相続税節税/贈与税基礎控除110万円の利用

来年からの相続税大増税を控え、新聞・雑誌等で相続税節税に関する記事を眼にすることが多くなりました。

一番多いのは、暦年110万円までの贈与税基礎控除枠を利用する方法です。しかし、毎年、同じようにする定期贈与は、一括贈与とみなされ、課税される可能性があります。税務当局から否認されないように、以下のような注意をすることが必要です。

・毎年、贈与契約書を作成する。
・贈与の事実を振込の記録として残す。
・振り込んだ相手の子・孫等の通帳を自分で預からない。
・毎年、金額を替え、振り込む日も替えるようにする。
・110万円を少し超えた額の贈与をして、10%の贈与税を払っておく。

しかし、以上のことを毎年行うのは結構面倒です。
そこで、ある信託銀行では、その面倒さをなくすため、受益権の分割という手法を用いた贈与を提案しています。信託銀行が間に入ることで、税務当局の生前贈与否認のリスクをなくすことができるとのことです。

2014年5月16日

相続税の改正と節税

来年1月1日から相続税が大きく改正されます。

相続税が発生する相続は、これまで全体の4~5%と言われていましたが、20%以上になると言われています。
都心ではその割合は更に高まります。
相続税に関しては相当の増税と言うことができます。
以下に、情報を整理してみました。

来年からの相続税変更のポイント

  1. 基礎控除
    一番大きいのが、基礎控除の圧縮です。以下のように6割に圧縮されます。これにより、相続税納付の対象となる相続が激増することになります。
    ●~今年)5,000万円+1,000万円×法定相続人の数
    ●来年~)3,000万円+600万円×法定相続人の数
  2. 相続税率
    相続税率も、相続財産が2億円までは変わりませんが、2億円超になると基本的にアップします。
    ●~今年)3億円以下40%、3億円超50%
    ●来年~)2億円以下40%、3億円以下45%、6億円以下50%、6億円超55%
  3. 小規模宅地等特例
    自宅を配偶者、一定の親族が相続する場合は、評価額が軽減されますが、その適用範囲が拡大されます。この変更は減税に働きます。
    ●~今年)特定居住用宅地等の240㎡までは、税額が80%軽減されます。
    特定居住用宅地と特定事業用等宅地等の特例適用は最大400㎡までの限定併用です。
    ●来年~)特定居住用宅地等の330㎡までは、税額が80%減免されます。
    特定居住用宅地と特定事業用等宅地等の特例適用は完全併用されます。
  4. 未成年者控除
    これも若干ですが、減税です。
    ●~今年)6万円×20歳に達するまでの年数
    ●来年~)10万円×20歳に達するまでの年数
  5. 障害者控除
    同上です。
    ●~今年)6万円(特別障害者は12万円)×85歳に達するまでの年数
    ●来年~)10万円(特別障害者は20万円)×85歳に達するまでの年数の年数

相続税計算方法のステップ

相続税の計算方法は少々面倒です。

  • 相続財産目録を作成します。
  • 不動産に対して、小規模宅地等の特例、広大地評価等の適用により、相続税の課税価格を減額します。
  • 相続財産に以下の控除や加算を行い、課税価格を算出します。
    • 非課税財産、債務、葬式費用の控除
    • 生命保険等みなし相続財産(非課税枠あり)、3年以内の生前贈与、相続時精算課税適用分の加算
  • 相続税課税基準額から基礎控除を引きます。
  • 相続人が民法の規定による法定相続分どおりに相続したものと仮定して各人の相続額を算出します。
  • 各相続人の法定相続額を基準にして相続税率を当てはめ、各相続人の仮の相続税額を算出します。
  • 各相続人の仮の相続税額を合計して相続税の総額を求めます。
  • 相続税の総額を、実際に各相続人が相続した財産の割合に応じて按分し、各人の実際の相続税額を算出します。
  • その各相続人の相続税額に対して、以下の各種控除や加算を行うことにより、各人が実際に支払う相続税額が決まります。
    • 配偶者の税額控除、未成年者控除、障害者控除、既納付贈与税額控除、相続時精算課税制度による既納付税額控除
    • 1親等の血族と配偶者以外の相続税額の2割増し

