相続金融財産の調査

相続の手続きを行う際に、まず相続財産の確定を行う必要があります。相続財産が明確な場合は問題ありませんが、明確ではない場合があります。特に、一家の主人などで、亡くなった方が1人で全財産を管理していた場合などであり得ます。場合によっては、残された家族全員が、「おかしい、もっと預貯金があるはずなのだが...」ということがあります。その場合の調査の方法は意外と面倒です。

今回は、相続金融財産の調査の仕方です。

金融機関別の調査方法
生命保険

財団法人生命保険協会によれば、保険会社がどこか分からない場合の調査方法として、以下の3つの方法があります。

  • 保険料が口座振替になっているケースが多いので、銀行口座の取引履歴を調べる。
  • 保険会社から、「保険証券」、「ご契約内容のお知らせ」、「生命保険料控除証明書」等何らかの通知が着いているはずなのでそれを調べる。
  • 弁護士会経由で当生命保険協会に照会請求(23条照会)をする。

銀行

全国銀行協会によれば、銀行口座がどこにあるか分からない場合は、近隣の心当たりのある銀行に、それぞれ個別に照会をかける方法しかありません。弁護士に依頼しても同様の方法になるとのことです。

証券会社

日本証券業協会によれば、この種の問合せ自体を受け付けていないようです。銀行よりも横のつながりが更に弱いので、銀行同様、個別に照会をかける以外に方法はありません。弁護士に依頼しても同様です。

一括照会に関して

結局、一括して照会できるのは、23条照会と呼ぶ弁護士会経由の生命保険の照会しかありません。それも共済、農協などは同協会に加盟していないので対象外です。23条照会は、まず弁護士に依頼し、弁護士から弁護士会に、そして生命保険協会へと照会が流れます。弁護士会の審査で照会を拒絶される場合もあり、弁護士としては、あまりやりたくない仕事とされているようです。23条照会は「受任している事件に必要」な照会ができる制度なので、基本的には「相続手続き」を弁護士に委任していることが前提のようです。

一具体的なアプローチ

手がかりになる証書、証券、郵送物等が見つからない場合は、年金の振込口座の取引履歴を過去数年間ほど請求するのが一番良い方法です。その記録により何らかの手がかりが得られる可能性があります。それによって得られた情報により、個別の生命保険会社、銀行、証券会社に照会をかけることになります。以上の調査でひとまずの結論を出し、相続処理を終了させるのが現実的といえます。

相続税の申告期限は亡くなった日から10か月です。万が一、申告期限後に、何らかの相続財産が判明した場合は、その時点で申告、あるいは修正申告することになります。その場合、既に申告納税している場合には、追加の相続税と延滞税を納付します。その時点で相続税の基礎控除を超したため申告する場合には、相続税と延滞税、更に無申告加算税を支払うことになります。延滞税は14.6%(現在、当初2ヶ月間は4.3%)、無申告加算税は5%です。

(2013年 9月16日)

外国人による日本の永住資格の取得

日本に長く滞在したい外国人の一つの目標は、永住資格の取得です。永住資格を取得すれば、基本的にはどのような仕事にも就くことができますし、3年又は5年毎の在留資格の更新という手間も不要になります。国籍はそのままにして、日本で不自由なく暮らすには永住者になるのが必要なわけですが、その分審査が厳密になるのは当然です。

永住者のメリット

永住者には、以下のようなメリットがあります。

  1. 在留期間の制限がなくなり、更新手続きが不要になります。
  2. 在留活動の制限がなくなり、基本的にあらゆる職業に就けます。
  3. 社会生活上の信用が得られ、商取引、住宅ローンなどがスムースになります。
  4. 今の国籍を変える必要がありません。
  5. 配偶者や子供が永住許可を申請する場合、他の一般在留者の場合よりも簡易な基準で許可を受けることができます。
  6. 退去強制事由に該当した場合でも、永住許可を受けている者については、法務大臣はその者の在留を特別に許可することができるとされており、有利な地位にあります。

永住許可の要件

大きく、以下の3つのポイントから評価、判断されます。
但し、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等又は特別永住者の配偶者や子供については、下記要件の1、2は不問となります。

  1. 素行要因
    法律を守り、善良な市民として社会的生活を送っているかどうかを確認します。前科などがないこと、税金を滞納していない(原則過去3年間)ことなどです。
  2. 生計要因
    現在、将来において、安定した日常生活を営むことができる財産や収入があるどうかを確認します。独立生計を営むに足る安定した収入(原則過去3年間)があるか、預貯金などの財産があることが必要です。無職であっても家族に資産があるということであれば大丈夫ですが、生活保護を受けていると難しいです。
  3. 国益要件
    その者の永住が日本国の利益に合致すると認められることで、基本的には以下のような要件です。概ね10年以上の日本での在留実績と、5年以上の就労実績が必要になります。現に有している在留資格について、法に規定されている最長の在留期間(5年又は3年)をもって在留していることも必要です。

