労働保険と社会保険

会社を設立するのは比較的簡単ですが、事業を開始し、人を雇用し始めると様々な責任、義務が生じてきます。その一つとして、労働保険、社会保険があります。

そこで、今回は労働保険、社会保険に関する最低限の概括的な知識です。

労働保険と社会保険の種類

会社を設立すると基本的に労働保険と社会保険が義務付けられます。労働保険には、労働者災害補償保険(労災保険)と雇用保険があり、社会保険には健康保険と厚生年金保険があります。労働保険、社会保険を考える時、事業・会社が適用になるかということと、適用になった場合にそこに使用される労働者が適用になるかということの2つのステップで考える必要があります。個人事業であれば各種の適用除外がありますが、会社であれば規模に関わらず適用事業とされ、そこで働く通常の労働者は適用者とされます。

労働保険の適用事業

労働保険は、規模を問わず、基本的には個人事業、会社に強制適用されます。労災保険と雇用保険で若干異なりますが、労働者が5人未満等の一部業種の個人事業が任意適用になります。しかし会社であれば全面適用になります。事業が開始されたときに労災保険と雇用保険関係が共に(自動的に)成立します。そのため、所轄官公署への事業の届出が義務になっています。

労働保険の適用労働者

適用労働者に関して言えば、労災保険は労働災害に対する補償なので、短時間、短期間労働者であっても全面適用して労働者を守ります。それに対して、雇用保険は労働者自身も保険料を負担するので、全面適用をしていません。短時間、短期間労働者など様々な適用除外があります。

労災保険

労災保険の保険料は総賃金に労災保険料率を乗じた金額で、会社が全額負担します。労働基準法に基づく補償を会社に代わって行うものなので、労働者は保険料を負担しません。労災保険料率は0.3%から10.3%まで55の業種別に細分化されています。業務災害の多い建設業などが高率で、例えばソフトウェア業であれば最も低い0.3%になります。

雇用保険

雇用保険は労働者の失業等に対する保険です。会社は総賃金に対して雇用保険料率を乗じた金額を保険料として負担します。雇用保険料率は事業の種類により3種類に分かれていますが、一般的な事業であれば、1.1%です。但し、その1.1%のうち0.4%は労働者が負担します。

社会保険の適用

社会保険は、特定業種及び従業員5名未満の個人事業は適用除外になります。しかし、会社であれば業種、規模を問わず強制適用で、健康保険と厚生年金保険は基本的にセットで手続きをします。適用除外者に関する規定も両保険でほぼ共通で、短時間、短期間従業員は基本的に適用除外になります。

健康保険

健康保険は、疾病、負傷、出産、死亡に関する被用者向けの保険です。被用者でない個人事業主等は国民健康保険となります。健康保険には協会健保と組合健保があります。保険料は報酬に対して3%から10%の範囲の保険料率を乗じて求めます。健保財政は現在厳しく毎年のように保険料率がアップしています。協会健保は都道府県単位で異なり、東京都であれば平成22年3月から9.32%になります。組合健保は組合ごとに異なり、例えば関東ITソフトウェア健康保険組合では平成22年3月から7%になります。いずれも会社と被保険者で折半します。

厚生年金保険

厚生年金保険は老齢、障害、死亡に関する保険です。会社に勤めることにより国民年金から厚生年金に移行しますが、厚生年金の被保険者は国民年金の第2号被保険者でもあります。つまり厚生年金は国民年金を含んだ仕組みです。保険料は健康保険同様、報酬に対して保険料率を乗じて求めます。保険料率は、平成22年8月までは約15.7%で、会社と被保険者で折半します。年金財政も厳しく、毎年アップして平成29年9月からは18.3%になることが決まっています。

(2010年 3月13日)