相続税の節税方法

以下に、どのようにして相続税額を減らすか、その方法に関して簡単に記載しました。

  1. 小規模宅地等の特例の適用
    自宅土地を配偶者、一定の親族が継続して居住する場合は、一定の広さまで評価額が80%軽減されます。
  2. 住宅取得資金等の贈与による非課税枠の利用
    直系尊属から、子・孫の住宅の新築若しくは取得又は改築等の対価に充てる資金を非課税で贈与できます。
  3. 暦年1人110万円までの贈与税の非課税枠の利用
    相続開始3年以内の贈与は相続財産とみなされますので注意が必要です。
    税務署による否認の可能性があるので、生保の個人年金保険等の利用が確実です。
  4. 相続時精算課税制度
    2,500万円までの相続財産を相続発生より前に推定相続人に無税で贈与する制度です。
    直接的な節税にはなりませんが、相続人の住宅ローンを早目に返済すれば金利を軽減できます。
    110万円の暦年の非課税枠と一緒に利用はできません。
  5. 子孫等への1人当たり1,500万円の教育費の非課税枠の利用
    平成27年末までの時限立法です。信託銀行で取扱っています。
  6. 相続人1人当たり500万円までの生命保険の非課税枠の利用
    90歳6か月まで加入できる一時払い終身保険があります。
  7. 夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除の利用
    婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、居住用不動産又はその金銭を2,000万円まで無税で贈与できます。
  8. 配偶者の税額軽減制度の利用
    被相続人の配偶者の遺産額が、次の金額のどちらか多い金額までは相続税がかかりません。
    1億6千万円又は配偶者の法定相続分相当額
  9. 養子縁組をすることにより、相続人が増え、基礎控除、生命保険の非課税枠などが大きくなります。
    このような目的の養子縁組も少なくありません。
  10. アパート等を立てることにより財産評価額を下げられます。
    アパートや貸家などの建物の評価は3割減になります。
    アパート、貸家等の敷地は、借地権割合と借家権割合を乗じた分だけ評価減になります。
  11. 必要な支出を生前に早目に行い、その使用価値を子、孫に引き継ぎます。
    墓地、家の改築、その他必要な支出を相続が発生する前に支出すれば相続財産を減らせます。

各種の相続税の節税を行うと、相続財産の配分が法定相続割合から大きく異なってきます。
遺言を遺し、その中で特別受益分などとして調整する、あるいは付言で説明するなどが必要になります。

(2014年 4月30日)

もめる相続、負担は妻に

「もめる相続、負担は妻に」というタイトルの記事が10月30日の日経新聞に掲載されていました。

■相続の問題は妻の問題
夫の方が年齢が上の場合が多いこと、及び男性より女性の方が平均寿命が長いことを考えますと、当然ながら、夫が妻よりも先に亡くなるケースが多いと言えます。
平均余命でみると、女性の2人に1人が90歳近くまで、4人に1人が95歳まで生きるとのことです。
更に、妻が先に亡くなると夫はその後1.5年で亡くなるが、夫が先に亡くなると妻はその後15年生きるというデータもあります。
妻は夫の遺産相続を真剣に考える必要があります。

■相続でもめるケースが3つ挙げられています。

○1.子がいない夫婦の場合
子がいない夫婦の場合、妻が全てを相続できるかというとそうでもありません。子がいなくて妻が相続する場合、法定では以下のようになっています。

  • 夫の親がいる場合
    妻が2/3、夫の親が1/3相続
  • 夫の親がいなくて夫の兄弟がいる場合
    妻が3/4、夫の兄弟が1/4相続
  • 夫の親も夫の兄弟もいない場合
    妻が全て相続

夫の兄弟が亡くなってその子がいる場合は、代襲相続となり、甥や姪が相続します。
妻にすべてを相続させたい場合は、遺言を遺す必要があります。その場合、夫の兄弟には遺留分はありませんが、夫の親には法定相続分の1/2の遺留分がありますので注意が必要です。

