相続手続きがやや簡素化されます。

法務省は5月から新たに「法定相続情報証明制度」という仕組みを導入する予定です。

相続時に行う不動産の所有権変更登記、銀行、証券会社などにおける解約などをするとき、遺言がない場合には、基本的に被相続人の出生から死亡までの全ての戸籍を集め、それぞれの機関に原本を提出する必要があります。これが結構大変です。

  • まず、出生まで遡って戸籍を集めるのが大変です。
  • 更に、それぞれの機関に原本を提出するので、郵送のときはその原本が戻ってくるまで待たないと次の手続きができません。
  • 法務局、銀行、証券など各機関では、全く同じように戸籍の確認をするので社会的な時間の損失という面もあります。

今後は、出生から死亡までの戸籍と相続関係説明図を法務局に提出すれば、新しい証明書を受け取ることができるようになります。
その後の銀行、証券などでの手続きでは、被相続人の出生から死亡までの戸籍の代わりに、新しい証明書を提出すれば、相続手続きをしてもらえることになります。

この新しい「法定相続情報証明制度」のメリットは以下のとおりです。

  • もし、銀行、証券などにこの新しい証明書の写しを提出すれば良いのであれば、原本が戻ってくるまで待つことなく、複数の解約手続きを並行で行えます。結果として、相続手続期間がかなり短縮されます。
  • 銀行、証券側は出生から死亡までの戸籍の確認をする手間がなくなります。この社会的コストの削減が最も大きな効果だと思います。

この新しい「法定相続情報証明制度」の留意点は以下のとおりです。

  • 相変わらず、被相続人の出生から死亡までの戸籍を集める手間はなくなりません。相続人側からするとここが最も大きな負担なので、その点から言えば、この新しい制度は肩透かしのようなものです。
  • 銀行、証券に新しい証明書の原本を提出しないといけないのであれば、やはり返送されるまでの間、次の手続きは止まってしまいます。
  • 不動産があるときは、最初に相続登記を行い、この新しい証明書を取得すれば、その後の銀行、証券の手続きは少し軽くなります。(あくまで少しです。)
  • もし不動産がないときは、この証明書を取得するために法務局に行くという新たな手間が増えてしまいます。不動産のない相続においては、この新制度のメリットは限定的なものになってしまいます。

この新制度で最も大きな恩恵を受けるのは、おそらく、銀行、証券など金融機関の相続センターの担当者だと思います。