になり、配偶者が遺産の全部を相続できません
    ⇒配偶者に遺産の全部を相続させる遺言をします
    (親には遺留分があるので注意)
  • 配偶者が籍に入っていない内縁関係
    →遺言がないと、内縁(事実婚)の妻は相続できません
    ⇒遺言で財産を遺贈します
  • よく尽くしてくれた嫁に財産を分けたい
    →遺言がないと、嫁は相続人ではないので相続権がありません、友人なども同様
    ⇒遺言で嫁、友人などに遺贈します
  • 音信不通の子どもがおり、どこにいるのかわからない
    →遺言がないと、遺産分割協議が出来ず、不在者財産管理人などの手続きが必要
    ⇒遺産の分け方を遺言にしておけば、財産承継がスムース
  • 事業を長男に事業用の財産を相続させたい
    →遺言がないと、長男が事業用財産を相続できるかわからず、事業承継が難しくなる
    ⇒遺言で各相続人が取得する財産を指定しておけば安心
  • 障害のある子どもの将来が心配
    →遺言がないと、他の子や施設などがしっかり面倒をみてくれるかどうか心配
    ⇒遺言で負担付きの遺贈する、あるいは後見人を指定することが出来る
  • 暴力をふるうドラ息子に財産を渡したくない
    →遺言がないと、ドラ息子にも他の相続人と同じように相続する権利がある。
    ⇒遺言で非行の相続人を廃除することが出来る
    (以後によらない廃除も可能)
  • 相続人がいないので遺産を社会のために役立てたい
    →遺言がないと、債権者への精算後、残余財産は国家に帰属する
    ⇒遺言で特定の団体に寄付したり、使用方法を指定したりすることが出来る

(2011年6月 6日)

遺贈

被相続人が自分で財産の承継者などを決め、遺言によって与えることを遺贈といいます。

遺贈を受ける受遺者は相続人でも相続人でなくても構いません。特定の相続人に特定の財産を承継させる遺贈は特別受益になります。遺贈は相続権のない嫁や世話になった知人などに財産をあげたいときによく行われます。

遺贈には特定遺贈と包括遺贈の2つの方法があり、それぞれ負担付きの遺贈も可能です。

  • 特定遺贈
    「友人の○○○○氏に保有株式を全て遺贈する」などのように具体的な財産を示して行います。
    遺産分割協議に参加しませんし、債務があっても承継しません。
    相続人などへの意思表示により、いつでもその遺贈を放棄できます。
  • 包括遺贈
    「嫁の○子に財産の2分の1を遺贈する」などのように割合を示して行います。
    以下のように、相続人と同一の権利義務を持つことになります。
    ・遺産分割協議に参加します。
    ・指定された割合で債務も承継します。
    ・3か月以内に遺贈の放棄、あるいは限定承認が出来ます。
  • 負担付きの遺贈
    「長男に土地、家屋を遺贈する。ただし長男は遺言者の妻を看護すること」などと記載します。
    財産贈与と引き換えに、自分の心配なことを託すことができるので有効な方法です。

(2011年6月 5日)

代襲相続

死亡した相続人に代わって子が相続することを代襲相続と言います。

代襲相続の原因は、
相続開始以前の相続人の死亡
相続欠格
相続人の廃除
の3つです。
相続放棄は代襲相続の原因になりません。

代襲相続の範囲は以下のとおりです。
直系卑属:何代でも
兄弟姉妹:一代限り、つまり甥、姪まで
直系尊属:認められません
配偶者:認められません

2011年6月 4日