在留期間の特例

上記3の在留期間は10年以上が原則ですが、以下のような特例があります。

  • 日本人の妻(夫)は、婚姻後3年以上の在留期間
  • 日本人の妻(夫)で、海外で婚姻同居後来日した者は、婚姻後3年以上かつ日本で1年以上の在留期間
  • 永住者の妻(夫)は、上記の日本人の妻(夫)と同じ在留期間
  • 日本人や永住者の実子、又は特別養子は、日本に引き続き1年以上の在留期間
  • 難民認定を受けている者は、日本に引き続き5年以上の在留期間
  • 定住者者は、定住許可後5年以上の在留期間
  • 日本への貢献度が高い者は、5年以上の在留期間

なお、「留学」で入国し、学業終了後そのまま就職した者は、就労資格に変更後5年以上、通算10年以上の在留期間が必要です。

提出書類
入国管理局への提出物、定時物は以下のものです。
申請書、理由書、写真、立証資料、在留カード(外国人登録証明書)、資格外活動許可書(交付されている場合)、旅券又は在留証明書、身元保証書、我が国への貢献に係る資料(ある場合)

立証資料は以下の3パターンに分かれています。

  1. 申請人の方が,「日本人の配偶者等」又は「永住者の配偶者等」の在留資格である場合
  2. 申請人の方が,「定住者」の在留資格である場合
  3. 申請人の方が,就労関係の在留資格(「人文知識・国際業務」,「技術」,「技能」など)及び「家族滞在」の在留資格である場合

例えば、上記3の方の場合であれば、以下のようなものです。

  • 身分関係を証明する次のいずれかの資料(申請人が「家族滞在」の場合に必要)
    戸籍謄本など
  • 申請人を含む家族全員(世帯)の住民票
  • 職業を証明する資料
    在職証明書、確定申告書の写しなど
  • 過去3年分の所得及び納税状況を証明する資料
    住民税の課税証明書、納税証明書など
  • 資産を証明する資料
    預貯金通帳の写しなど

会社に勤めているなどの場合、自分で在留資格の延長をしたり、変更をしたりすることは面倒です。また多くの書類が必要になりますので、その作成、準備も大変です。自ら入国管理局に行くことも当然ながら億劫です。入国管理局が認めた申請取次の資格を有した行政書士であれば、そのすべてを代行することが出来ます。

(2013年 9月14日)

婚外子相続差別は違憲

予想されていたことですが、2013年9月4日に、最高裁大法廷で、ついに婚外子相続差別の違憲判決が出ました。

判決のポイント

現在の民法900条では、「非嫡出子の相続分は嫡出子の2分の1」とされています。例えば、ある男性に戸籍上の妻との子Aと、そうではない女性との子Bがいる場合、現在の民法では、子Aの相続分は1,000万円で、子Bの相続分は500万円になります。しかし、今後は、上記の例の場合であれば、嫡出子、非嫡出子の区別がなくなり、750万円ずつの相続権を持つことになります。

判決の意図、意味

これまでは、家族制度、戸籍制度を重視し、子は夫婦間でもうけるべきであり、婚姻外でもうけた子にはペナルティとして相続権を2分の1しか与えないという制度でした。しかし仮にペナルティを与えるにしても、婚外子をもうけたその父親にペナルティを与えるのならともかく、何の責任もない生まれてきた子にペナルティを与えるのは筋違い、という判断になったわけです。憲法第14条の「法の下の平等」に反するという判断です。

適用範囲、時期

今回は2001年7月と同年11月の事案に関して下された決定です。つまり、その2001年時点で既に違憲状態であったということです。そうなると、それ以降に行われた相続で差別を受けていた婚外子側が我も我もと、訴訟を起こしてくることが容易に想像されます。いわば、法的安定性が損なわれてしまうことになります。それでは裁判所も忙しくなりすぎますし、世の中に混乱が起きてしまいます。そこで今回は、既に決着済みの遺産分割には影響しないという異例の言及をしました。しかし、2013年9月4日以降の相続に関しては、最高裁判所の判例には事実上の拘束力がありますので、民法規定ではなく最高裁判所の判例に基づいた遺産分割を行うことになります。

