不動産の相続登記

親が亡くなっても不動産の相続登記をしていない方が少なからずいます。別に支障がないから良いだろうということだと思います。確かに固定資産税を払っている限りにおいては役所からも指摘されません。暫くは困らないとは言えます。ただ、いつかは困ります。問題を先送りにしていることになります。

今回は相続による不動産の所有権移転登記に関してです。

相続登記をしないことによる不都合

相続登記をしないと、後々以下のように事態が複雑になってくる可能性があります。
・相続人が死亡して、その子供に相続権が移ってしまった
・相続人が結婚して、その配偶者がお金にうるさい
・相続人の経済状態が変わってしまった
・相続人である配偶者(故人の夫、妻)が再婚をした
亡くなった直後であれば、故人のためにも話を丸く収めようと努力するでしょうし、記憶が鮮明なので故人のために尽くした人が多く相続しても納得できるでしょう。しかし、年月が経過してしまうと相続関係が複雑になったり、関係者が増えたり、余計なことを言う人が出てきたりと厄介になってきます。問題を先送りにしたい気持ちも分りますが、いずれにしろやらなければならないことです。問題が大きく複雑にならないうちに片付けておいた方が良いと言えます。

「相続による不動産の所有権移転登記」を相続の部分と登記の部分に分けてみます。

不動産の相続

まず相続です。
相続人が1人であれば問題ありません。その人が全て相続すれば良いだけです。ただそのようなケースは少なく、相続人が複数いる場合がほとんどで、その場合には遺産分割が必要です。以下の3つのケースがあります。
1)遺言があり、その通りの分割をする
2)法定相続通りの分割をする
3)相続人全員で遺産分割合意書により合意分割する
まだ、遺言分割はそれほど多くはありません。また様々な事情がありますので単純に法定分割で済むケースも多くはありません。結局は、相続放棄も含めて話し合い、相続人で合意分割することになります。そして、遺産分割協議書を作成することになります。その中で、相続人の誰がその不動産を相続するか記載すれば良いわけです。しかしこれが意外と簡単ではなく、ずるずると相続登記が遅れてしまう原因になっています。

相続人による不動産の変更登記

不動産を相続する相続人が決まれば、次が登記です。
登記は本人申請が原則になっています。決して司法書士に頼まないといけないわけではありません。確かに、売買のように相手がいて共同申請が必要な場合は、取引の安全を図る上で専門家である司法書士に依頼することが現実的です。しかし、相続登記は単独申請ですので簡単です。本人申請が可能です。

具体的には以下の書類が必要になります。
・被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本・除籍謄本、改製原戸籍謄本
・被相続人の除住民票
・相続人全員の戸籍謄本
・遺産分割協議書(実印押印)
・相続人全員の印鑑登録証明書
・不動産を相続する人の住民票
・固定資産評価証明書
以上の書類により、法務局は、
1)被相続人の戸籍によって相続人を割り出すことと
2)相続人全員で遺産分割を合意し、当該不動産は申請人が相続することで間違いがないことを判断することになります。
なお、相続登記の場合は、固定資産税評価額の1000分の4の登録免許税が必要になります。

自ら相続登記を行った実例

ところで先日、80歳のお年寄りに遺産分割協議書を作成して差し上げました。必要書類を教えておいたところ、司法書士に依頼せず自ら所有権移転登記を済ませてしまいました。法務局の相談窓口の方が丁寧に教えてくれたので特に問題なかったとのことです。5~10万円程度の司法書士費用を払わないで済んだことになります。相続登記は遺産分割協議書さえ作成できれば簡単です。

一見面倒に見えても、やってみると案外簡単なことが多いものです。お金に余裕があり、時間に余裕がない場合は別ですが、そうでなければ、相続登記は本人申請がお勧めです。また、新築建物の所有権保存登記、登記名義人の住所や氏名変更、あるいは抵当権抹消登記も同様に単独申請で簡単に行えます。

(2009年10月10日)