○2.夫の親の介護をした場合
夫の親の介護をいくらしても、嫁には法定相続分がありません。夫の兄弟が物わかりが良く、遺産分割協議でその介護の寄与分を認めてくれれば良いですが、そのようなケースは多くはなく、泣き寝入りになってしまいます。仮に兄弟間であれば介護の寄与分は法律的には認められますが、それでも実際の裁判になると評価の度合いは少なく、限りなく法定相続に近い分け方になります。

ここでも、遺言を遺すことにより、介護の労をねぎらって嫁に財産を遺贈することができます。

○3.財産が家しかない場合
財産が家しかない場合で、妻が全てを相続できないときは非常に困ります。以下の方法になります。

  • 家、というより土地を実際に分筆します
  • 家を売却し、その売却金額を相続比率で分けます
  • 家を売却したと仮定して、他の相続人のその相続分相当額を現金で渡します。

しかし、土地が大きくないと分筆できませんし、家を売却したらすぐに住む家に困ってしまいます。現金で渡すにしても現金がなければ借金をするしかありません。
相続する財産が家しかない場合は、分割が非常に難しいので、特に遺言を遺す必要があります。

■遺言の数
2012年の遺言の数は、
公正証書遺言は約88,000件
自筆証書遺言の検認は約16,000件
で、共に、10年前と比べて約1.4倍。
日本の年間死亡者数は120万人なので、合計しても1%以下。
死亡者の伸びに比べて、遺言書の伸びは緩やか。

■婚外子問題
9月4日の最高裁判決により、婚外子の法定相続分が嫡出子の2分の1という民法の規定が覆されました。これにより、夫に婚外子がいる場合、その子の法定相続分は、法律婚の夫婦間の子と同じとなりました。婚外子側には朗報ですが、妻、嫡出子側には不利になります。相続に関わる夫の意思を、遺言にして遺す重要性が今まで以上に高まったと言えます。

2013年10月30日 日経新聞より

相続託し「争族」回避

本日の日経新聞に遺言信託の記事が掲載されています。

遺言信託は、遺言書の作成から、遺産の名義変更まで信託銀行が請け負う方法です。

  • 2013年3月末の遺言信託契約件数は約8万件、この10年間で2倍に増えた。
  • 遺言信託では、遺言書の作成に半年、担当の行員が契約書の自宅に足しげく訪問する。
  • 遺言書の作成から死後の財産分与まで、平均で7~8年かかる。
  • 基本手数料は、20万円~30万円程度、財産分与に必要な執行報酬は100万円以上かかる。

遺言信託は、進め方、費用などを考えると相当な資産家向けと言えます。遺産総額が数億円以上であれば良いかもしれませんが、一般の人には敷居が高いと言えます。行政書士であれば、同等のことを行っても数分の1の金額で済みます。

  • 2015年からの相続増税
    2015年1月1日以降に発生する相続に関しては増税されることが決定されています。

    • 相続税を支払う人の比率は4%から7%に上がると言われています。
    • 基礎控除額
      「5000万円+1000万円×法定相続人の数」から「3000万円+600万円×法定相続人の数」へと引き下げられます。
      相続人一人の場合、相続財産が6000万円までは課税対象外でしたが、それが3600万円になります。
    • 税率
      課税対象の相続財産が、2億円超から3億円以下が、40%から45%へ上がります。
      課税対象の相続財産が、6億円超部分が、50%から55%へ上がります。
    • 結果として、相続税支払いのため不動産を売却したり、物納したりするケースが増えると言われています。

相続に関する家庭裁判所への相談件数は、増加しており、2012年度に17万件を超えました。
今後も増税、老齢年金額の低下、相続人層の資産減少、権利意識の向上などにより、相続に関する争いはますます増えていくと思われます。

2013年10月14日 日経新聞より

婚外子相続差別は違憲

予想されていたことですが、2013年9月4日に、最高裁大法廷で、ついに婚外子相続差別の違憲判決が出ました。

判決のポイント

現在の民法900条では、「非嫡出子の相続分は嫡出子の2分の1」とされています。例えば、ある男性に戸籍上の妻との子Aと、そうではない女性との子Bがいる場合、現在の民法では、子Aの相続分は1,000万円で、子Bの相続分は500万円になります。しかし、今後は、上記の例の場合であれば、嫡出子、非嫡出子の区別がなくなり、750万円ずつの相続権を持つことになります。