民法改正

これまで、最高裁は同様の事案に関して、かろうじて合憲判断をしていました。何回となく、間もなく違憲判断をするという意思を表明し、国会に民法改正を促してきました。しかし、政治的混乱あるいは国会の機能不全が続いたこともあり、不作為により国会の審議を怠ってきました。それにしびれを切らし、最高裁が違憲判決を下したという経緯になります。国会が民法を改正すれば、法律は原則的に遡及しませんので、過去の事案に関して訴訟を起こされるということもなく、法定安定性は損なわれません。判決は過去のある時点の法的判断を示し、法律は現時点の法的判断を示します。1票の格差の問題もそうですが、国会が怠慢だと司法が非常に難しい立場に置かれることになります。

嫡出子と婚外子(非嫡出子)

嫡出子とは、婚姻中に生まれた子の他に、離婚から300日以内に生まれた子も含まれます。民法772条に、「婚姻の解消もしくは取消しの日から300日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する」と規定されているためです。婚外子とは、婚姻関係にない男女から生まれた子供をいいます。通常、母子関係は懐胎・分娩という事実から明確にすることができますので、婚外子とは父親が子を認知することにより生じます。認知されていない子は婚外子ではなく、法的な関係が全くありません。
なお、法律上では、嫡出子と非嫡出子で規定されていますが、非嫡出ではマイナスイメージがあるため、1980年代以降、非嫡出子ではなく、婚外子と呼ばれるようになりました。同様に、嫡出子を婚内子と呼ぶこともあります。

婚外子の数

厚労省の統計によると、2011年に出生した子のうち、婚外子は2万3,354人で全体の2.2%です。戦前は婚外子比率が高く、7~10%に達していましたが、戦後は急速に低下しました。
最近は日本でも結婚するより前に子どもができるケースが多いので、2.2%は感覚的には少ない印象があります。それは、独身の間に子どもが生まれ、父親が認知した場合でも、その後その二人が婚姻をすることによって、その子が嫡出子になる(民法789条:婚姻準正)ことによります。

海外の場合

欧米では70年代以降、同棲が増え、結婚を経ず出産するケースが多くなり、北欧では約半数が婚外子として生まれています。結果として、仏、米、英は言うに及ばず、中国、韓国でも、相当前に婚外子差別はなくなっています。婚外子差別に関しては、主要国では日本だけがとり残されていて、完全に外堀を埋められていた状態でした。

(2013年 9月11日)

不動産の個人間直接取引

不動産を売買する場合には、不動産業者の仲介手数料、所有権移転登記の登録免許税、不動産取得税などの費用が発生します。

不動産取引の仲介手数料
売主、買主、それぞれ一律3%+6万円が上限と法律で決まっています。
売却価格3000万円の物件の場合、手数料は売主側、買主側それぞれ100万8千円(5%の消費税込)にもなります。不動産業者の物件を見ず知らずの他人と売買するのであればどもかく、家族間、友人間など、良く知った者同士で問題が起こりそうでない場合は個人間の直接売買がお勧めです。高額な仲介手数料と消費税が不要になります。費用は、売買契約書の印紙税で、例えば、1,000万円超5,000万円以下の不動産で15,000円です。

所有権の移転登記
所有権移転登記は、当事者申請か、司法書士に依頼することになります。司法書士に依頼する場合は、3,000万円程度の物件で、5~6万円程度。売買による所有権移転登記の登録免許税は2%です。

不動産取得税
土地や家屋を、有償・無償の別、登記の有無にかかわらず、売買、贈与、交換、建築(新築・増築・改築)などによって取得した人(個人、法人を問いません。)が負担します。
実際に納める額は、以下になります。

  • 取得した不動産の価格(課税標準額)×税率=税額

不動産の価格とは、不動産の実際の購入価格や建築工事費ではなく、固定資産評価基準によって評価し決定された価格(評価額)で、原則として固定資産課税台帳に登録されている価格です(新・増築家屋等は除きます。)。税率は原則3%ですが様々な軽減措置があります。

不動産を取得したときの申告は、不動産を取得した日から30日以内に、土地・家屋の所在地を所管する都税事務所(都税支所)・支庁へ行います。不動産取得税は、都税事務所・支庁から送付する納税通知書で、納税通知書に記載されている納期限までに、都税事務所(都税支所)・支庁の窓口のほか、銀行などの金融機関・郵便局などで納めます。

2012年12月30日(日)

