「合同会社」の設立が増加

企業を設立する際に「合同会社」の形態を活用するケースが増えている。

  • 法務省の登記統計によれば、2017年に国内で設立された企業約11万8000社の23%が合同会社だった。
  • 2018年は4月まででこれが24.8%まで高まっている。
  • 主流の株式会社に比べ設立の手続きに手間や費用が少なく、意思決定も迅速にできる長所が認知されている。
  • スタートアップ企業などで広く活用が進み、起業を後押ししているようだ。

合同会社(LLC)は2006年の会社法施行で、それまでの「有限会社」に代わる企業形態として解禁された。

LLCとLLP

年をとるにつれて会社勤めが色々な意味で難しくなってきます。50歳を超えるような年齢になると、勤めている会社で役員になるか、あるいは外に出て独立するかのどちらかにならざるを得ないような気がします。ところで、会社法になってから株式会社設立のハードルが下がりました。数十万円もあれば誰でも会社を設立でき、社長になれます。

そこで今回は会社、その中でも新しいタイプ会社の話です。

我々に馴染みのある法人の代表格は株式会社です。有限会社はもはや設立できませんので、一人であっても株式会社を設立することになります。具体的な株式会社の設立方法に関しては後日の話題として、他の法人を考えてみましょう。旧商法と会社法の違いは、有限会社がなくなって合同会社が出来たことです。高校の時に勉強した合名会社、合資会社は相変わらず存在します。ただ我々が設立することはまずないので、新しいタイプの合同会社という会社の特徴を見てみたいと思います。

出資額を限度とする有限責任のある社員だけで構成するのが合同会社です。株式会社は基本的にお金だけ出資して、経営は専門家に任せようという発想ですが、合同会社は出資者が自ら経営します。所有と経営が分離していませんが、むしろ小さな会社ではその方が自然ではないでしょうか。特に一人で会社を始めるのに所有と経営の分離もおかしな話です。

合同会社はアメリカに倣った制度で、LLC(Limited Liability Company)と呼びます。合同会社は株式会社と比較すると、会社運営の自由度が高く、組織もシンプルで設立費用も安いというメリットがあります。株式会社だと法定費用だけで24万円かかりますが、合同会社では6万円です。設立を行政書士に依頼する場合には、その費用も当然安くなります。また、株式会社の場合は株主総会の開催など法律上守らなければならないことが多々ありますが、合同会社はそれが少なくなっています。なぜなら、株式会社は所有と経営が分離していますので、所有者(株主)から見ると、経営陣の暴走を許さないような規制が必要になりますが、合同会社は自分で所有して自分で経営するので自己規制、自己責任で済むからです。その他の特徴もありますが、これから会社を起こそうとする人は、必ずしも株式会社だけでなく合同会社というオプションもあるということを覚えておいて損はないと思います。

似て非なるものに、LLP(Limited Liability Partnership)=有限責任事業組合というものがあります。会社法上の会社ではありません。また民法上の組合でもなく、その中間で、「有限責任事業組合契約に関する法律」に定義されています。個人あるいは会社が、上下関係がなく、並列、仲間として集まったようなものです。文字通りCompany でなく、Partnership になります。有限責任で、取締役会や株主総会のような決議なしに、内部の出資者の総意で自由に意思決定が出来るという点ではLLCと同様ですが、法人としての概念をもたず、寄り合い所帯という点では大きく異なります。その結果として、LLPには法人所得、法人税がなく、直接、構成員(個人あるいは会社)に課税されます。構成員全体で上げた利益に課税するというステップがないので、パススルー課税と呼ばれます。言ってみれば利益に対して二度課税されない
ことになります。赤字の場合は直接構成員の費用に計上できるわけなので非常にメリットがあります。

更にLLPとLLCの違いには以下のようなものがあります。
・LLPを立ち上げるには2人以上必要ですが、LLCは1人で作れます。
・LLPは会社法外の組合であり、株式会社への転換はできません。LLCは会
社法の範疇で株式会社に転換可能です。
・LLPは法人ではないので、LLPとしては財産を持ったり、契約をしたり、
不動産登記をしたりということが出来ません。LLCは当然出来ます。
LLPは既に自立、成立している個人事業主、会社が共同で、永続的ではない(一時的な)事業を行うようなイメージです。例えば、広告代理店、映画制作会社、プロダクションや出版社、テレビ会社などが集まって、映画製作のLLPを組成することが考えられます。利益が出れば皆で分け、損失が出れば出資額の範囲で、それぞれの会社、個人がかぶります。

一人で会社を始めるのならLLC、既に個人事業、会社を始めていて、新たに共同で新しい事業を始めるのであればLLPを考えてみることをお勧めします。

(2008年7月19日)