判決の意図、意味

これまでは、家族制度、戸籍制度を重視し、子は夫婦間でもうけるべきであり、婚姻外でもうけた子にはペナルティとして相続権を2分の1しか与えないという制度でした。しかし仮にペナルティを与えるにしても、婚外子をもうけたその父親にペナルティを与えるのならともかく、何の責任もない生まれてきた子にペナルティを与えるのは筋違い、という判断になったわけです。憲法第14条の「法の下の平等」に反するという判断です。

適用範囲、時期

今回は2001年7月と同年11月の事案に関して下された決定です。つまり、その2001年時点で既に違憲状態であったということです。そうなると、それ以降に行われた相続で差別を受けていた婚外子側が我も我もと、訴訟を起こしてくることが容易に想像されます。いわば、法的安定性が損なわれてしまうことになります。それでは裁判所も忙しくなりすぎますし、世の中に混乱が起きてしまいます。そこで今回は、既に決着済みの遺産分割には影響しないという異例の言及をしました。しかし、2013年9月4日以降の相続に関しては、最高裁判所の判例には事実上の拘束力がありますので、民法規定ではなく最高裁判所の判例に基づいた遺産分割を行うことになります。

民法改正

これまで、最高裁は同様の事案に関して、かろうじて合憲判断をしていました。何回となく、間もなく違憲判断をするという意思を表明し、国会に民法改正を促してきました。しかし、政治的混乱あるいは国会の機能不全が続いたこともあり、不作為により国会の審議を怠ってきました。それにしびれを切らし、最高裁が違憲判決を下したという経緯になります。国会が民法を改正すれば、法律は原則的に遡及しませんので、過去の事案に関して訴訟を起こされるということもなく、法定安定性は損なわれません。判決は過去のある時点の法的判断を示し、法律は現時点の法的判断を示します。1票の格差の問題もそうですが、国会が怠慢だと司法が非常に難しい立場に置かれることになります。

嫡出子と婚外子(非嫡出子)

嫡出子とは、婚姻中に生まれた子の他に、離婚から300日以内に生まれた子も含まれます。民法772条に、「婚姻の解消もしくは取消しの日から300日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する」と規定されているためです。婚外子とは、婚姻関係にない男女から生まれた子供をいいます。通常、母子関係は懐胎・分娩という事実から明確にすることができますので、婚外子とは父親が子を認知することにより生じます。認知されていない子は婚外子ではなく、法的な関係が全くありません。
なお、法律上では、嫡出子と非嫡出子で規定されていますが、非嫡出ではマイナスイメージがあるため、1980年代以降、非嫡出子ではなく、婚外子と呼ばれるようになりました。同様に、嫡出子を婚内子と呼ぶこともあります。

婚外子の数

厚労省の統計によると、2011年に出生した子のうち、婚外子は2万3,354人で全体の2.2%です。戦前は婚外子比率が高く、7~10%に達していましたが、戦後は急速に低下しました。
最近は日本でも結婚するより前に子どもができるケースが多いので、2.2%は感覚的には少ない印象があります。それは、独身の間に子どもが生まれ、父親が認知した場合でも、その後その二人が婚姻をすることによって、その子が嫡出子になる(民法789条:婚姻準正)ことによります。

海外の場合

欧米では70年代以降、同棲が増え、結婚を経ず出産するケースが多くなり、北欧では約半数が婚外子として生まれています。結果として、仏、米、英は言うに及ばず、中国、韓国でも、相当前に婚外子差別はなくなっています。婚外子差別に関しては、主要国では日本だけがとり残されていて、完全に外堀を埋められていた状態でした。

(2013年 9月11日)

