出産育児に関する法制度等

先日、東京都の文京区長が2週間の育児休業を取得するということが話題になりました。会社の男性も育児休暇を取得しました。少子化問題に対処するため様々な取り組みが行われています。色々な制度を組み合わせて効果を上げようとしています。

今回は、出産、育児に関する法制度に関して、その概要を簡単に説明してみたいと思います。以下、会社員を想定しています。

妊娠中の業務量軽減

労働基準法では妊娠、出産、育児をする女性に対して様々な保護を行っています。まず、妊娠した女性は、時間外、休日労働をしないこと、及び軽易な業務への配置転換を請求することが出来、事業主はそれを拒むことが出来ません。例えば、外回り営業とかドライバーという職種は母体に負担が大きいので、残業のない内勤業務に就くことが可能になります。

出産前6週間の休業と出産手当金

産前6週間は休業の申出、取得が可能になります。申出があれば会社は拒むことが出来ません。その産前休業期間中は解雇することは出来ませんし、産前休業の申出、取得を理由にした不利益取り扱いも出来ません。しかし、労基法ではノーワーク・ノーペイの原則がありますので、産前休業期間中の賃金まで保障するものではありません。休業期間に対しては、健康保険法から出産手当金として平均報酬日額の3分の2が支給されます。労基法で休業を保障し、健康保険法から手当てを支給するという合わせ技です。但し、働いて報酬を受ける場合は、その分減額されてしまいます。

出産時の出産育児一時金

出産とは、妊娠85日目以後の分娩を意味します。出産には死産、流産、人口中絶を問わず全ての分娩が含まれ、健康保険法から出産育児一時金が35万円(暫定措置等で現在は基本的に42万円)支給されます。出産育児一時金は、被扶養者も対象になります。出産が予定日より遅れた場合はその日数分、産前休業が延長されます。

出産後8週間の休業と出産手当金

産後は8週間の休業申出、取得が可能になります。最初の6週間は労働させてはいけない期間ですが、最後の2週間は本人の請求と医師が認めた場合には業務に就くことが可能になります。更に、その産後休業期間中とその終了後30日間は解雇できない期間となります。産前休業と同様、その申出、取得を理由にした不利益取り扱いも当然出来ません。また、産後休業期間中も産前休業同様、健康保険法から出産手当金が支給されます。

出産後1年間の育児休業

出産後1年間に関しては、育児介護休業法により、父母共に育児休業の申出、取得が可能になります。特に母親は使用者の承認、許可は不要で、使用者は拒むことは出来ません。いわゆる待機児童などの場合はその1年間が1年6ヶ月間に延長されます。育児休業中は労基法上の解雇制限はありませんが、育児休業の申出、取得を理由とした解雇、不利益取り扱いは認められないので実質的には守られています。なお、母親に関しては、出産後1年間は1日2回、少なくとも30分ずつ、育児時間の請求が可能です。また、時間外、休日労働をしない請求も可能です。

出産後1年間の出産手当金

産後休業期間の8週間は健康保険法から出産手当金が支給されましたが、引き続いて育児休業に入ると今度は雇用保険法から育児休業給付金が支給されることになります。このあたりは法律間でうまく連係が取れています。育児休業給付金は今年の4月から改正され、二本立てであったものが一本化されて賃金日額の50%が支給されることになりました。もし事業主から上乗せとして別途支給される福利厚生としての育児手当等がある場合、それが30%に達するまでは育児休業給付金は減額されず、合計で80%まで支給されることになります。育児休業が父母共に取得できることに対応し、育児休業給付金も父母共に対象になります。なお、育児休業期間中は健康保険料、厚生年金保険料共に事業主負担分を含めて支払いが免除され、支払っているものとして扱われます。

小学校入学までの看護休暇

育児休暇が終了すると職場復帰するわけですが、子が小学校入学までは育児介護休業法により、子の看護休暇を年間5日まで取得できます。法律上は無給で構いません。

中学校卒業までの児童手当

新聞で報道されていますように、この4月からは児童手当が子ども手当になり、金額も増額され、中学を卒業するまで一人当たり毎月13,000円支給されることになりました。

パパ・ママ育休プラス制度

今年の6月30日から育児介護休業法が以下のようにいくつか改正されます。
・これまで1年後までであった育児休業が1年2ヶ月後までに取得期間が延長されます。
・産後8週間以内に父親が育児休業を取得した場合、産後1年2ヶ月後までであればもう1回、計2回に分けて育児休業を取得することが可能になります。
・専業主婦がいる場合、会社は父親の育児休業取得を拒むことが可能でしたが、今後は拒めなくなります。

企業の上乗せ給付

出産、育児関係では会社、健康保険組合などの上乗せ給付等が盛んです。イメージアップも兼ねて拡充している会社、組合が多いと言えます。ベネッセ、住友生命保険などでは父親の育児休業の1ヶ月間を有給にしていますし、ソフトバンクの出産祝い金は第1子5万円、第2子10万円、第3子100万円、第4子300万円、そして第5子以降は何と500万円になっています。

(2010年 4月14日)