相続財産の調査強化

相続税の課税強化が予定されています。それを見据え、税務署は既に相続財産の調査を強化し始めています。

  • 2010年の死亡者数は約120万人で相続税の納税申告件数は約5万件、その30%が実地調査を受け、そのうち申告漏れで税金を追徴されたのは約80%。
  • 申告書提出から1~2年の間に調査があり、財産が2億円以上だと調査される可能性が高い。
  • 被相続人の財産が相続人名義の預貯金に紛れ込む「名義預金」の調査が一段と厳しくなっている。相続人名義でも実質的に被相続人の管理下にあったと税務署が判断すれば相続財産に認定される。
  • 金は2012年から1回200万円を超える買い取りについて、取扱業者が税務署への支払調書の提出を義務付けられた。
  • 有料老人ホームを利用していた被相続人が短期間で死亡し退去した場合、入居一時金は返還され、通常は被相続人の財産として扱う。しかし、申告しないケースが多く、税務署が確認を強化している。
  • 2000万円以上の所得のある人に提出義務のある「財産及び債務の明細書」の提出を税務署から強く求められることが増えてきた。

税務署が重点チェックする項目

  • 被相続人の生前の所得・資産に見合う財産額を申告しているか?
  • 相続人(家族)名義の預貯金に被相続人の財産が紛れ込んでいないか?
  • 相続人名義の同族会社株は実質的に被相続人の財産ではないか?
  • 被相続人の生前贈与は適正か?
  • 国外にある預貯金などの相続財産をきちんと申告しているか?
  • 有料老人ホームの入居一時金の返還分を申告しているか?
  • 債務・葬式費用などを過大に差し引いていないか?
  • 「法規模宅地の評価減」が受けられないのに申請していないか?
  • 被相続人の死亡直前に多額の預貯金を引き出し、財産を減らしていないか?
  • 相続人は納税資金をどのように調達したか?

相続税の税務調査に対応する方法

  • 被相続人、相続人の預貯金通帳を3~5年分用意
  • 申告していない財産はないか、もう一度精査
  • 国外財産は十分な説明資料を準備
  • 被相続人の預貯金口座などからの出金について、合理的な説明資料を準備
  • 被相続人からの贈与を主張するなら、証拠(贈与税申告書、契約書)を用意

2012年12月15日 日経新聞より

厚生年金基金を10年間かけて廃止へ

  • 厚生年金代行部分は減額できないので、積立不足があり、加入企業で穴埋めできないときは、厚生年金全体で穴埋めします。
  • 厚生年金のみの人は自分と関係ない基金の人の厚生年金部分を穴埋めすることになるので、割を食う感じがします。
  • 厚年基金の独自上乗せ部分は保障されません。減額されるか、全く支給されなくなります。
  • 厚年基金の半数が積立不足(つまり上乗せ部分を減額する)、半数が積立不足になっていない(つまり約束通り上乗せ部分を支給する)とのことです。

厚年基金から受給している人、厚年基金に現在加入している人にとって、受給/加入している厚年基金が積立不足になっているかいないかは重大問題です。

2012年10月25日(木)

滞納家賃の回収

家賃を滞納する人がいる場合の対処方法です。

  • 簡易裁判所で調停の申立てをする。
    調停申立手数料は、例えば滞納家賃30万円請求で1500円
  • 60万円以下の請求は少額訴訟を起こす。
    手数料は30万円の場合で3000円
  • 滞納額が4~5か月分以下の場合は、滞納額の支払方法を定めたり、次の家賃不払い時の取り決めをする和解が行われる。
  • 通常、滞納額が5~6か月分に達した場合に滞納額の支払いと共に明け渡し判決が出される。
  • 退去・明け渡しを求める場合は、催促をした上で契約解除、通常訴訟を起こす。
  • 現実的には、明け渡しの強制執行には費用が掛かるので多くは和解となる。

(2012年10月20日)

協会けんぽの傷病手当金

2011年10月に傷病手当金を受給した人の理由は、多い順に、精神疾患が26%、がんが19%、循環器疾患が11%。

精神疾患は、1995年が4%、2007年が20%、2011年が26%と急増。
がんも1995年14%から2011年の19%へと増加。
循環器系と消化器系の疾患は減少傾向。

2012年10月17日(水)

妻の就労

週30時間未満のパートだと、国民年金の「第3号被保険者」のままだが、年収が130万円以上になると「第1号被保険者」になり、自分で国民年金の保険料を納めなければならない。このため収入が130万円未満になるよう仕事を抑える「就業調整」をしている妻は多い。所得税の非課税限度額(103万円)を超えないようにする例も目立つ。共働きが一般的になりつつあるというのに、時代錯誤の古い制度のままなのが良く分かる。

政府は2016年10月から、厚生年金の適用対象を週20時間以上・30時間未満の人にも広げる。ただ従業員501人以上、年収106万円以上などの条件を設けるため、新たに対象になるのは25万人にとどまる。

2012年10月15日(月)

高齢化率

65歳以上の高齢者の割合が7%を超えると高齢化社会
65歳以上の高齢者の割合が14%を超えると高齢社会
65歳以上の高齢者の割合が21%を超えると超高齢社会

2012年10月10日(水)