相続財産の調査強化

相続税の課税強化が予定されています。それを見据え、税務署は既に相続財産の調査を強化し始めています。

  • 2010年の死亡者数は約120万人で相続税の納税申告件数は約5万件、その30%が実地調査を受け、そのうち申告漏れで税金を追徴されたのは約80%。
  • 申告書提出から1~2年の間に調査があり、財産が2億円以上だと調査される可能性が高い。
  • 被相続人の財産が相続人名義の預貯金に紛れ込む「名義預金」の調査が一段と厳しくなっている。相続人名義でも実質的に被相続人の管理下にあったと税務署が判断すれば相続財産に認定される。
  • 金は2012年から1回200万円を超える買い取りについて、取扱業者が税務署への支払調書の提出を義務付けられた。
  • 有料老人ホームを利用していた被相続人が短期間で死亡し退去した場合、入居一時金は返還され、通常は被相続人の財産として扱う。しかし、申告しないケースが多く、税務署が確認を強化している。
  • 2000万円以上の所得のある人に提出義務のある「財産及び債務の明細書」の提出を税務署から強く求められることが増えてきた。

税務署が重点チェックする項目

  • 被相続人の生前の所得・資産に見合う財産額を申告しているか?
  • 相続人(家族)名義の預貯金に被相続人の財産が紛れ込んでいないか?
  • 相続人名義の同族会社株は実質的に被相続人の財産ではないか?
  • 被相続人の生前贈与は適正か?
  • 国外にある預貯金などの相続財産をきちんと申告しているか?
  • 有料老人ホームの入居一時金の返還分を申告しているか?
  • 債務・葬式費用などを過大に差し引いていないか?
  • 「法規模宅地の評価減」が受けられないのに申請していないか?
  • 被相続人の死亡直前に多額の預貯金を引き出し、財産を減らしていないか?
  • 相続人は納税資金をどのように調達したか?

相続税の税務調査に対応する方法

  • 被相続人、相続人の預貯金通帳を3~5年分用意
  • 申告していない財産はないか、もう一度精査
  • 国外財産は十分な説明資料を準備
  • 被相続人の預貯金口座などからの出金について、合理的な説明資料を準備
  • 被相続人からの贈与を主張するなら、証拠(贈与税申告書、契約書)を用意

2012年12月15日 日経新聞より

財産の生前贈与

自らの意思で財産を分与したいのであれば、生前に贈与するのが一番確実です。
相続税対策にもなります。
贈与には暦年課税と相続時精算課税の2つの課税方式があります。いずれも受贈者が納税義務を負います。

歴年課税

従来からの課税方式で1年間に贈与された財産の価額をもとに、10%から50%の税率で課税されます。ただし、歴年課税には110万円の基礎控除がありますので、贈与財産が110万円以下であれば贈与税はかかりません。また申告も不要です。贈与方法には注意が必要ですが、子ども3人に10年間毎年贈与すると、3,300万円まで無税で生前贈与できます。ただし、相続開始前3年以内の贈与に限り、相続税の対象になります。

相続時精算課税

財産の早期移転を促すために設けられ、贈与税と相続税が一体化した制度です。贈与時に特別控除額の2,500万円を超える金額に対し一律20%の贈与税が課税されます。相続時には贈与された金額を含めて相続税の計算をして、納付済みの贈与税と相殺します。つまり、贈与時に相続税を仮払いし、実際の相続時に精算することになります。65歳以上の親から20歳以上の子(代襲相続含む)への贈与に限られます。

暦年課税の適用を受けるか相続時精算課税を選択するかは、それぞれの子が父母ごとに選択することになります。また、一度相続時精算課税を選択した場合は暦年課税に戻ることはできません。

2011年6月12日

相続人の確定

遺産分割協議の前に相続人を確定する必要があります。

そのために、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍、除籍、改製原戸籍の謄本を取得することになります。

まず最初に被相続人の最後の本籍地で戸籍(除籍)謄本を取ります。そしてそこに記載された情報を元にその前の戸籍または除籍、または改製原戸籍の謄本を取ります。それを繰り返し、出生までさかのぼっていくことになります。婚姻や転籍、改製などによって新しい戸籍が編成されると既に除籍されていた構成員は省かれますので注意が必要です。

本籍地を移した回数が多いとかなり面倒になります。今回行った相続人の確定では、4か所の市区町村役場から謄本を取得しました。今回は比較的近場だったので直接行きましたが、郵送でも請求することは可能です。取得できるのは戸籍の構成員、直系親族などで、代理人の場合は委任状が必要です。

戸籍

夫婦と未婚の子どもを単位に編成されています。

除籍

・戸籍に記載されている人が死亡、婚姻などにより戸籍から抜け、名前がバツで抹消されることをいいます。
・また、全員が除籍されたり本籍地が移されたり(転籍という)すると、その戸籍は除籍と呼びます。

改製原戸籍

戸籍は何度か改製(作り替え)されており、改正前の戸籍を改製原戸籍といいます。
近年では、昭和32年の改正前の昭和改製原戸籍と平成6年のコンピュータ化前の平成改製原戸籍があります。
個人的に言うと、これは「改正前戸籍」と呼ぶ方が分かり易いと思います。

除籍謄本と改製原戸籍謄本は1通750円、戸籍謄本は1通450円です。

2011年6月10日

遺産分割方法の優先順位

遺言がある場合

現在の民法では、遺言を遺すことが予定されています。従って、遺言があれば遺言が優先され、基本的には遺言どおりに遺産が分割されることになります。但し、遺留分などの一定の制約はあります。

遺言がない場合

遺言がない場合は、相続人で協議、合意し、遺産分割協議書を作成した後、そのとおりに分割します。どのように合意しても構わないのですが、利害がぶつかる可能性が高いです。そこで民法は詳細に法定分割を規定しており、それを基準に分割することになります。

遺言はあるが、異なる分割をしたい場合

遺言が遺されてはいるものの、異なった分割をしたい場合が時にあります。遺言は尊重されるべきですが、それとは異なった分割をすることは可能です。但し、当然ですが、相続人及び遺贈を受ける者など利害関係者全員の合意が必要です。財産相続を受ける誰からも異議申立てがされないことが前提です。被相続人は異を唱えたいでしょうが、「死人に口なし」ということなのでしょう。

2011年6月11日

相続欠格と廃除

相続欠格

一定の非行を行った相続人は当然に相続権を失います。
以下の5つの場合です。

  • 被相続人の遺言を偽造、変造、破棄、隠匿した
  • 詐欺や強迫により、被相続人に遺言させたり、前にした遺言の取消しや変更をさせた
  • 詐欺や強迫により、被相続人が遺言をすることや、前にした遺言の取消し、変更を妨害した
  • 被相続人が殺されたことをしりながら告発や告訴をしなかった
  • 被相続人や先順位又は同順位の相続人を殺したり、殺そうとして刑を受けた

廃除

推定相続人に、被相続人を虐待するなどのひどい非行がある場合、被相続人の意思により相続権を奪うことができます。
以下のようなケースです。

  • 被相続人に対する虐待
    常態的に罵声を浴びせたり、殴る、けるの暴行を加えた
    寝たきりの親を看護せず、食事も与えず衰弱させた
    など
  • 被相続人に対する重大な侮辱
    日頃から人目もはばからず親を無能呼ばわりした
    私的な秘密を公表し、名誉を傷つけた
    など
  • その他の著しい非行
    定職に就かず、繰り返し親に金を無心したり財産を盗んだりした
    夫と子を棄て、愛人と同居していた
    など

生前に廃除を行う場合には、被相続人が家庭裁判所に廃除請求を申し立てる。
死後で廃除を行う場合には、遺言で廃除の意思表示をし、遺言執行者が家庭裁判所に廃除請求を申し立てる

2011年6月 8日

遺産分割でもめそうなケース

・家族、相続人の仲が悪い
・現在の家族のほか、先妻との間の子供もいる
・家族に内緒で認知した子がいる
・相続人の数が多い
・自宅以外、あまり財産がない

以上の場合で、遺言がないと相続人全員で話し合って決めることになりますが、紛争に発展する危険度が高いです。

そのためには遺言で遺産の分け方を指定しておけば、相続人同士が話し合う必要がなく、争いを回避することが出来ます。

2011年6月 7日